なにわ男子の道枝駿佑が“5代目・金田一一”に扮(ふん)した『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系/毎週日曜22時30分)がスタートした。これまでKinKi Kidsの堂本剛に始まり、嵐の松本潤、KAT‐TUNの亀梨和也、Hey!Say!JUMPの山田涼介と、ジャニーズ事務所の中で脈々と受け継がれてきたこの役。
【写真】堂本剛、松本潤、亀梨和也、山田涼介 歴代『金田一少年の事件簿』
■「オペラ座館殺人事件」(第1シリーズ第3話)
まず『金田一少年の事件簿』といえば、このエピソードは欠かせない。原作コミックでは最初のエピソードとして描かれ、以後何度も惨劇の舞台として選ばれた孤島のホテル「オペラ座館」。そこで演劇部の合宿に同行したはじめ(堂本)と七瀬美雪(ともさかりえ)が、『オペラ座の怪人』に見立てた連続殺人事件に直面していくのである。
部活動の合宿というシチュエーションによって“学園ドラマ”としての体裁を保ちながら、孤島という密室性の高いエッセンスが加えられる。そこに『オペラ座の怪人』というもうひとつの物語性がシンクロしていくのだから、1話完結のエピソードとしてはかなりの濃密さ。何といっても後半の解決編の演出は見応え十分で、原作とは異なる犯人の顛末(てんまつ)がかなりドラマチックなものになっている。
■「蝋人形城殺人事件」(第1シリーズ第7話・第8話)
第1シリーズのクライマックスとして、初めて前後編構成で制作されたこのエピソードは、その作り込みの緻密さに目を奪われる。舞台となるのは日本に移築された中世ドイツの城、通称“蝋人形城”。その所有権をかけたミステリーナイトに参加することになったはじめと美雪、剣持勇(古尾谷雅人)の三人は、世界中から集まった一癖も二癖もある参加者たちと共に“レッドラム”の殺人ゲームに巻き込まれていく。
登場人物たちを模した蝋人形に、城の内部の独特な空気感。
■「怪盗紳士の殺人」(第2シリーズ第5話・第6話)
1話完結と2話完結が交互に展開した第2シリーズ。1話完結エピソードもCDブック収録エピソードを初めて視覚化した「悪魔組曲殺人事件」や、大胆に原作をカットしてスピード感を持たせた「金田一少年の殺人」、ドラマ『銀狼怪奇ファイル』(日本テレビ系)とコラボした異色作「異人館ホテル殺人事件」と、テレビドラマとしての魅力を生かした粒ぞろい。そうしたなかで2話完結の3つのエピソードは、オリジナル展開を加えながらも舞台設定を存分に見せるかたちで正攻法に原作の良さを際立たせていく。
そのなかでも特に魅力的なのが「怪盗紳士の殺人」。絵画と共にそのモチーフをも盗むという怪盗紳士からの挑戦状を受け、ターゲットとして予告された世界的画家の邸宅に出向いたはじめは、そこでクラスメイトだった和泉さくら(遠藤久美子)と再会する。美しいラベンダー畑の情景はもちろん、原作と異なり第1・第2シリーズを通してはじめの同級生として登場する真壁誠(佐野瑞樹)を加えることで物語に奥行きが生まれる。“電話を待つ”という動作も現代ではできない緊張感だ。
■「速水玲香誘拐殺人事件」(第3シリーズ第6話)
堂本の第1シリーズ、第2シリーズから大きくテイストが変わった松本の第3シリーズ。メイン演出を務めた下山天の映像センスは「魔術列車殺人事件」や「幽霊客船殺人事件」のような隔絶された空間でこそ際立つが、正反対のシチュエーションで繰り広げられる「速水玲香誘拐殺人事件」でも存分に発揮される。
アイドルの速水玲香(酒井若菜/原作では「雪夜叉伝説殺人事件」で、はじめ(松本)と出会うが、ここでは初恋の人という設定だ)がマネージャーと共に誘拐されてしまい、はじめがその身代金の運び役を務めることになる。
■「雪影村殺人事件」(第4シリーズ第7話)
2度のスペシャル版を経て連続ドラマが放送された山田涼介版『金田一少年の事件簿N(neo)』の最大の特徴は、原作でもはじめの宿命の敵となる“地獄の傀儡師”こと高遠遙一(成宮寛貴)とのバトルが全体を包括していること。そうした一つの流れを最終回前に断ち切るように描かれた「雪影村殺人事件」は、ミステリーとしてよりも青春ドラマとしての魅力に満ちあふれている。
“夏に雪が降る”という雪影村に数年ぶりに訪れたはじめ(山田)。懐かしい友と再会し、その内の一人が1年前に亡くなっていたことを知らされる。そして雪の降る朝を境に、一人ずつ友人が殺されていく。原作の時点で他のエピソードと一線を画した名作であったものを、雪の描写から漂う切なさまで見事に再現。また、高遠との最後の戦い(「薔薇十字館殺人事件」)を前に、はじめと美雪(川口春奈)の関係性に確かな動きを与えるラストの駅でのやり取りがまたポイント高い。(文:久保田和馬)
ドラマ『金田一少年の事件簿』は、日本テレビ系にて毎週日曜22時30分放送。