北朝鮮で生産されている「大同江(テドンガン)ビール」、なぜか韓国でも飲むことができるのをご存知だろうか。
大同江ビールを扱うバーのひとつである「ROOTS TIME」(ソウル市麻浦区)を訪れた。
筆者も実際に飲んでみたのだが、予想に反してフルーティーで、勝手に想像していた味よりも悪くないんじゃないの、という印象を受けた。
もちろん韓国政府による食品衛生法と酒税法をクリアしており、韓国側で作成されたラベルを見ると「原産地:北韓(=北朝鮮)」としっかり書かれている。また原材料の欄には「精製水、大麦麦芽、白米、ホップ」とあり、白米に個性的な味の秘密があるのだろうと思わせる。
気になるのはラベルに書かれた謎の数字の数々だ。ラベル中心の「丸2」はセカンドエディションということだろうか。左上の白文字「11°」は一瞬アルコール度数かと思ったが、裏のラベルには「5.5%」と書かれているので却下。左下の聖火の上に書かれた「22」も、想像を掻き立ててやまない。これらの数字にはいったいどんなメッセージが込められているのだろう。
マスターの話によれば、「珍しいから」という理由で、大同江ビールに挑戦する人は外国人・韓国人問わず多く、中にはテイクアウトまでするお客さんもいるとか。「あっさりしたヒューガルデンみたい」と賞賛しリピーターになる人もいれば、口に合わないと酷評する人も。
なお、他ビールの規格に比べ瓶が大きく、冷蔵庫に入れにくいことが、マスターの悩みの種だそう。
いったいこのビールはどのような経路で韓国に届けられるのか。ラベルに表記されている輸入業者に質問すると、詳しいルートは教えてもらえなかったが、基本的に中国などの第三国を通さず、直接取り引きしている模様。北朝鮮領を見下ろす位置にいくつか立っている「統一展望台」の、お土産コーナーで売られている北朝鮮産のビールや焼酎なども、同社が扱っているという。
大同江ビールの反応について質問すると、それほど広く飲まれてはいないですよ、とのことだった。
昨年11月の延坪島砲撃事件以来、両国の間に緊張感が深まっているが、前述のバーでは事件以降も大同江ビールを取り寄せることができたという(ただし製造年月日は事件前のもの)。電話取材に答えてくれた輸入業者は、今後も販売が続けられるかは、全く分からないと話す。
大同江ビールが今後、幻のビールになる可能性はゼロではない。もちろんビールより深刻な問題はたくさんあるが、韓国・北朝鮮の関係を知るひとつのバラメータとして、今後も大同江ビールの行方に注目したいと思う。
(清水2000)
大同江ビールを扱うバーのひとつである「ROOTS TIME」(ソウル市麻浦区)を訪れた。
同店では、現地でもまだマニアックな存在であるこのビールを、数カ月前から販売している。
筆者も実際に飲んでみたのだが、予想に反してフルーティーで、勝手に想像していた味よりも悪くないんじゃないの、という印象を受けた。
もちろん韓国政府による食品衛生法と酒税法をクリアしており、韓国側で作成されたラベルを見ると「原産地:北韓(=北朝鮮)」としっかり書かれている。また原材料の欄には「精製水、大麦麦芽、白米、ホップ」とあり、白米に個性的な味の秘密があるのだろうと思わせる。
気になるのはラベルに書かれた謎の数字の数々だ。ラベル中心の「丸2」はセカンドエディションということだろうか。左上の白文字「11°」は一瞬アルコール度数かと思ったが、裏のラベルには「5.5%」と書かれているので却下。左下の聖火の上に書かれた「22」も、想像を掻き立ててやまない。これらの数字にはいったいどんなメッセージが込められているのだろう。
マスターの話によれば、「珍しいから」という理由で、大同江ビールに挑戦する人は外国人・韓国人問わず多く、中にはテイクアウトまでするお客さんもいるとか。「あっさりしたヒューガルデンみたい」と賞賛しリピーターになる人もいれば、口に合わないと酷評する人も。
なお、他ビールの規格に比べ瓶が大きく、冷蔵庫に入れにくいことが、マスターの悩みの種だそう。
輸入業者に発注すると、そのごつい瓶ビールが、小さな検印だけ押された無地のダンボールに入って届けられるという。
いったいこのビールはどのような経路で韓国に届けられるのか。ラベルに表記されている輸入業者に質問すると、詳しいルートは教えてもらえなかったが、基本的に中国などの第三国を通さず、直接取り引きしている模様。北朝鮮領を見下ろす位置にいくつか立っている「統一展望台」の、お土産コーナーで売られている北朝鮮産のビールや焼酎なども、同社が扱っているという。
大同江ビールの反応について質問すると、それほど広く飲まれてはいないですよ、とのことだった。
昨年11月の延坪島砲撃事件以来、両国の間に緊張感が深まっているが、前述のバーでは事件以降も大同江ビールを取り寄せることができたという(ただし製造年月日は事件前のもの)。電話取材に答えてくれた輸入業者は、今後も販売が続けられるかは、全く分からないと話す。
大同江ビールが今後、幻のビールになる可能性はゼロではない。もちろんビールより深刻な問題はたくさんあるが、韓国・北朝鮮の関係を知るひとつのバラメータとして、今後も大同江ビールの行方に注目したいと思う。
(清水2000)
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