堺雅人主演ドラマ『VIVANT』(TBS系/毎週日曜21時)が、佳境に入りさらなる盛り上がりを見せている。企業の130億円のご送金事件から始まったこのドラマも、今では日本の安全を懸けた壮大な物語に。

まさか、“別班”の実態を描いた作品になるとは、誰が予想していただろうか。とにかく、毎週私たちの想像を遥かに超えてくる『VIVANT』。第7話であまりにも衝撃的な出来事が起こったため、「もう誰のことも信じられない!」と言いたいところだが…。気を取り直して、今後の行方を考察していきたいと思う。※以下、『VIVANT』第7話までの内容を含みます。

【写真】にらみ合う乃木(堺雅人)と黒須(松坂桃李) 『VIVANT』第8話場面カット

 本作は『半沢直樹』シリーズなどを手がけてきた福澤克雄が企画・演出を手がけるアクション・アドベンチャー大作。
大手商社の社員にして特殊部隊“別班”メンバーの乃木憂助(堺)と日本の公安警察、そして謎のテロ組織「テント」との戦いをスリリングに描いていく。

■乃木に撃たれた別班メンバーは生きている?

 危ない橋を渡りながらも、日本の安全を懸命に守ろうとしてきた乃木。そんな姿を見ていると、どうしても彼が悪に染まった人間だとは思えないのだ。

 だから、第7話で乃木が仲間であるはずの別班メンバーを撃ったことが、いまだに信じられない。というか、「乃木のことだから本当は何か考えがあるのでは?」と思ってしまう。読唇術で、「これ、作戦ですよね? 裏切った体で、ここ(=テントのアジト)に侵入する作戦でしょ?」とたずねた黒須駿(松坂桃李)のように。


 乃木が仲間を裏切っていないと仮定するなら、彼が撃った別班の4人は死んだふりをしていることになる。おそらく、乃木が作戦を共有していたのだろう。「お前らを裏切ったふりをしてテントに潜入する」と。

 だが、司令塔の櫻井里美(キムラ緑子)と黒須は、その作戦を共有されていないことになる。乃木が銃で4人のカメラをぶち抜いたのは、櫻井に今後の流れを見せないようにするためだったのか。また、黒須が生かされたのは、彼がテントの一員であると察知した説も考えられる。


 ただ、もしも乃木が父であるノゴーン・ベキ(役所広司)に会うためだけに、別班の仲間たちを撃ち殺したのだとしたら…。残念ながら、4人は死亡してしまっているのだろう。予告映像には、4個の棺が飛行機に運ばれるシーンが映っていたが、乃木を信じたいから「その棺もフェイクなのでは?」と思ってしまう。

■“薫=峰不二子”説 ただの医者、、なはずがない!

 ただの医者では終わるわけがないと噂されている柚木薫(二階堂ふみ)。たしかに、ただものではないとは思っていたけれど、乃木へのハニートラップを仕掛けてきたあたりからかなり怪しくなってきた(本当に好意があるのなら申し訳ないが…)。

 そこで考えたのが、薫は『ルパン三世』の峰不二子ポジションなのでは? ということ。
峰不二子は、ルパンが苦労をして手に入れた宝を最後の最後で奪い取ることもある魔性の女。そして、時には色仕掛けをするシーンも。

 また、乃木の友人でCIAのサム(Martin Starr)の部屋に映画『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』(2019年)のポスターが飾ってあったことも印象に残っている。ちなみに同作では、心臓病を抱えた息子のために5億ドルの横領をした父親が、殺し屋に追われて自爆。峰不二子は、その息子とともに逃亡することになる。

 このストーリーが、どうにも薫と似ているような気がしてならないのだ。
薫が世話をしているジャミーンは心臓病を患っており、彼女の父・アディエルはテロに巻き込まれて死亡。さらに、『VIVANT』の始まりは130億円のご送金事件…。偶然だというには、あまりにも出来すぎている。

 やはり、薫は医者では終わらないのだろう。すべてをかっさらっていく峰不二子…までとはいかなくても、テントの一味であるとか、インターポールであるとか、何か裏の顔は持っていそうだ。

■“ハリポタ好き”だからこそ伝わる合図

 「このあとホテルでスネイプ社と商談があるので」

 飛行機を降りた乃木が、野崎守(阿部寛)にかけていた言葉。
最初は「ふざけて言っているのかな?」と思ったが、どうやらこれは『ハリー・ポッター』好きの野崎にだからこそ伝わる合図だったようだ。 

 ここでわざわざ“スネイプ”を選択したのは、深いわけがあったのだろう。ちなみに、『ハリー・ポッター』に登場するキャラクター、セブルス・スネイプは、二重スパイだった。乃木は、自身が二重スパイになると野崎に宣言したのか。それとも、ほかに二重スパイが潜んでいる危険を伝えたかったのか。

 また、乃木が飛行機のなかで野崎の手を握りながら、「鶏群の一鶴、眼光紙背に徹す」と伝えていた場面もあった。これには、“あなたのような優れた人なら、行動の裏にある真意を読み取ることができるでしょう”という意味が含まれていたような気がする。次週あたりで、乃木が思う“スネイプ”とは誰のことなのかが明かされるだろうか。

 ラストスパートに向けて、SNSの考察も大盛り上がりの『VIVANT』。第8話では、どんな“まさか”を用意してくれているのだろう。乃木の人生を懸けた戦いを、最後までじっくり見守っていきたい。(文:菜本かな)

 日曜劇場『VIVANT』はTBS系にて毎週日曜21時放送。