日本マクドナルドを創業し、外食産業初の年商1000億円企業に育て上げた藤田田は、つき合う人間を徹底的に選んだ経営者だった。年下とは決して酒を飲まない。
■つき合う人間はとことん選べ
東京都の人口が1000万人をこえているからといって、都民がそれぞれ1000万人の人間とつき合っているわけではない。人口3万人の地方都市の市民が3万人の市民全員とつき合って生活しているわけではない。
こうしてみると、人間はきわめてせまいサークルで生活しているのだ。日本に1億2000万人の人がいるといっても、毎日、自分が声をかけている人は、少ない人なら、せいぜい20人程度、いや、10人程度の人もザラにいるだろう。私にしても、話をするのはせいぜい40人ぐらい、面識ができたりして生きていることになる。
そういったことから、仏教の〝縁〟という発想がでてくる。「袖触れ合うも他生の縁」とか「ご縁があって結ばれる」という発想である。
本当に悲しいことではあるが、毎日、何万人とも話をする人はいないのである。1億2000万人の日本人の中で生きていると、大きな社会にいるような錯覚におちいるが、実際はほんのひと握りの人間としかつき合っていない。
つき合う人間がこのように限定されてしまうのであれば、つき合う人間とつき合っていくには、選択が大切になってくる。せまいサークルでなるべく自分のプラスになる人間とつき合っていくには、選択が大切になってくる。
私は若いときから、自分の同年配以下の人と絶対に酒を飲まない主義をつらぬいている。30歳ぐらいのときに、自分よりも年の若い者と酒を飲んでも、なんのプラスにもならない。金と時間をドブに捨てるようなものだ。かぎられた人間とつき合えない以上、自分の時間も相手の時間も大切にしなければならない。
だから、つねに私は年配者としか酒を飲まないことをモットーにしているのだ。
私はタクシーに乗るとかならず、運転手さんと話をすることにしている。「運転手さん、今日、商売はどうだった?」ときくのだ。
「いや、今日は雨が降ってたから」とか、「最近は客が多い」とか、「このごろは、夜、長距離乗ってくれる人が多い」「6000円乗る人がいなくて、5、600円の人が多い」「盛り場へいっても能率が悪くて、景気が悪い」などと、いろんな返事がかえってくる。
タクシーの運転手は、だいたい、1日80人ぐらいの客を乗せるそうだ。だから、話好きな運転手だと、1日80人の客と会話を交わしていることになる。
■違う世界の人間と話すチャンスを逃していないか
汽車でも電車でも飛行機でも、乗ったらすぐに隣の人に話しかけるべきである。隣り合わせた人は、自分とちがう社会に生きている人だから、全然、自分のもっていない情報をもっているはずである。男でも女でも、おじいさんでもおばあさんでも調子よく話しかけることが大切である。
おもしろいのは外国で美人と隣り合わせたとき、人相を研究しているとか、手相を研究しているというと、100人が100人、話に乗ってくることだ。全然でたらめにじゃ困るから、手相入門ぐらい少しかじっておく必要はある。それをかじっておくだけで、美女の手を握って親密に語り合えるといういい思いをすることができる。
隣り合わせた者と話もできないという人は医者みたいな人だと思う。医者は大学がちがうと外国人ぐらいのちがいがある。
東大の医者と日大の医者、東大の医者と慶応大の医者は、おたがいに外国人みたいにちがう。
私はそういった医者の社会を見ると、典型的な日本人の社会を見るような気がする。日本人は同じ日本人でありながら、電車や飛行機で隣り合わせても、知らん顔をしている。話もしない。「人を見たら泥棒と思え」というか、まるで言葉が通じないように知らん顔をしているバカもいる。中には人の前でイビキをかいても失礼ともいわないで、知らん顔をしている人がいる。
これから、どうしても成功したいと思う人は、どこへいっても隣り合わせた人と話ができなければならない。
ただ、電車や飛行機では、隣の席にだれがくるかわからない。学者がくるか、銀行員がくるか、主婦がくるか、老人がくるか、子どもがくるか、わからない。
有名な会社の社長がビジネスの話で紹介者に連れられて会いにこられたときに、その社長がこういった。
「いや、藤田さん、この間は飛行機の中で、あなたのすぐうしろの席にすわっていたのですよ」
「なぜ、声をかけてくれなかったのですか。そうすれば、そこで話がすんだのに」
私はそういった。その社長がいずれ紹介者と一緒にくることは知っていたが、私のほうは先方に気がつかなかったのだ。どうやら、その社長は、紹介者がいなかったこともあって声をかけることを遠慮したようだ。そんな遠慮は無用である。厚かましくやらなければ損である。
私の会社の社長室はいつもドアを開いてある。全社員に、いつはいってもいい、用事があったらいつでもノックなしにはいってきてくれ、といってある。
かつて、双葉山という名横綱がいた。強い上に、相手が立ち合いに待ったをしないことでも有名だった。私が社長室のドアを開きっ放しにしているのも、こんできても受けて立つという気持があるからだ。どんな用事できても、受けて立つ、という気持である。やはり、多くの社員を率いていくには、そうやってドアを開いていつでも社員を受けいれる姿勢が必要である。
社長だからといって、社長室にふんぞり返って、用事があるなら秘書を通し、ノックしてからはいってこい、といっているようでは仕事ができるはずがない。そんな社長の会社は儲かっていないと思う。
文:藤田田
《『凡人が億を築く法』より構成》
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