「無理してでも頑張るのが当たり前」になっていませんか?

実はその空気、生理痛に苦しむ人たちを長年追い込んできたものと同じかもしれません。見た目ではわからない痛みは軽視されやすく、「それくらいで?」という無理解を生みがちです。


本記事では、NHK「あさイチ」でもおなじみの博多大吉さんと産婦人科医・高尾美穂先生が語り合った書籍『ぼくたちが知っておきたい生理のこと』(辰巳出版)より一部を抜粋・編集。

大吉さんの「かつては怠けていると思っていた」という率直な告白を交えながら、“つらいときに休めない社会”の是非を考えてみましょう。

■「怠け」だと思ってた。博多大吉の率直な後悔
大吉:世の中の多くの男性って、生理痛をナメてる節があると思うんですよね。

高尾:生理痛を過小評価しているという意味ですか?

大吉:はい、女性が生理のときにお腹が痛くなること自体は、テレビで鎮痛剤のCMも流れてくるし、男性だって大半は知っているわけです。でも、イヤな言い方をしちゃうと「毎月あるんだから慣れるものなんじゃないの?」ぐらいの認識なのかもしれない。ぼく自身もそうでした。

だからこれまで仕事中に「生理中でつらい」「お腹が痛いから休みたい」なんて言われると、怠けているだけなのでは、と思ったときもありました。生理痛で亡くなった人なんて聞いたこともないし、大げさなんじゃないかなって。

高尾:いまは変わりました?

大吉:一度知ったら、変わらざるをえませんよね。きっかけはやっぱり「あさイチ」です。つらい思いをしている女性の声を聞いたり、専門家に解説してもらったりして、こんなにしんどい人がいるんだって衝撃を受けました。


いままで本当に知らなかったんですよ。普通に生活しているように見えるなかにも、肉体的、精神的にものすごくきつい思いをしている人がいたかもしれないと、はじめて思い至りました。若いころにちゃんと知っておけば、彼女なり同級生なりにもっと気遣いができたのにな~! ってなりましたよ。

時代が変わっても痛みは変わりませんよね。だからぼくが知らないままに、つらい思いをしている人は常に周りにいたんだろうなって思います。

■つらいときに休めない社会は、誰もがつらい
高尾:アンケートを見ると、生理で不調があるときのパフォーマンスは、通常時の半分ぐらいに落ちちゃう人が約3割もいるんですね。70%落ちると感じている人も結構いて、私の予想以上に、生理中は普段どおりのパフォーマンスを発揮できないと感じている女性が多いようですね。

大吉:自分に置き換えてみて、たとえば奥歯がずきずき痛いまま1日中仕事をしなければならないと考えると、無理ですよ。何もできない。それが数日つづく、さらに毎月起こると想像したら……これは女性のみなさん、休みましょうよ! 親しい相手なら「頼むから家で寝といてくれ!!」って言いたいくらい。

もちろん雇用形態や職場の状況にもよると思いますが、調子が悪いときは休み、すっきりしてから復帰して、パフォーマンスを発揮するほうがいいと思うけどなあ。

高尾:「休んでよくなるなら、休む」と考える女性は少なくないと思うんですよ。
でも腹痛はだいたいよくなるけど、生理は「またどうせ来るんだよね」となっちゃう。

大吉:しかもそれが1日休んで終わりじゃなく、何日もつづく人もいるってことですよね。これほんと、男性も知っておかなきゃいけないことだと思います。知らないから、具合が悪そうな女性にかける言葉を間違うことがある。お互いにとって不幸ですよね。

高尾:「休むと周りに迷惑をかけるから」と思っている女性も多いですよ。でもそれって、お互いさま。性別問わず誰にとっても、体調が悪くてパフォーマンスを発揮できない日は必ずあります。大吉さんがおっしゃったように奥歯が痛くなることもある。どれだけ体調管理に気をつけていても、事故に遭うかもしれない。

■鎮痛剤を飲めばすぐ働ける、という大きな誤解
大吉:鎮痛剤を飲めばすぐ働けるようになるんだろう、っていうのも間違いだって知らなきゃいけない。男性に多いと思いますよ。
だって広告で見る女性たち、みんなそうだから。

高尾:痛みに負けずに仕事もプライベートもアクティブに過ごせる! っていうイメージがありますね。そうなる人もいないわけではないと思いますが。

でも考えてみると、こうしたイメージは鎮痛剤にかぎったものではないですよね。エナジードリンクの広告で24時間仕事をしようというメッセージがあったり、風邪薬の広告で、薬ですぐに対処して仕事を休まないのがいいことだと描かれたりしてきました。

女性が生理で休めない、休まないというのは、こうした「つらくても、がんばるのがよいこと」といった考えが社会のベースにあるのと、決して無関係ではないと思います。

大吉:風邪でも仕事を休まないっていう広告はコロナ禍を境になくなったんじゃないかな。体調に関する社会の受け止め方がすごく変わったと感じます。「体調が悪ければ休みましょう」が当たり前の時代になってきました。

高尾:大吉さんもコロナ禍では、何度かレギュラー番組を休まれましたよね。

大吉:朝、家で検温したら37.5度を超えていたから、休む判断をしました。いままでならまさに「ドリンク剤飲んで、行くか!」でしたが、そこは変わりましたね。


プロとしてどうかという声もあったかもしれませんが、ぼくの代わりはいくらでもいるんですよ。これは決して、ネガティブな意味ではなく。

高尾:そうそう、本当に誰も代われない仕事って、総理大臣など、日本でもひとり、ふたりぐらいじゃないですか。むしろ、それぐらいであったほうがいいと思います。誰かが代わってくれると考えると、休みやすい。

大吉さんは、自分のコンディションをよく保つのも仕事の一環だと意識なさっていますよね。それは私もなんですが、これからはそこに「体調が悪ければしっかり休む」も加えていくといいですよね。

■なぜ休めない? 「生理休暇」という名前のわな
大吉:日本人はなかなか休まないから、休むと言われたら「なんで?」って聞いちゃう。そのときに「生理です」と言いにくい女性は多いんじゃないですか。

高尾:はい、言いにくいですね。でもそこまで伝える必要はまったくなくて、「体調が悪いから」だけでいいでしょう。これが行き渡ると生理だけでなく、その先にある更年期による不調でも休みやすくなりますし、男性も体調不良を事細かく報告しなくてよくなりますよ。


大吉:生理休暇があっても休めないという話はよく聞きますよね。ぼくが思うに、生理「休暇」って言葉が変わるといいんじゃないですか。生理のつらさを知らない男性からすれば、「休暇」って聞くとアウトレットでも行って楽しんでいるんだろう、って印象なんですよ。

高尾:たしかに!

大吉:育児休暇もそうなんですけど、仕事せずに楽しているっていうイメージをもつ世代はいまでもいますよね、残念ながら。

高尾:生理については「療養」など、もっとあてはまる言葉がありそうですね。呼び方を変えるの、いいアイデアだと思います!

大吉:生理痛がつらい女性はためらわずに病院へ。生理痛のつらさがもっと伝わるような「生理休暇」に代わる名称を募集。そして男性も女性も関係なく、みんな体調が悪ければ休む! これが、目下の課題ですね。【この書籍の執筆者】
博多 大吉 プロフィール
お笑いコンビ「博多華丸・大吉」。吉本興業所属。1971年生まれ、福岡県出身。NHK「あさイチ」司会。
コンビではTHE MANZAI2014優勝、単独では2015 年IPPONグランプリ優勝。NHK 「あさイチ」や日本テレビ系列「人生が変わる1分間の深イイ話」の生理特集では、的を射た発言に世の女性たちから賞賛の声が寄せられた。

高尾 美穂 プロフィール
医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。著書に『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』( 世界文化社)、『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』( 講談社) など。NHK「あさイチ」などメディア出演多数。トレードマークのヘアスタイルは絵本の「タンタン」がモチーフ。
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