12月23日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)は、今季のサッカー界で起きた出来事を番組独自の視点で表彰する「FOOT×BRAINアウォーズ」の後半戦が開催。あるサポーターの物語に、出演者全員が胸を打たれた。


目を疑うようなピッチ上のシーンを選ぶ「一体どういうこと!?ピッチで起こった謎部門」には、川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島、ブラウブリッツ秋田の3チームがノミネートされた。

今シーズンの天皇杯優勝に貢献したチームの顔であり、川崎一筋14年の登里享平は、試合中まさかの出来事に見舞われる。5月に行われた柏レイソル戦でのこと。川崎の1点リードで迎えた前半アディショナルタイムで、登里は相手チームを突き放すファインゴールを決める。しかし、喜んだのも束の間、その3秒後にはピッチに倒れ、担架で運ばれることに。

実はゴール後にチームメイトの小林悠が抱きついてきたことで、登里は肩を負傷。
登里は肩を負傷した瞬間について、「ハグが原因で肩を巻き込んだ形になっちゃって」と述懐。怪我を心配されたものの、その後はピッチに復帰し、フル出場を果たしている。

一方、サンフレッチェ広島では、ブラジル人選手のエゼキエウが魅せたパフォーマンスに注目が集まった。9月に行われた名古屋グランパス戦でゴールを決めたエゼキエウは、隠し持っていたマスクを被り、スパイダーマンに変身。イエローカード覚悟で行った渾身のパフォーマンスは、1歳の息子のためだったのだとか。

エゼキエウは「息子が大好きで家でスパイダーマンごっこ遊びをするんだ。
そんな息子のためにパフォーマンスをした。そのあと息子がスパイダーマンを見たときには、“パパだ! パパだ!”と言ってくれるようになったんだよ」と、微笑ましいエピソードを披露した。

また、J2のブラウブリッツ秋田では、試合中にカメラが捉えたありえないモノが話題となる。秋田がコーナーキックを獲得すると、選手の背後に現れたのは、なんとバスの荷物入れから試合を間近で観戦するバスの運転手。実は選手の輸送で使用したバスの駐車位置が、ピッチに近かったことによって起きた珍事だった。MCの勝村政信は試合をのんびり生観戦するバスの運転手を部門の大賞に選出。
「バスがあそこにあるってこと自体も珍しいし、あんな近いところでリラックスして見てる人って、なかなか見ないですからね」と、その理由を語っていた。

さらに、芸能界一のサッカー通である平畠啓史が選ぶ「平畠賞」は、鹿島アントラーズの安西幸輝に決定。安西は相手選手と競り合ってスローインをする瞬間に、本当は相手ボールだったことを知り、新喜劇顔負けのズッコケリアクションを披露する。平畠が「そんなリアクションいりますかね」と呆れると、解説の北澤豪も「(リアクションが)サッカー選手じゃないよ」とツッコんでいた。

そして、続く「激レア!名物サポーター部門」では、Jリーグを様々な形で支える名物サポーターを表彰。最初にノミネートされたのは、川崎フロンターレの名物サポーター・中山茂さんだった。
チーム発足当初、十分な広さの練習場を持っていなかった川崎は、1999年に中山さんの所有する広大な土地に麻生グラウンドを建設。中山さんは「地域のためになるなら」と承諾し、2010年には選手寮の建設費も自ら出資している。

中山さんは「三笘薫選手だって田中碧選手だって、みんなこの寮から出たんですよ。守田英正選手だって、全員そうですよ。こんないい選手がここで生活して、こんな嬉しいことはない」と、日本代表となった選手たちの活躍を喜んでいた。

2番目にノミネートされた林久美子さんは、95歳のAC長野パルセイロの名物サポーター。
息子の光彦さんの付き添いでスタジアムへ行き、馴染みのサポーター全員と挨拶するのがルーティーンだそう。長野にハマった理由を尋ねると「息子が行くなら、私も行ってみようかなって。家にいてもしょうがないし、さんざん働いたから、もういくらか遊んでもいいかって感じ」と話す林さん。他のサポーターから「総監督」と呼ばれている林さんは、歴代の監督や選手たちからも愛される存在になっていた。

最後にノミネートされたのは、去年の天皇杯決勝で大旗を振り続けて注目を集めたヴァンフォーレ甲府のサポーター・木村和人さん。1999年に長崎県から山梨県に引っ越してきた木村さんは、たちまち甲府の虜になる。
当初は観戦しているだけだったが、次第に選手を応援したい気持ちが強くなり、ゴール裏で大旗を振るようになったという。しかし、2005年に脳腫瘍が発覚。後遺症によって左半身が不自由になった木村さんだったが、それでも力の限り旗を振り続けてきた。

そんな中、妻・恵美子さんが乳がんを患ってしまう。木村さんは「神様のところに行って、願掛けをしたんですよ。女房を助けてくれって、その代わり好きなことを辞めるからっていう願掛けをしたんですよね」と回顧。すると願いは通じ、恵美子さんは快方に向かい、木村さんも再び旗を握ることに。6年ぶりの応援となった天皇杯決勝で、甲府の初タイトルを見届けた木村さんは「涙があふれてきちゃったよね。しかも勝って日本一ですからね」と歓喜の瞬間を振り返った。

こうしたサポーターたちの熱い思いに、勝村は「Jリーグが30年経って、こんなコアなサポーターの皆さんがいらっしゃるんですよ」と感動。この部門の大賞については、「(大賞を選ぶことが)皆さん、難しいっておっしゃっていましたけど、簡単でした。全員です。ありがとうございます」と、ノミネートされた3名のサポーター全員を選んでいた。

勝村は「この番組で、こんなに泣きそうになったことは初めてです。サポーターの歴史がチームの歴史とリンクしていって、お互い歩み始めて、新しい形が生まれてくる」と総括。「サポーターの美しさがJリーグ30年超えて、日本にも定着してきたんだなっていう。その思いにキュンとしていますね。素晴らしかったです」と締めくくった。