北朝鮮の金正恩総書記が6日、平壌の金日成競技場で開かれた朝鮮少年団創立80周年記念大会に出席し、少年団員らを前に祝賀演説を行ったと、朝鮮中央通信が報じた。 演説で金総書記は、「健康な体で両親に孝心を尽くし、学業に励み、組織生活で模範になること」を呼び掛け、「皆さんによってわが祖国がより若くなり、より美しくなる」と語った。
報道だけを見るなら、子どもたちの成長を願う穏やかな教育論にも映る。 しかし、その言葉を額面通りに受け取る向きは少ないだろう。 実は金総書記は4年前、朝鮮少年団第9回大会の参加者らに送った書簡で、はるかに露骨なメッセージを発していたからだ。 当時の書簡では、「皆さんが一瞬たりとも忘れてはならないのは、今日もアメリカ帝国主義者とその手先が皆さんの揺籃を踏みにじり、希望を奪おうと虎視眈々と機会をうかがっているということ」だと強調。「少年団員は、革命の敵を限りなく憎悪し、彼らと戦う気構えで人民軍援護にも先頭に立ち、『少年』号戦車や大砲も作って送り、もし敵が襲いかかってくれば戦火の少年近衛隊員のように勇敢に戦って300万の朝鮮少年団の気概を示さなければなりません」などと述べている。 今回の演説ではそうした表現は見当たらないが、国家が子どもたちを体制守護の「戦士」として育成する構図が大きく変化したわけではないだろう。 むしろ今回の演説に漂う「優しい父親」のイメージには、別の事情が透けて見える。 北朝鮮は昨年以来、ロシアへの派兵を公式に認め、参戦兵士を英雄として大々的に宣伝してきた。戦死者を顕彰する記念施設の建設も進み、国営メディアは「歴史的偉勲」を繰り返し称えている。 だが、その一方で住民の間には複雑な感情も広がっているとされる。デイリーNKの内部消息筋などによれば、戦死者の増加や記念館建設を巡り、「自分の子どもも将来戦場へ送られるのではないか」と不安を抱く住民が少なくない。 子どもたちの前で「敵を憎悪せよ」と叫ぶより、「勉強しなさい」「元気に育ちなさい」と語る方が、こうした不安を和らげる効果は大きいだろう。
安全保障を巡る不安はどの国にもあるが、外国の戦場に兵士を送り込む選択は当たり前のものとは言えない。金正恩氏が少年少女らに投げかけた言葉に、物騒な響きがこもる所以である。
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