『図でわかる!妹に教えたい世界のしくみ (SAKURA・MOOK 49 いろんなひみつを暴いてみようシリーズ) 』が、書店で大変浮いています。
某学習帳のようなデザイン。
かわいい妹キャラ。
この本、アニメ・マンガコーナーにはありません。
Twitterに流れる書店員さんの声を見ると、どこに並べればいいのか、大変困っている様子。
多分、文化とかそのへんの棚にささってると思います。コンビニでは歴史本なんかと一緒に並んでいます。
「いろんなひみつを暴いてみようシリーズ」と書いているけど、この本しか出てないです。


中身は、あらゆるものの「しくみ」を妹に、ひきこもりの兄が教えるという体裁。
なんでもかんでも図表で説明したこの本、果たして役に立つのか?

1・ある程度わかりやすい図表
幕末の権力構造がわかる「江戸幕府のしくみ」、内閣と各省庁のつながりをまとめた「日本政府のしくみ」などの図表。
このへんは、中高生の参考書なんかとほぼ同じ。
正肉とモツにわけて部位名を解説する「食肉の種類」や、具体的なml数値まで載っている「コーヒーの種類」、40もある「パスタの種類」。
さらに「旧約聖書登場人物の家系」「クラゲの一生」「ギリシア神話の神々の家系」「交通系ICカードの関係」「仇討ちのしくみ(江戸時代)」などなど。政治・宗教・科学・プロレス・競馬と、なんでもまとめます。


タモリがデビューしてから今に至るまでの活動を、局ごとにまとめた「タモリのレギュラー番組年表」。
「太陽にほえろ!」に在籍していた刑事をまとめた「七曲署刑事在籍年表」。
ファンでもなかなか説明できない「エグザイルトライブの構成と変遷」。
かなり間違えやすい「まんがタイムの家系」。
「時代劇の判別のしかた」フローチャートは、脚注に時代劇各番組の、出演者比較がびっちり書かれています。
1ページのネタのために、相当調べたのでしょう。
なんだか好感が持てます。

2・図表の中に仕込まれたネタ
たとえば「押尾学に至るロックの系譜」。
押尾学を最終地点にして、カントリー・ブルースから音楽の変遷をまとめます。
これが意外とあっている。気がする。

「お金の流れ」という項目では、日本政府と日本銀行を起点に、金融機関や一般企業、個人へのルートを追っていきます。
加えて「テレビ局プロデューサー→キャバ嬢→ホスト→孤児院に寄付」という流れも図示。
「食物連鎖のしくみ」では植物と草食・肉食動物の流れを理科の教科書のようにまとめつつ、「ワニ皮→バッグ→キャバ嬢→ホスト→孤児院に寄付」。
「オーケストラのしくみ」の項目には、一般的オーケストラ配置の他に、女子十二楽坊、YAZAWA、米米CLUBの配置図を掲載。

マジメに解説し続けるお兄ちゃん。ツッコミで切り返す妹。
ネタを使って、難しい内容をばっさりまとめるスタイルは90年代初頭のフジテレビ深夜番組「カノッサの屈辱」を思い出します。

00年代、ネット上ではテキストサイトやバーチャルネットアイドル(架空のキャラクターが運営しているという体で、ニュースや日記を書いていたサイトのこと)でよく見られました。
この本のイラストレーターは、まさにその時代の立役者です。

3・なんとなく、で作られた図表
「こうなんじゃないかな?」というイメージで作った図表も、わんさか載っています。
「日本の鉄道ファンとミリタリーオタクの派閥」はモーター音マニアからZゲージ派、二次大戦艦船派からリエナクトメント派までずらり。
「大仁田のカリスマのしくみ」では、大仁田厚がいかにしてプロレスで人々を魅了したかを、グラフと数式で解説。
「インターネットのしくみ」では、動画サイト、はてな村、SNS、匿名掲示板の関係性を、ネットスラングフル活用でまとめています。


本の中で、妹キャラはこう言います。
「そもそも世界のような複雑なものが図表のような単純なもので正確に示せるわけがないので、だいたいいいいかげんで説明不足どころがまちがっているところもありますけど、察してください。もしこの本を小さなお子さんが呼んで、学校のテストでこの本の通りに答えたら、きっとバツにされると思います」
あくまでも、「社会に対するねたみ、そねみ、偏見」がすごいお兄ちゃんが、「知ったかぶり」をして妹に話している、というノリを楽しむ本です。

資料価値は、あります。
ただし一旦他の情報と、比較して確認してください。
この本のキャッチコピーは「知った気になれる!」
鵜呑みにすると危ないよ、と自ら指摘しています。
ネタをネタだと見抜ける人・情報を並べて検証するのが好きな人・毒舌妹が好きな人には、とてもオススメです。


「図でわかる!妹に教えたい世界のしくみ」

(たまごまご)