注目はトヨタのCASE技術を活用した、軽に相応しい先進安全技術の開発や電動化の動きである。
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ライバルとしてしのぎを削ってきたスズキとダイハツの2社が手を取り合うというのは驚きのニュースである。両社のトップは次のように話している。
「国民車であり、ライフラインである軽自動車を時代の変化に合わせて進化させ、お客様の生活をより豊かにする道具として先人たちが作り上げてきた“芸術品”のバトンを未来につなぎたい、それが我々の使命であり、願いです」(スズキ・鈴木俊宏社長)
「お求めやすい価格を維持しながら、CASE技術を普及し、CO2を現状よりさらに低減していくことは、並大抵のことではないというのが我々の認識です。まさに100年に一度の大変革。これらの課題を単独で対応することは非常に難しく、業界の枠を超えた取り組みが必要です」(ダイハツ・奥平総一郎社長)
以前から両社のトップは、お客様のために一緒にできることはないかと議論を重ねてきたところに、トヨタの豊田章男社長から商用車5社(トヨタ、いすゞ、日野、スズキ、ダイハツ)での協業の話がもたらされたという。
軽商用車の分野で、スズキ、ダイハツともに、もはや単独でのCASE対応が難しいとのことで、気になるのは今後の軽商用車の動きである。ホンダがアクティトラックの生産を終了した現在、軽トラック(スズキ キャリイ/ダイハツ ハイゼットトラック)と軽キャブオーバーバン(スズキ エブリイ/ダイハツ ハイゼットカーゴ)は両社しか生産していない。両社が果たしてどこまで手を取り合うのかが焦点である。
究極の合理化はメーカーを超えたモデルの集約だが、ライバル関係にある両社とって現段階では考えにくい選択肢であろう。
特に電動化については、鈴木俊宏社長は「バッテリーの量を減らしながら、どうやって走らせることができるか」が重要であると記者会見で述べている。軽自動車は今まで「小さく、軽く、安く」作ってきた。ダイハツでは「1㎜、1グラム、1円」にこだわり、スズキは「小・少・軽・短・美」をものづくりの根幹としている。電動化ではEV(電気自動車)の路線もあり、三菱自動車が「ミニキャブミーブ」を21年3月まで一般販売(一部大口ユーザー向けには継続生産中)してきたが、軽商用車では、価格を抑えてクルマを軽くするためには、EV化よりもハイブリッド車とするのがより現実的な路線と思われる。その駆動用バッテリーの量を減らすのがポイントであるが、トヨタのCASE技術を活用して最適な解が得られるのかが鍵になる。
かつて、2005年8月にダイハツは軽商用車初のハイブリッド車「ハイゼットカーゴ ハイブリッド」を発売した。エンジンとATの間に薄型のモーターを組み込んだ1モーター方式のハイブリッド車(ニッケル水素電池)で、価格は221万5500円(税込み)だった。数百台の生産にとどまり、2010年で販売が打ち切られている。カーボンニュートラルといった面で、軽商用車もいよいよ電動化の必要に迫られているが、今回は果たして成功するのだろうか?
〈文=ドライバーWeb編集部〉