岡崎市は3月31日、CO2削減に向け公用車68台をガソリン車から軽EV車に置き換え、うち2台をシェアリングカーとし市民や観光客が利用できる「Okazaki Public EV Share」を発表した。自治体の公用車を市民にシェアする事業は愛知県内初の取り組みとなる。


○脱炭素への取り組みの一環として進められる公用車EVカーシェア事業

2050年までに市域の温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ宣言」を2020年に行った岡崎市。2022年には環境省から「脱炭素先行地域」として選定され、“電気由来のCO2排出量実質ゼロを2030年までに成する”という目標のもと、さまざまな事業を進めている。

この取り組みの一環として3月31日に発表されたのが、「Okazaki Public EV Share」事業だ。現在、岡崎市には公用の乗用車・貨物車として382台のガソリン車両、80台が電動車両が存在するが、このガソリン車のうち68台を軽EV車に置き換える。

合わせて、公用車車庫屋上へ最大出力21.75キロワットの太陽光パネル設置を設置。蓄電池からEV車への充電を行うことでCO2排出量実質ゼロ達成を目指す。

これらの取り組みによって、従来のガソリン車と比較して年間約80.7トンのCO2が削減されるという。これは一般家庭で考えると、約40世帯(※)が1年間に使うすべての電気をゼロにしたのと同様の効果だ。

※日本における約1世帯の1年間の平均電力消費量は4,258kWh(一般社団法人 環境エネルギー事業協会より)

同時に、公用車を公務に利用していない時間帯に、68台の軽EV車のうち2台をシェアリングカーとして市民や観光客に貸し出しを行う。市民に提供される車種は、三菱自動車工業の「eKクロスEV」となり、愛知学泉大学が描いた岡崎市のマスコットキャラクター「オカザえもん」のラッピングデザインを採用した。

利用申請はEVカーシェアリングサービス「N.mobi (エヌモビ)」で行う。一度会員登録を済ませれば、スマホアプリのみで予約・利用・返却が完結する仕組みであり、岡崎市民でなくとも登録すれば誰でもシェアリングカーを利用可能。
開始日・設置場所・利用時間・利用料金は以下の通り。

開始日:4月1日 18時から
設置(発着)場所 岡崎市役所・東立体駐車場
利用時間:平日18時~翌07時 (土・日・祝日は終日)」
利用料金:いつもプラン 15分/220円~、たまにプラン 15分/264円~(※)
-- (※「いつもプラン [月額基本料金1,100円(税込)]」、「たまにプラン [基本料金不要]」)

事業主体は岡崎市および、「N.mobi (エヌモビ)」のサービス提供を行うNTTビジネスソリューションズとを代表とする5社の企業グループとなり、5年間の賃借料を含む総事業費は3億4,491万280円となる。

NTTビジネスソリューションズ:「N.mobi」サービス
REXEV:スマート充電器および車載システム、EVカーシェアリングおよび車両管理、充電制御プラットフォーム「eMMP」(eモビリティ・マネジメントプラットフォーム)
住友三井オートサービス:EVのリースおよびメンテナンス
三井住友ファイナンス&リース:太陽光発電設備の賃貸借/EV充電器のリース
三菱自動車工業:軽EVと車両管理、充電制御のプラットフォームとのデータ連携

○“車の所有”から“必要なときに必要なだけ賢く使う”へ

3月31日に岡崎市庁舎で執り行われた「Okazaki Public EV Share 開始式」には、岡崎市 市長の内田康宏氏、環境省 中部地方環境事務所長の松下雄介氏、NTT西日本 執行役員 東海支店長の児玉美奈子氏のほか、5社の企業グループや愛知学泉大学、岡崎市、岡崎市議会から関係者が来席した。

岡崎市長の内田氏は、子供たちが故郷に愛情と誇りを持てるまちづくりの重要性について言及するとともに、QURUWA(くるわ)地区を中心として脱炭素先行地域作りを進めていることを説明。市政への理解と協力に対する感謝を表明し、本事業の意義について述べた。

「本事業を通じて、公用車のEV化による温室効果ガス削減のみならず、市民のみなさまが実際にEVに触れる機会を提供することで、EVの普及促進のほか、“車の所有”から“必要なときに必要なだけ賢く使う”というシェアリングエコノミーの浸透による環境負荷の軽減、そして公用車の利用時間帯の削減など、公共財産の有効活用にも繋げていきたいと考えています」(岡崎市長 内田氏)

環境省の松下氏は、全国100地域の脱炭素先行地域のうち、中部では12地域が選ばれていることを報告。岡崎市は令和4年に選定され、「岡崎城下からはじまる、省エネ・創エネ・蓄エネのまちづくり」をテーマとした取り組みが他の自治体の参考事例となっていることを強調する。

「市民のみなさま方と公用車をシェアする事業の本格運用は愛知県で初めてと伺っています。今後のカーシェア事業の拡大に向けまして、着実に事業が進められていくことを大いに期待をしています。環境省としても、さまざまな形でご支援をさせていただきたいと思います」(環境省 松下氏)

開始式の終盤にはテープカットと除幕式が執り行われ、「オカザえもん」も登場し式典を盛り上げた。

岡崎市とNTT西日本に聞く、カーシェアリング事業の背景と目的


カーシェアリング事業は、一般的に公共交通に制限のある地域や、過疎化が進んでいる地域での事例が多い。日本有数の自動車産業都市でもある岡崎市がこのような取り組みを推し進めているのはなぜだろうか。


岡崎市 環境部 ゼロカーボンシティ推進課 次長 兼 課長の木村敏弘氏、同課 事業推進係 係長の平岩靖弘氏、NTT西日本 東海支店 ビジネス営業部 第二エンタープライズビジネス営業部門 社会基盤営業担当 担当部長の中島盛治氏、NTTビジネスソリューションズ バリューデザイン部 ソーシャルイノベーション部門 社会基盤ビジネス担当 主査の土橋力也氏に伺ってみよう。

――始めに、事業におけるみなさまの役割についてお聞かせください。

平岩氏:岡崎市 ゼロカーボンシティ推進課の係長として、事業の推進を主に務めさせていただきました。

木村氏:平岩の上長として、ゼロカーボンシティ推進課のみんなが組み上げてきたものを承認していく立場です。

中島氏:NTT西日本で、このたび導入していただいたサービスの商品主幹を担当しておりまして、今回のプロジェクトリーダーも兼ねていました。2025年7月からは名古屋ビジネス営業部の担当部長に異動し、現在は岡崎市さまの営業担当という立場にあります。「長い期間かけてようやくここまでたどり着いたな」と感慨深い気持ちです。

土橋氏:NTTビジネスソリューションズで、岡崎市さまが「脱炭素先行地域」として採択されたときからご一緒させていただいています。基本的にはカーシェアリングの仕様策定や運用などに携わらせていただいております。

――「Okazaki Public EV Share」事業が始まった経緯について教えてください。

平岩氏:環境省さんが脱炭素の取り組みとしてモデル事業を募集しており、2022年11月ごろに岡崎市がエントリーしたのがきっかけです。これまではガソリン車が公用車の中心だったのですが、“EV化とともにシェアリングを行うことで市民の行動変容を促す”という内容が評価され、国からの補助を受けて事業が開始されました。


――岡崎市がカーシェアリングが必要だと判断された理由は?

平岩氏:公用車の利用効率化、EV化によるCO2削減、そして管理の効率化が主な目的です。また、財源が不足していく状況において、夜間や休日など使用していない時間帯に市民に広く利用してもらうことで、財源確保にも期待しています。

脱炭素先行地域として全国102自治体が選出されており、それぞれが地域の特色を活かした事業を展開されています。岡崎市らしい特色を出さなければなりませんが、愛知県は非常に自動車の保有率が高いんですよ。車を利用する生活パターンができあがっていて、このままだと変化が起こらず、脱炭素の実現は遠いままになってしまいます。

ですから、「カーシェアを受け入れる土壌があまりない岡崎市だからこそ、あえて率先して事業を進めることに意味があるのではないか」「自動車産業が盛んな地域だからこそ、我々がやらなければならないのではないか」と考えました。

――NTT西日本さま、NTTビジネスソリューションズさまが参入された経緯は?

中島氏:NTT西日本グループでは、カーボンニュートラルへの貢献としてEVに着目した事業開発を進めており、パートナーであるREXEVのサービスにはその強みがあります。こういった流れの中で岡崎市がEV導入を検討されていることを知り、一緒に提案をさせていただきました。

――事業を進める中で、どのような点が課題となりましたか?

木村氏:岡崎市の方では、EV化のイニシャルコストの高さが大きな課題になりました。公用車はどうしても民間の営業者と比べると稼働率が下がりますので、EV車の優れたランニングコストを活かしきれるのかどうか、わからなかったのです。

そこで、NTT西日本グループのみなさまに何度もトータルコストの緻密なシミュレーションをしていただきました。途中、担当者が病気にかかるなどのトラブルもありまして、3カ月くらいはシミュレーションの結果をキャッチボールをしたんじゃないかな? おかげさまで市の中でもわりと話をスムーズに通すことができました。


土橋氏:NTT西日本グループでは、導入する68台のEV車を稼働させる電気設備の交換・改修が大きなハードルになりました。これだけのEV車の充電を制御するには設備の高圧化なども必要となり、非常にコストも掛かります。そこをどうコストミニマムに、かつ効率的な運用ができるかがポイントになりますので、我々の技術やサービスも活用しながら導入を進めました。

木村氏:68台のEV車が同じ駐車場に並び、一台ずつに充電器が設置されているので、同時に充電すると相当な電力になるんですよ。かんたんに機械を持ってくれば良いというものではなく、工事の発注から完成まで約8カ月を要した大規模工事になりました。

――最後に、カーシェアリング事業の今後の展望についてお聞かせくさい。

中島氏:NTT西日本として、ひとつは岡崎市内でEVを普及させていくために、事業者として貢献できるようにしたいということ。もうひとつは、他の自治体さんにもしっかりと展開をしていきたいということです。県内の他の自治体さんに対しても提案をしていきたいと思います。

平岩氏:岡崎市は、まずカーシェアリングという取り組みをみなさまにどんどん広げていきたいと思っています。それに合わせて自治体による運用の効率化を進め、サービス面でも全体の費用面でも市民に還元できる事業を目指したいですね。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。
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