概要

 令和8年3月30日付けであらたにキトラ古墳、高松塚古墳に関する2冊の報告書を刊行した。同報告書においてキトラ古墳の埋葬施設の構造の詳細、高松塚古墳の出土品に関する最新の分析成果を公表し、今後の両古墳および飛鳥の終末期古墳の調査研究・公開活用に資する成果を発信することができた。


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 ※本報告書の一般への頒布はありません。本日より全国文化財総覧(https://sitereports.nabunken.go.jp/ja)にてpdfデータを公表いたします。


1.報告書刊行に至る経緯

 ①『特別史跡キトラ古墳調査報告』
 平成22年(2010)の壁画取り出し事業終了後、石室の閉塞・埋め戻しに先だって平成23(2011)年6月、平成25年(2013)2・9月に石室・墓道部の考古学的調査を実施した。本書はその正式報告書である。
②『飛鳥資料館所蔵高松塚古墳出土品再整理報告書』
 飛鳥資料館所蔵の高松塚古墳出土品(昭和47年(1972)調査時のものを中心、一部、平成16年(2004)石室内点検時、平成19年(2007)調査時出土のガラス小玉を含む)を対象として令和2年度(2020)から同7年度(2025)にかけて再整理作業を実施してきた。全品にたいしてあらためて図化と高精細写真撮影をおこない、必要に応じて科学分析・三次元計測・保存処置をおこなった。掲載資料は石塔片1点を除き、いずれも重要文化財(ガラス小玉5点は本年3月に追加指定が答申された)である。


2.成果

①『特別史跡キトラ古墳調査報告』
(1)石室
   大きさ  内法238(床面では237)×104×125㎝ 壁石高115㎝
   構 造  18個の凝灰岩を組み合わせ、天井内面を屋根形の刳り込む(深さ9㎝)
        各接合面に合欠、天井石1東西面下辺と南壁石南面下辺に梃子穴
        床面の精査により棺台の痕跡を確認
   加工技術 基準線(朱線)を引き鉄製工具で精緻に加工(朱線117ヵ所残存)
(2)墓道部  残存長5.2m 幅2.3~2.6m 残存高3m
        床面にコロレール痕跡と柱穴(抜取痕跡あり)、地割れ跡を確認
⇒朱線を用いた石材加工、梃子穴を使用した石室構築、棺台の使用、墓道部におけるコロレール設置等は、マルコ山古墳や高松塚古墳など飛鳥の主要古墳との共通性を裏付ける。
※石室・墓道部の図面や詳細写真を多数掲載(図面43点、写真148点を初公表)。


②『飛鳥資料館所蔵高松塚古墳出土品再整理報告書』
(1)海獣葡萄鏡  高精細三次元計測・X線透過撮影・蛍光X線分析を実施
(2)銀荘大刀装具 高精細三次元計測・デジタルカメラで鋳造・研磨の痕跡を記録。
⇒橿原考古学研究所附属博物館保管資料とあわせて一振り分の装具一式がほぼ揃う。
(3)玉類  ①ガラス小玉:淡青色透明・引き伸ばし法・高アルミナソーダ石灰ガラス
       ②ガラス丸玉:青紺色・巻き付け法(植物灰ガラスとナトロンガラス)
       ③琥珀玉       
⇒構成が牽牛子塚古墳、キトラ古墳と異なる。

終末期古墳の複雑な玉流通の実態が判明。
(4)漆塗木棺・棺金具
 棺金具の使用方法を科学分析や木棺片にのこる圧痕との照合、復元実験により解明。
⇒座金具を用いた装着部分をさらに花形・円形金具で覆い隠す手法がマルコ山古墳やキトラ古墳など飛鳥の王陵級古墳に特徴的なものであることを確認。
(5)土器・石塔片 
 古墳造営前の整地土および墳丘版築出土土器が飛鳥Ⅳ~Ⅴ、中世の土器が13世紀前半に位置づけられることを追認。石塔片(宝篋印塔の九輪部分か)は盗掘後さほど間を置かない時期に墳丘に置かれたものと考えられる。
⇒高松塚古墳の造営以前、完成以降の経過をたどる上で重要な所見。


3.まとめ

 今回刊行の2冊の報告書を通じて、極彩色壁画古墳であるキトラ古墳・高松塚古墳の内容をさらに掘り下げることができ、今後の終末期古墳の研究の進展にも寄与する成果を得ることができた。今秋にキトラ古墳壁画体験館四神の館(壁画保存管理施設)が開館10周年を迎え、さらに高松塚古墳壁画保存管理公開活用施設(仮称)が令和11年度(2029)の供用開始を目指すなかで、今回刊行の2冊の報告書は、今後の両古墳の調査研究・公開活用において重要な役割を果たすものと期待する。


報道資料

詳細は以下プレスリリースをご覧ください。


https://www.nabunken.go.jp/news/2026/05/20260514press.html : https://www.nabunken.go.jp/news/2026/05/20260514press.html

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