ブリヂストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックシリーズはブラックアイスバーンと呼ばれるツルツルに磨かれたアイス路面でも高い性能を発揮するスタッドレスタイヤとして、北海道の都市部をはじめとした寒冷地帯で高いシェアを誇るモデルとして知られています。
そのブリザックシリーズの最新モデルとなる「ブリザックVRX3」のスノー&ドライ路面での試乗を行いました。
「ブリザックVRX3」については、すでにアイススケートリンクでの試乗を行っていて、すでにツルツルのアイス路面での性能はチェック済みです。
アイス路面での試乗はせいぜい20km/h程度までの試乗でしたが、ステアリングを切った瞬間の手応えのしっかり感は高く、制動距離も先代モデルとなるブリザックVRX2との比較で、クルマの全長1台分程度(つまり5m弱)短くなるというしっかりとした性能を確認。
先代モデルといってもブリヂストンのフラッグシップスタッドレスとこれほどの差を見せたのはさすがです。とはいえ、スケートリンクでの試乗ですので、リアルワールドとはちょっとかけ離れたフィールドでのいくつかの性能の確認に留まりました。
12インチの軽自動車サイズから20インチの大径までさまざまなサイズが用意されるそんなブリヂストン最新のスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」ですが、今度は雪上と一般道で試すことができました。今回の試乗は北海道のミニサーキット、新千歳モーターランドを拠点として開催された試乗会です。
最低気温はすでに氷点下となっていた新千歳モーターランドですが、残念なことに晴天が続いていたため、雪は人工降雪機によるものでした。とはいえ、氷を削ったような人工雪ではなく、水を蒔いて作った人工雪なので条件としてはかぎりなく自然の雪に近い状態を作り出していました。
雪上コースでの試乗車は日産デイズ、ホンダ・フィット、トヨタ・プリウス、メルセデス・ベンツE200、スバル・レヴォーグと多彩なモデルを用意。駆動方式はいずれも4WDです。
レヴォーグとの組み合わせではアクティブな走りも可能だということを教えてくれたどのクルマとの組み合わせでも、グリップはしっかりと確保できていました。
新雪部分であっても、グッとグリップをしているのはもちろん、シャーベット路でもそのグリップ感は失われません。
レヴォーグのように低ミュー路でコントローラブルなクルマの場合はとくに扱いやすい印象が強く、VDCをオフにして滑らせながら走るとかなり楽しいドライビングができます。
155サイズ以下の一部はストレートグループが3本、225以上の一部はストレートグループが5本となり、ブロック剛性を調整している。テスト時は手彫りにより、パターンを追求したというアイス路面ではタイヤと路面の間に生じた薄い水膜を除去して、タイヤと氷を接地させることでグリップを確保しますが、雪の場合はグリップのメカニズムが異なります。
雪の場合にもっとも大切なのは「雪柱せん断力」と言われるもので、トレッドの溝のなかに雪が入って圧縮されて柱のようになりそれを破壊(せん断)するときの抵抗でグリップを得ています。
雪柱せん断力を得るためには、タイヤが路面から離れているときに溝から雪を排出しなければなりません。
さて、スタッドレスタイヤは氷や雪の上での性能が高ければいいわけではありません。完全な降雪地帯であっても、冬の始まりや終わりの時期にはドライ路面やウエット路面が登場します。
今回の北海道試乗でラッキーだったのは気温が低く天気がよかったことで、人工降雪機による雪道試乗に加えて、ドライ路面での試乗も行えたことです。
ドライ路面ではフォルクスワーゲン・ポロ、トヨタ・クラウン、トヨタ・ヴェルファイア、アウディA4アバントで試してみます。
なかでも感心したのがヴェルファイアでのフィーリングです。
また、感心させられたのは静粛性の高さです。クラウンやアウディといったもともと静粛性の高いクルマに、スタッドレスタイヤを組み合わせると、タイヤノイズばかりが目立つことがよくあるのですが、「ブリザックVRX3」はそうした静粛性の高いクルマとの組み合わせでもタイヤノイズが目立つことはありませんでした。
クルマそのものの防音性、遮音性が高いからということではなく、タイヤノイズそのもののレベルが小さいので、フォルクスワーゲン・ポロとの組み合わせでも静粛性は保たれていました。
(文:諸星陽一)