日本製鉄は5月13日、2025年度決算を発表した。中東情勢の悪化により、2026年度業績への影響を「合理的に把握できない」と説明。
見通し上回る6504億円を計上
初めに、代表取締役社長兼COOの今井正氏は、2025年度損益概況として、関税影響を含む事業環境悪化や一過性要因による700億円規模の減益があったものの、国内製鉄所のコスト改善およびグループ会社の改善努力により、実力ベース連結事業利益で2月5日に発表された見通しを304億円上回る、6504億円を計上したことを説明した。
今井氏は、2025年度実績と2025中長期経営計画期間の総括として、「計画施策を完遂する一方で、想定を上回る事業環境の悪化に直面した。その克服とさらなる成長投資に向けた追加施策を実行した」と説明した。
具体的な施策としては、国内では生産設備構造対策、紐付き価格の是正・外部調達コスト変動影響の負担適正化、品種高度化などにより損益分岐点を4割引き下げたことを挙げた。
また、グループ会社再編によりシナジー最大化を追求するのに加えて、U.S.スチールの買収やインドでの能力拡張など海外事業の深化・拡充、原料「事業」への進化、流通を自らの事業分野へ取り込むことなどにより、幅と厚みを持つ強靱な事業構造への進化を進めてきた。
日本製鉄は、世界の鉄鋼事業環境について「危機的な状況が継続している」と強い危機感を示した。AI・電力・防衛分野を除き、国内外で製造業や建設業の需要低迷が続いているという。
特に中国では、経済減速を背景に鋼材の過剰生産が続いているという。安価な鋼材輸出の増加によって国際市況の低迷が続いており、日本国内への輸出圧力も高まっていると説明した。
中東戦争の影響、第1四半期だけで500億円規模
続いて発表された2026年度の業績見通しは、中東紛争の影響から来る「中東情勢影響」を中心に説明が行われた。
同社は中東影響に関して、「グローバル分業型のサプライチェーン化により、中東情勢が世界全体に波及すること、中東地域が経済規模拡大によって各国の重要な輸出マーケットとなっていることなどから、幅広い産業の需要に極めて大きな影響を及ぼす」と考えているという。
特に多くの産業を下支えする鉄鋼業において、その影響は大きく、今井氏は「日本製鉄は品種メニュー、グローバル展開などから対応する産業・地域の裾野も極めて広く、中東情勢が日本製鉄の業績に与える影響については、現時点では合理的に把握することができない」との見方を示した。
足元がすでに顕在化しつつあり、一定の想定が可能な影響として、第1四半期だけで500億円規模の利益押し下げ要因を見込む。事態は終結の見通しが立たず、終結後も悪影響が直ちに解消されるわけではないため、2026年度通期の業績に与える影響を現時点で合理的に定量化できず、業績見通しに含めていない。
2026年度は、中東紛争開始前の事業環境に基づく計画(2026年2月時点での当初見通し)として、継続して厳しい事業環境において、U.S.スチールの収益回復を梃子に、実力ベース事業利益として、上期3000億円・下期4000億円の計7000億円以上の確保を図る。
特に下期は年率8000億円以上とし、2027年度以降での海外事業収益拡大などによる1兆円規模への成長に向けた確固たる基盤を構築していくという。
U.S.スチール立て直しへ100人超派遣
今後の成長戦略として、日本製鉄は若手を含む国内人材の海外投入を拡大する方針を示した。特にU.S.スチールには、短期派遣を含めて100人を超える人材を投入する予定だという。
海外事業では、U.S.スチールを含む既存事業の収益力強化に加え、米国・欧州・インド・ASEANでの事業拡大を進め、各地域で生産・供給を完結させる「地産地消体制」の確立を急ぐ考え。
一方、国内事業ではグループ全体での体質強化を加速するほか、営業・技術・海外事業などの組織再編や業務集約も進めるとしている。
なお2026年度の配当は、1株あたり24円を予定している。











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