中村はウイングハーフとして起用するのがベストか(C)Getty Images

 一難去ってまた一難。塞いだそばから穴が空く。

艱難辛苦の左シャドー問題が勃発している。

 昨年末、南野拓実が前十字靭帯断裂の大怪我をした後、今年3月のイングランド戦で左シャドーを務めたのは三笘薫だった。2人は個性が異なる選手なので、シンデレラフィットによって穴を埋めたわけではない。ハイプレスやシュートについては南野に一日の長がある一方、スピードや推進力に長け、ロングカウンターの軸としても機能する三笘は、南野とは異なる形で左シャドーを再形成した。ある程度引いた状態からでも速攻に出られる三笘型もまた、面白い。

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 さあ、これでW杯へ行こう――。

 そう思った矢先、メンバー発表の1週間前に、その三笘がハムストリングを負傷してしまった。南野に比べると大怪我ではないが、タイミングが悪かった。完治に2か月かかるため、目前に控えたW杯には間に合わない。5月15日に発表された北中米W杯のメンバーリストには南野だけでなく、三笘の名前もなかった。残念でならない。

 補修した左シャドーの穴が、再び空いてしまう悩ましい事態。

だが、嘆いてばかりもいられない。埋める方法を考えなければならない。

 このポジションに求められる主な役割は、ビルドアップ、ラインブレーク、ハイプレス、カウンター、そして得点だ。ボランチにも言えることだが、360度周囲に味方がたくさんいるため、好守、中外、連係で関わるべき局面が多岐に渡る。非常に重要なポジションだ。

 直近1年の左シャドー起用において、南野と三笘のほかに試された選手、つまり今回2人の代役候補に挙げることができるのは、鎌田大地、中村敬斗、鈴木唯人、後藤啓介の4人だ。あとは伊東純也も3月のトレーニング中にシャドーに入ったとの情報もあるので、伊東の可能性もある。

 現状、上記の多岐に渡るタスクを理解しつつ、最もバランス良くこなせるのは鎌田だ。しかし、おそらく鎌田の左シャドーは、スタメン=プランAにならないはず。なぜなら鎌田を左シャドーに置くと、ボランチが3人に減ってしまう。ダブルボランチの場合、試合中に交代するボランチが1人しかいない。これは不自然だ。

鎌田をボランチに固定してこそ、ボランチ4人という最小限の構成はどうにか成り立つわけで、後半に立ち位置を修正するケースやアクシデント対応を除けば、鎌田が左シャドーに入ることはないだろう。

 また、後藤の左シャドーもボリビア戦の数分間しかやっていない。やはり最有力は、中村、鈴木唯の2人だ。

森保ジャパン最大の焦点…左シャドーの最適解は? 第一候補は鈴木唯人、ジョーカー維持なら中村敬斗は“温存”が理想か

鈴木唯はアイスランド戦で結果を残したい(C)Getty Images

 中村か、鈴木唯か。よりパフォーマンスを計算できるのは経験がある中村だが、彼を左シャドーへ移す場合は、左ウイングハーフの代役を用意しなければならない。ボリビア戦の後半には前田大然、ガーナ戦の後半には鈴木淳之介が左ウイングハーフに入り、中村との組み合わせでプレーした。

 ただし、ボリビア戦の1ゴール1アシストなど、これまで中村の左シャドー起用は、後半に攻撃を変化させるジョーカー的オプションとしてゲーム戦略上、重要な効果を挙げてきた。つまり、中村を左シャドーのスタメンに置く場合、新たなジョーカーが必要になる。その候補は塩貝健人なのか、後藤啓介なのか、あるいは小川航基なのか。いずれにしても博打感が強い。

 中村の左シャドーは、可能ならジョーカーとしてキープしたい手札だ。彼はシュートやアシストなど仕掛けに優れた選手で、いわゆる「決定力」がある。

終盤に局面が固まった時間帯ならともかく、スタメンから左シャドーに置いて複雑なタスクまみれにするのは、中村敬斗がもったいない。できるだけシンプルに、ふさわしい局面で仕掛けさせたい選手だ。

 その意味では、鈴木唯が三笘の代わりに左シャドーのスタメンにフィットできれば、いちばん楽だ。中村の起用法を含め、ゲーム戦略全体への影響を抑えられる。これまで鈴木唯は左シャドーだけでなく、右シャドーでも起用されてきたので、南野や久保建英にアクシデントがあった際の左右汎用のシャドーのバックアップとして考えられていたのだろう。まさに今がそのとき。三笘に代わる第一候補は、鈴木唯だ。

 ただし、問題は実績。左ウイングハーフとの組み合わせを見ると、イングランド戦の終盤に鈴木淳と、アメリカ戦ではスタメンで前田と、オーストラリア戦では中村と、それぞれ左サイドで組んでいるが、プレー時間が短く、その機能性は南野や三笘に及ばない。本番までに連係が高まることを期待したいが、鈴木唯が鎖骨骨折から復帰に時間を要するとなれば、大切な機会である5月31日のアイスランド戦に出られない可能性もある。

 もし、そこで鈴木唯に目処が立たなければ、左シャドーは中村が第二候補になるが、その場合は別のゲーム戦略、別のジョーカーを持たなければならない。アイスランド戦が一つの目処だ。

 また、おそらく誰が左シャドーの代役に入っても、三笘-中村、あるいは南野-中村ほどの連係は作り出せない。根拠なき高望みはできない。その場合、特にビルドアップやラインブレークは左サイドよりも右サイド、久保建英と堂安律にかかる期待と負担が大きくなりそうだ。彼らの重要性もまた、増したと言える。

 この苦難をどう乗り越えて行くか。泣いてばかりもいられない。高ければ高い壁のほうが、登ったとき気持ちいいそうだ。

[文:清水英斗]

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