ずっと気になっていたこと……渚はどこにある？

渚のシンドバッド、渚のはいから人魚、渚の『・・・・・』、渚にまつわるエトセトラ……。ポピュラーソングにも使われる「渚」という言葉は馴染みのある言葉だが、どのような場所を指して渚と言うのか、ずっと釈然としなかった。海や浜辺、川岸とかなら、映像が浮かんだり、実際に訪れたことがあるときっぱり断言できるのに、渚には行ったという記憶はない。渚はどこにあるのだろう？

早速、地図で調べてみると、きっぱりはっきり「渚です」と言わんばかりの場所を見つけた。江戸川区の葛西臨海公園にある「西なぎさ」と「東なぎさ」である。地図で見る限り、公園から橋がかかっているのは西なぎさだけで、東なぎさは公園からは完全に切り離され、歩いては行けなさそう。なにはともあれ、意外と身近なところにあるもんだ。というわけで、西なぎさに行ってきた。

葛西臨海公園は水族園や鳥類園などがある人気のレジャースポットで、わたしが訪れた日も、たくさんの人で賑わっていた。さて、その公園の中を歩いていくと、大きな橋が見えてくる。「渚橋」と言うその橋からは、渚がもうすぐ近くにあることがわかる。意気揚々と橋を渡りきると、そこには、渚……。が、見たところ、それは東京湾の浜辺にしか見えなかった。わたしは、「西なぎさ」が“渚”と呼ばれる所以を探し出すため、ひたすら端から端まで歩いた。

ブラブラと歩くこと、およそ1時間。何もわからない。どう見ても、ただの浜辺でしかないのだ。名前の由来を知れば、渚の正体がわかるのではないか？　そう思ったわたしは、さっそく、葛西臨海公園のスタッフに尋ねてみた。「西なぎさと東なぎさは人工の渚ですから、単純に、西にある渚、東にある渚で、西なぎさ、東なぎさです（笑）」。ますます、渚の正体がわからなくなってしまった。ちなみに、西なさぎは散歩やバーベキューを誰でも楽しむことができるが、東なぎさは野鳥のための保護区域になっていて、一般には開放されていないそうだ。

公園を後にし、トボトボと自宅に戻ったわたしは、広辞苑を手にとり、渚の意味を調べてみた。「川・海・湖などの波の打ち寄せる所。波打ちぎわ」。目からウロコとはこういうことか（行く前に調べておけ!?）。わたしはてっきり、渚は、「川」や「海」のように、場所そのものを指す名称だと思い込んでいた。まさか、部分的なものを指していたとは、つゆ知らず……。渚を“未踏の地”だと思い込んでいたなんて、お恥ずかしい。オンナ32歳、またひとつ、大人になりました。
（畑中美紀）