血糖値485mg/dL、ヘモグロビンA1c(HbA1c)11%、長年連れ添った体重も100キロの大台をもちろん目前にして、ついに糖尿病治療薬「マンジャロ」の投与を開始した。
SNS上では、この薬が「やせ薬」として拡散し、個人間の不正売買が横行しているという。
自由診療では1本1万5000円以上の高値がつくらしいが、球体のように丸々と太った筆者は、まごうことなき糖尿病患者のため、保険適用により1000円以下で購入できる。

流行りの「マンジャロ」で減量に成功した30代の不健康記者(1...の画像はこちら >>

減量するも、毎日具合が悪い

筆者は数年前、マンジャロと同様に食欲を抑えるGLP-1受容体作動薬の経口タイプを服用していたが、胃がムカムカして毎日続けられなかった。そのため、週に一度お腹に2.5ミリグラムを注射するだけで効果が1週間持続するマンジャロのほうが、精神的にも継続しやすいと感じた。

いざ打ってみると、確かに翌日から食欲が綺麗に消え去った。ショックだった。自分の取り柄は大食いだったのに、その個性が失われるというのだから。

それに加え、ずっと胃液が込み上げ、お腹も張っていて、食べ物を前にしても「食べたい」という意欲が湧かない。もはや1日の楽しみが食事となっていた筆者にとって、これほど辛いことはない。さすがに深夜が近づくとわずかに食欲も回復するが、水を飲むだけで十分に満たされてしまう。おまけに、その状態が1週間続く。

もう、こんな生活から逃れるために打つのをやめようと思っても、ほとんど食事を摂取していないのだから、確実に体重は減っていく。

「だったら頑張るか」

食べることは好きだが、健康体になれるのであれば、筆者だって我慢はできる。しかし、1カ月で4本のマンジャロを打ち、3キロほど減量できたものの、毎日具合が悪い。
横にならないと気持ち悪くて、仕事にも全く集中できない。明らかにQOL(クオリティ・オブ・ライフ)はどん底まで下がっていた。

真犯人はマンジャロではなかった

そこで、かかりつけの医師に「効果は出ているが、毎日が楽しくない」と伝えた。それでも、痩せられるのであれば、容量を増やしてでも毎日何本でも打つ覚覚悟があることも併せて伝えた。だって、安いから。

すると、医師は筆者の顔を見てこう提案した。

「食事を取れないのはまずいので、マンジャロは続けて、メトグルコをやめましょう」

メトグルコは、2型糖尿病の治療に広く用いられる経口血糖降下薬だ。週に一度のマンジャロと違い、こちらは毎日服用していた。肝臓での糖の作りすぎを抑え、筋肉や脂肪での糖の利用を促すことで血糖値を下げる薬なのだが、それをやめたところで、何の意味があるのか当時の筆者にはわからなかった。

しかし、メトグルコを飲まずにマンジャロを打って寝た翌日、驚くべきことに猛烈な空腹感で目が覚めた。

「ご飯が……。ご飯が食べられる!」

どうやら、これまでの体調不良の真犯人はマンジャロではなく、メトグルコにあったようだ。それを飲まなくなっただけで、胃の不快感だけでなく食欲も劇的に回復した。


筆者は歓喜し、その足で大急ぎでサイゼリヤへと向かった。

「2000円分、爆食いするぞ!」

「ミラノ風ドリア350円」に驚愕

流行りの「マンジャロ」で減量に成功した30代の不健康記者(100キロ弱)が、サイゼリヤで“2000kcal”を貪った夜
今回頼んだメニュー。炭水化物が多いのはご愛敬
2026年に入り、X上では「サイゼリヤの味が落ちた」「以前より品質が下がった」とするユーザーの投稿が相次いでいる。近年、外食チェーン各社は相次いで値上げを実施。原材料費や物流費、人件費の高騰に加え、円安による輸入食材価格の上昇も続いているためだ。

その逆風の中で、サイゼリヤは徹底して低価格路線を維持し続けてきた。それゆえに利用者側からは、「本当にこの価格で維持できるのか」「どこかで大幅なコストカットをしているはず」という見方も強まっているのだ。

学生時代はたびたびサイゼリヤを訪れていた筆者だが、大人になってからは久しく足を運んでいない。そのため、開いたメニューを見て、その凄まじい安さに驚愕した。

「ミラノ風ドリア、いまだに350円なの?」

さすがに採算が合うのか心配になる安さだ。そして、筆者は1カ月近く失っていた食欲がマグマのように回復しているため、さまざまなメニューを片っ端から食べたかった。

そこで、モッツァレラのカプレーゼ(430円)、柔らか青豆の温サラダ(200円)、半熟卵のミラノ風ドリア(350円)、バッファローモッツァレラピザ(400円)、ペンネアラビアータ(430円)、セットドリンクバー(200円)を豪快に注文。合計2010円で、ドリア、ピザ、パスタと炭水化物を3つも頼むことができた。

ドリンクバーとオリーブオイルに要注目

流行りの「マンジャロ」で減量に成功した30代の不健康記者(100キロ弱)が、サイゼリヤで“2000kcal”を貪った夜
レモンシロップがうれしい
サイゼリヤのドリンクバーには、他店にはない「レモン」のシロップが用意されている。普段はコーラにアイスコーヒー用のガムシロップを2つも投入するほど甘党の筆者だが、脂っこいメニューが多いサイゼリヤでは、爽やかなレモンをコーラに混ぜるのが最強の最適解だ。


テーブルには、カプレーゼや温サラダから順に運ばれてくる。サイゼリヤには配膳ロボットがいないので、複数の店員が列をなして一気に料理を提供してくれる。その様子は、まるでコース料理のようだ。

流行りの「マンジャロ」で減量に成功した30代の不健康記者(100キロ弱)が、サイゼリヤで“2000kcal”を貪った夜
ちなみにこのオリーブオイルはレジで購入できる
そして、サイゼリヤに来て絶対に忘れてはならないのが、オリーブオイルだ。今やスーパーで買うとそれなりの値段がする高級品だが、サイゼリヤではなんと無料のかけ放題。だから、頼んだすべての皿にドバドバとかける。すでにオイルがかかっているカプレーゼにも、容赦なく“追いオリーブ”だ。

涙ながらに無我夢中でかき込んだ

まずは、カプレーゼから箸をつけた。食欲がない時は油もチーズも一切受け付けなかったが、本当は大好きな組み合わせだ。トマトと一緒に口へ放り込むと、涙がこぼれた。

「うま……。うまい……。
うますぎる」

1カ月ぶりの油、旨み、そして確かな食感……。あとはもう、むさぼるように料理を無我夢中でかき込んだ。サイゼリヤは、失われていた食事の「楽しさ」を思い出させてくれた。

それに、「味が落ちた」と噂されているが、15年前に食べた記憶の味とそこまで大きな違いはなかったと思う。もっとも、無我夢中だったので、私の舌がよくわかっていないだけかもしれないが……。

物価高でさまざまなサービスが値上がりし、市民たちの生活は苦しくなる一方だ。しかし、サイゼリヤは質を落とせず、圧倒的な安さを提供し続けている。その真摯な姿勢には感謝すべきだろう。

きっと来月以降、筆者が打つマンジャロの量は増え、いよいよ思うように食べられなくなる日がやってくる。だから、その分、健康なみんなにはサイゼリヤを存分に堪能してほしい。

ヴァルハラで会おう。

流行りの「マンジャロ」で減量に成功した30代の不健康記者(100キロ弱)が、サイゼリヤで“2000kcal”を貪った夜
大満足のディナーと相成った
【今回の摂取カロリー:2023kcal】

<TEXT/千駄木雄大>

―[「チェーン飯」を2000円で爆食い]―

【千駄木雄大】
編集者/ライター。
1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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