しかし21世紀ともなると、もはやこのサボが実際に使われる場も極めて少なくなくなり、即売会での出物も限られ、オークションなどでの取引価格も高騰するなど、もはや集めることなどままならぬ、幻のアイテムになりつつある。
そんな貴重なサボの数々が、10分の1サイズの「模型」となってよみがえった。それが、トミーテックから発売されている「サボ・コレクション」だ。2008年12月に第1弾が発売され、ファンの間でじわじわと浸透、3月に発売された第2弾はメーカー在庫切れを起こす思わぬヒットになった。
そしてこの6月、満を持してリリースされた第3弾は、「吊り下げ式」のサボ。車両側面中央の窓下に掲げる、昭和30年代の旧型客車などで使われていたタイプだ。かなり年配の方や濃いファンでないと実物を知らない品だが、トミーテックによると「当時を知らない30代のファンからも要望が多かった」そうだ。
サボコレクションの魅力は、細部にわたるホンモノ感だ。まず、ステンレスでできているため持ってみるとわりと重い。そして、時代、地域ごとに異なる独特な字体、プレートの色、板の角に書かれた○に「ウ」(海側に掲げよという注意喚起表示)などの細かい表現に、金具を引っかけるために開いている穴の形状まで「ミリ以下の単位」で板によって変えてあるこだわりよう。
サボにはこのような車両の側面に掲げるものだけでなく、正面に表示する「前サボ」というタイプもあり、実際どれだけの種類があったのかはファンの間でも謎とされている。それだけに、今後どんな展開になるか大いに楽しみなシリーズではあるが、「実物の入手が次第に難しくなっており、どこまで展開できるかわからない」と、こだわりゆえの問題も抱えている。一方でこのサボが実際に使われている現場を再現するような仕掛けはできないかと模索中だという。
ちなみに、気になるのは写真の、サボを掲げているお姉さんだが、お名前は「佐保(さぼ)さん」。こちらのフィギュアも9月に発売の予定だ。
(足立謙二/studio-woofoo)