女優・戸田恵梨香が、代表作を“また”ひとつ積み上げた。4月27日に世界独占配信がスタートしたNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』(全9話)。
【写真】『地獄に堕ちるわよ』で細木数子を体現 67歳までをひとりで演じる戸田恵梨香
◆ミサミサから始まった、代表作量産の20年
兵庫県出身の戸田は、小学5年生から芸能活動を開始し、中学を卒業のタイミングで上京。本格的に女優業を開始した。ひとりの俳優のこれまでの歩みを振り返る際、「これが代表作である」と、1つや2つの作品を挙げられることは多いが、戸田はいわゆる“代表作”と取り上げたくなる作品がとにかく多い。
2006年には映画初出演となった『DEATH NOTE デスノート』で、デスノートを保持するアイドルの弥海砂(ミサミサ)を演じて、早くも人気を獲得。人気漫画の実写化というチャレンジングな作品で、20年が経つも、ミサミサは今なお根強いファンを持つ。翌2007年には、心理サスペンスドラマ『LIAR GAME』(松田翔太とのW主演)で連続ドラマ初主演を務めた。『DEATH NOTE』と同様、漫画原作ものながら、こちらも作品とともに高い評価を得ることになった。さらに2008年には東野圭吾の同名ミステリー小説を、宮藤官九郎が脚色したドラマ『流星の絆』で、二宮和也、錦戸亮と三兄妹を演じ、同作ほかでエランドール賞新人賞などに輝いた。
2008年には、約10年にわたりドラマ、映画版と続くことになった『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』(フジテレビ系)シリーズのスタートも。気が強く誤解されやすい部分もありながら、心の内に優しい芯のある緋山美帆子として、周囲の仲間たちと共に成長過程を見せていった。2018年の劇場版では日本映画の年間興行収入第1位を獲得する作品になっている。
2010年は、戸田の演じてきたキャラクターの中でも、特に個性の強い「変人」を演じた『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』が放送。堤幸彦監督によるクライム×ファンタジーサスペンスドラマであり、超能力(SPEC)を持つ犯罪者と戦う刑事たちを描いた。戸田は、ボサボサ頭に、左腕には包帯を巻き、三角巾姿のIQ201の天才刑事・当麻紗綾を演じ、新境地を切り開く。シリーズそのものがいまだに不動の人気を誇るが、それも加瀬亮演じる瀬文との凸凹コンビが成功したからこそ。
◆キャリアを重ねて見えた、戸田恵梨香の本質
2018年には人間ドラマで惹きつけた。大石静のオリジナル脚本による純愛ラブストーリー『大恋愛~僕を忘れる君と』である。若年性アルツハイマーを発症する医師を演じた戸田は、彼女を10年にわたって支え続ける元小説家を演じたムロツヨシと共に、その高い演技力で、視聴者を物語に引き込んだ。「役を引きずらない」とたびたび発言している戸田だが、2018年時点において、本作のことを「唯一気持ちが切り替えられなかった作品」と語っていた。
その翌年2019年9月30日から2020年3月28日までの半年間、NHK連続テレビ小説『スカーレット』が放送された。水橋文美江の脚本で、信楽焼初の女性陶芸家となった川原喜美子役で第3週から登場。15歳から40代後半までを演じきった。さらに2022年には湊かなえの同名小説を映画化した『母性』が公開。
今年の1月期に放送されたばかりの日曜劇場『リブート』では、一人二役を担当。黒岩勉による脚本で、顔を“リブート”するという一見、とんでも設定ながら、最後には家族の物語として収束する、黒岩脚本の技巧優れる作品となった。この巧さも、“リブート”を成立させた主演の鈴木亮平や戸田恵梨香らの演者たちが、登場人物たちを血の通ったキャラクターとして成立させ得たからである。
いくつもの作品を挙げてきたが、単に戸田の出演作を列挙したわけではない。女優業の本格開始から20年と少しで、「これが戸田恵梨香の代表作」と一般的に多く名が挙がる作品だけで、これほどあるのは驚きだ。
なぜ戸田の代表作はこれほど多様なのか。その答えのひとつが、彼女の仕事への姿勢にある。時に監督やプロデューサーに「違うと思う」と意見を伝えることもあると、これまでのインタビューで話している戸田。『地獄に堕ちるわよ』でも、最終回の準備稿を読み、「監督、これでいいんですか!」と迫ったと、Netflixの会見で明かされていた。
◆『地獄に堕ちるわよ』が証明した、戸田恵梨香という必然
さて、現在配信中の『地獄に堕ちるわよ』である。タイトルそのものにもなっている「あんた、地獄に堕ちるわよ!」などの強烈フレーズを発し、正直、内容は知らなくても多くの人が耳にしたことのある六星占術と「大殺界」といったワードを浸透させた細木数子の半生を、「この物語は事実に基づいた虚構である」として放った全9話によるドラマだ。
1946年の戦後の混乱期から始まる本作で、生きたミミズを口にして飢えを凌ぐほどの貧困の中で育った数子は、20代にして複数のナイトクラブを繁盛させ"銀座の女王"と呼ばれるまでに。多くの出会いや裏切りなどを重ねながら、自らの“欲”に従い突き進んでいく。戸田は、学生時代から白髪の混じる67歳までを一人で演じている。成長期の銀座をはじめとした、激動の時代を見事に再現したセットや衣装、人の感情を煽るような印象的な音楽をバックに、物語は現代と過去を行き来する。
17歳からキャバレーに勤め、身を捧げたオーナー(奥野瑛太)に騙されたことを知った時の怒り、大地主の息子(田村健太郎)に見初められるも、“嫁”でいることを強要されて東京へと戻った際の強烈な決別、不動産会社の社長(中島歩)との夢に心を寄せるが騙されたと知った絶望、ただひとり運命と言える相手(生田斗真)との出会い。また、日本を代表する大歌手・島倉千代子(三浦透子)との愛憎劇など、戸田は、観終わっても耳に残る高笑いや、話題になった口を触る数子のクセ、感情を爆発させる涙と、全身を使って数子を生きていく。
6話までは数子自身の語る飾り立てられた半生を描き、7話以降は周囲の証言を基に、これまでが裏返る。善と悪、虚と実を入り乱れさせながら、数子に共感を求めるでもなければ、断罪もしない本作。けん引するのは、戸田の圧倒的な存在感だ。実際の細木数子のモノマネにする必要はないとした制作陣の判断は大成功だった。
もう一人の主人公とも言うべき作家の魚澄美乃里(伊藤沙莉)との、クライマックスの正面切っての直接対決では、はじめ監督とは違う演技プランだったと聞く。本編に収められた「それが細木数子よ!」と目を見開き叫ぶ姿は、これまでに多くの代表作を持つ戸田の、どの顔とも全く違った。戸田の"代表作"に、またひとつの作品が加わった。5月23日には、俳優の磯村勇斗が企画・プロデュースを務める「第1回しずおか映画祭」の壇上で、「死ぬまでこの仕事を続けたい」と口にした戸田。代表作年表は続く。
(文・望月ふみ)
Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』は、Netflixにて4月27日より世界独占配信。

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