空洞が大きければ大きいほど喜ばれるパンとは?
この大きな穴に、塩気とバターのコクが。手にとると、ズシンと重みがある。
パンやケーキに穴があいていれば、普通は穴の分だけ、損した気分になる。モノによっては不良品にもなりかねない。

なのに、「空洞が大きければ大きいほど喜ばれる」という、ちょっと変わったパンがある。長野県・信濃食産の「バターパン」だ。

実はコレ、子どもの頃から大好きで、今でも実家に帰るたびに食べており、遠方の友人が長野に来たときなどには必ず薦めるパンなのだが、なんとも素朴で不思議な美味さがある。
まあるい表面には、ビスケット生地が渦巻状にトッピングされ、真ん中にくるみが1個。かぶりつくと、いきなりぽっかりあいた大きな穴が出現する。この「大きな穴」こそが、美味さの秘密なのだ。


「菓子パン生地に有塩バターを包み込んで焼くんですが、中のバターが溶けて生地にしみこみ、大きな穴ができる。それで、穴のまわりの生地にバターが固まって、香ばしい風味になるわけです」
と社長は説明する。
このバターパンは昭和40年から作られており、かつては有塩マーガリンを使っていたそうだが、現在は有塩のフレッシュバターに変え、口当たりがさらに良くなっているのだとか。また、ほんのり塩気のある無添加の生地には、米粉も含まれ、モッチリ感もある。

昔からバターパン好きの間では「穴が大きいと当たり」とか「手にのせて、重いヤツが当たり」とか、いろいろな噂があったが、
「空洞の大きさは、バターの量・重さに比例するからでしょうね」とのこと。
確かに、バターをたくさん入れた分だけ、溶け出して空洞が大きくなり、重さもバターの量だけ増える。

大手パンメーカーからはマーガリンを中に入れたロールパンなども出ているが、このバターパンの場合は、穴のまわりに固まったバターの塩気とコクが売り。まさに、「穴が主役のパン」なのだ。

「この空洞に、生クリームを注入するとか、今後はやってみたいんですけどね」
それはまた、なんと濃厚な! このバターパン、1個100円で、長野県の北信地方のスーパーやドラッグストア、須坂市内の高校売店で買えます。
めちゃくちゃローカルだけど、信州の知られざる土産として、探してみてはどうでしょう?
(田幸和歌子)