データサイエンティストのサトマイこと佐藤舞さん(36)の著書『あっという間に人は死ぬから』は、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」自己啓発部門賞を受賞し、ベストセラーに。そして今年、第2弾として『あっという間にお金はなくなるから』を出版した。

今回は、お金への不安をデータと心理で分析していただき、読者にとって少しでもストレスなく過ごせるようにアドバイスをいただいた。インタビュー連載全3回の最終回を公開。



コスパ・タイパを気にしすぎると「ツマラない人間」になる!【佐...の画像はこちら >>



■本当に収入がゼロになった時に何が起こるのか?



 職場適応障害から無職へ・・・紆余曲折の人生の中で見えてきたものとは?



「どうしても残高が増えたり減ったりすることで自分の安心の心も上下するのはすごくわかります。でも、収入がゼロになった時、どういうことが起こるのかを知らない人が多いんですよね。私は1年間無職になったことがあるんですが、その時に学んだのは日本は本当にいい国でセーフティネットがかなりきちんとしているってことです。その時期の私は職場適応障害になって心療内科に通っていたんですが、結局、退職を余儀なくされました。その際に、傷病手当といって病気が理由で無職になった人に給与の3分の2が支払われるという制度を活用できたおかげで何とか最低限の収入を確保できました。ハローワークの人たちも優しく接してくれましたし、友人に『無職になったよ』というと『ご飯食べに行こう』とか『こういう仕事やってみない?』と声をかけてくれるんです。心療内科のドクターにも『もしよかったらうちの事務、手伝わない?』と言ってもらったりして、意外と無職になって収入がゼロになっても生きていけるんだなあという体験をしているんですよ。なので、本当に収入がゼロになった時に何が起こるのかをシュミレーションしておくと、意外と大丈夫で、あまりブレなくなりました」 



 佐藤さんの人生自体、結構な紆余曲折があった。高校1年生の時に両親が離婚し、その後、父親は借金を残して亡くなったのだ。母親は、佐藤さんと弟2人の3姉弟をパートを掛け持ちして育て上げたのだという。

 



「慰謝料も養育費もない状態で母は食べ盛りの子供3人を抱えて大変だったと思います。その時私は16歳でしたけれど、自分の生殺与奪を他人に握られている状態ってすごく危ういなと思ったんですよね。母は元旦那という配偶者に経済的な面をほぼ百パーセント依存していましたから。それは会社員が給与だけに依存するのも同じです。やはりお金を生み出せるスキルが自分にあるとか、困った時に助けてくれる人がいるとか、あるいは自分のやりたいことができるといった状態にもっていくのが大事なんじゃないか。そこで他人に依存しない人生、自分で舵を握ることの大切さを知ったんです」 





 そんな佐藤さんだが、大学は卒業するも就活には苦戦した。 



「お祈りメールが来ると自分は社会に必要とされてないんだなって自己肯定感が下がってしまう。そんな中でパチンコ店から採用通知をいただいたので、私のことを求めてくれるなんてありがたいなと思って入社したんです。じゃ、なぜ転職したかというと、どうしても先輩の働く姿を見ていると10年後はこのぐらいの収入で、仕事内容はこうでというのがはっきり見えて、いや、私的にはちょっと違うなと思ってしまった。で、製造業に転職したんです。そこでは管理職で、トラック運転手の人たちのスケジュール管理をしていたんですけど、運転手の方たちって年が一回りも二回りも上のオジサンたちだったので私にはうまく扱えなかった。上司に相談してもなかなかわかってもらえなくて、それが原因で適応障害になったんです。

その時に、私は組織では働けないのかもしれないな、これは起業するしかないなと思ったんですよね」 



 統計学的な思考で生きてきたが、失敗したことのほうが多かった、と振り返った。 



「私の失敗のパターンは決まっていて、わかりやすく言えば資格所得とか受験勉強がまったくできないタイプなんです。パチンコ店に努めた時に手に職をつけようと思ってファイナンシャルプランナーの講座をユーキャンで取り寄せて勉強しようと思ったんですけど、DVDを30秒ぐらい流した段階で諦めました。それも分析した結果わかったのが、自分のためだけに頑張ることはできない性格なんだってこと。例えば、本って読者の方の人生をよくするためとか、自分も興味のあることを書けるし、売り上げも数字で見えるわけです。そういうふうに誰かのためにとか、利他的な動機がないと頑張れないというのが失敗体験と成功体験を仕分けして気づいたことですね。そういう意味では自分が頑張れるモチベーションになるものを見つけるのは大事だと思います」 



コスパ・タイパを気にしすぎると「ツマラない人間」になる!【佐藤舞インタビュー第3回】
(撮影:Haru)



  



■コスパ・タイパの弊害を知らない人が多すぎないか



 また、苦手なものをきちんと把握し、自分のトリセツみたいなものを用意しておくのもお勧めだという。 



「私はコスパとかタイパをする弊害もあると思っていて、例えば、GUしか着なくて、ご飯もずっとマックやコンビニで食にお金をかけない人は大きくは失敗しないけれど、たぶん人格的にあまり成長しないというか、量産型の人間になってしまうと思います。もし、コスパやタイパを求めるのであれば、おそらく金銭的な余裕とか時間的な余裕が生まれるはずなので、できた余裕の部分を他の人がしない体験にお金を使うとか、自分がこだわっているものに時間を使ってみるとかして、バランスさせるのが大事。そういった振り幅がないとその人らしさは表現できないし、ツマラない人間になるのかなと思います」 





 とはいえ、いくら将来に備えても人間誰にも頼らずに生きるのは無理である。 



「だから、電話帳にいざというときに電話のできる人が1人でもいることがすごく大事で、何かあったときにこの人に電話すればいいか、といった心のお守りになります。そういう人との縁はすごく大切で、合理性やスペックだけで付き合っていると、その人のスペックがブレた時に、違うな、となってしまう。

勘というか、フィーリングで自分のセンサーが反応するような人間関係はとても大事だと思います」 





 予期せぬ出会いや偶発的な事故などにはどう対処しているのか。 



「統計は平均の値だと思っていて、どうしても個人差はあります。なので、自分では統計ではない外れ値の値に出くわしたときにそれを見過ごさないというのを意識しています。『桃太郎』の話が分かりやすいと思うのですが、川上から大きな桃が流れてきた時に普通はスルーしちゃうと思うんですね。でも、おばあさんはキャッチした。あれってセンスがあるなあ、と。もっと具体的な例でいうと『マネーツリー』という面白い実験があって、海外の大学の構内の木に本物のお札をぶら下げて、それに学生は何割ぐらい気づくのかという実験をやったんです。結果はほとんどの学生が気づかなくて気づいたのは1、2割だった。私は本当かなと疑問だったので、私の出版記念講演会を5百人ぐらいが入る会場でやった時に、入口にいただいたお花を飾って、そのお花のわかりやすいところにおもちゃのお札を貼っておいて何人が気づくか実験を再現してみたんです。そしたら5百人中3人しか気づかなかった。ノイズの情報とかチャンスの情報って、視界には入っているんだけど、自分がそれをシャットアウトしているのか、スマホを見ていて気づかなかったのか、逃している人がすごく多い。だから、私は普段から歩きスマホはしませんし、電車に乗っている時も周りを観察することを意識していて、なるべく情報をオープンにキャッチするようにしています。

もちろん不慮の事故とかは自分がコントロースする範囲を超えているので、そこに関しては起きちゃったことはしようがないとは思いますが、このピンチは何かしらのチャンスになるはずだとも思うんですね。客観的に見たら失敗かもしれないし、不慮の事故かもしれないけれども、だからこそ本に書けたりするわけで、そういうふうに考え方を転換しています」 



コスパ・タイパを気にしすぎると「ツマラない人間」になる!【佐藤舞インタビュー第3回】
(撮影:Haru)



  



■私の人生を好転させた「ジャーナリング」



 統計的思考で、どんなシーンでも対処してきた佐藤さんだが、恋愛に関してはどう対処しているのだろう。 



「お金やスキルの話であれば、自分が頑張ればある程度結果は出ると思いますが、こと恋愛とか結婚は相手がいないと始まらないし、続けられないものじゃないですか。そもそもそこが難しい。付き合うことも難しければ結婚するまでも難しいし、結婚生活を維持するのも難しいので相性のいい人に出会えたらそれは奇跡的なものなので大切にしたほうがいい。私自身は恋愛に対してはあまり戦略は立てずになるべく自然体で気を遣わずに、会っていて疲れないかとかそういうことを見ていますね。恋愛・結婚でいうと参考にしているジョン・ゴットマンという心理学者の意見があって、その先生はカップルの会話を5分見ただけでそのあと続くか、破局するかを90パーセント以上の確率で当てられるんです。先生いわく、『ポジティブな会話の多いほうが破局しにくいので、会話がネガティブにならないかどうかに気をつけるのが重要だ』と」 



 この数年は仕事漬けの毎日だが仕事の最終的なゴールはどこなのだろう。 



「ゴールを明確に決めているわけではなくて、私の中では幸せの定義と被るんですが、未来への期待が持てる状況を構築するということを意識しています。例えば、2025年はこういう仕事をして売り上げはこれぐらいだった。2026年はもっと良くなるだろう。なぜなら私はこういう準備をしているから、というのをひたすら繰り返しているという感じですね。

だから、明らかにここを目指して、というものはありません。ただ、今年はジャーナリング(※)で人々の生活や人生を豊かにしていきたいというのが1つの大きな目標ではあります。私自身自己理解をするために記録をつけていかなきゃと思っていて、それを実行したことですごく人生が好転したんですね。だから、質問項目に沿って日々記録をしていってもらう、いわば日記みたいなものを出版したいなと思っています」 



 最後に読者にメッセージを。 



「例えば、投資でいうと買い続けるのが大切です。投資に限らず、自分の人生において、この習慣をやめてしまったら成長が見込めなくなるかもしれないというものを1個見つけて、それをやめずに続けていくこと、というのがメッセージですね。そもそも世界は不確実であるということが大前提としてあると思うので、不確実性を楽しみながらいろいろ実験してうまくいったものを残していく。将来なんてどうなるかわからないし、しかも自分がコントロールできることは少ないということを自覚した上で不確実性を楽しむとか、実験をするというマインドを育てていただくのがいいかな、と思います」 





 (※)頭に浮かんだ思考や感情をありのままに紙に書き出す「書く瞑想」とも呼ばれる手法



 



<了>



 



取材・文:大西展子



 



コスパ・タイパを気にしすぎると「ツマラない人間」になる!【佐藤舞インタビュー第3回】
(撮影:Haru)



佐藤 舞 (サトマイ)



データサイエンティスト。登録者44万超『謎解き統計学 サトマイ』YouTubeチャンネル運営。桜花学園大学客員教授。「確率・統計を使い、知的かつ面白く、世の中の謎を解く」をコンセプトに情報発信。国立福島大学卒業後、迷走を経つつも26歳で独立。

現在は、企業のマーケティングリサーチや需要予測調査を手掛けるビジネス統計学の専門家として活躍中。著書『はじめての統計学 レジの行列が早く進むのは、どっち』は都内国立中学の入試問題にも引用。『あっという間に人は死ぬから』は、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2025」自己啓発部門賞を受賞。今年第2弾『あっという間にお金はなくなるから』を出版し、ベストセラーに。好きな食べ物は緑のバナナ。

編集部おすすめ