今の恋愛は、携帯番号の交換からはじまるのが常識。しかし、90年代頃は本人の声で留守電のメッセージを吹き込むことが多く、内田有紀主演のTBSドラマ『キャンパスノート』の主題歌には、「繰り返す留守電のメッセージ、あなたの声が涙を誘うの」なんて歌詞もありましたっけ。
待ち合わせ場所を間違えていて来ない恋人をえんえん待ち続けたり、ただ相手の声が聞きたいがためにいないとわかっている番号に電話したり……。いつでもどこでも相手と連絡がとれるようになった今となっては、「こんな恋がしたい!」と憧れるシチュエーションも変わりつつあるのだろうか。
と、そんなことをつらつら考えてしまったのは、メディアファクトリー新書の『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか』を読んだせいである。表題にもなったカツ丼をはじめ、「恋は最悪な出会いからはじまる」、「岬の突端で長々と過去を語る犯人」「新任教師は初出勤に遅刻」などなど、テレビドラマの典型的なシーンを挙げ、その成り立ちと背景を検証しつつ日本人の特徴や文化を探ってみる、という趣旨の本書。中でも、個人的に最も印象に残ったのが、最終章「携帯電話があっても男女の心はすれ違う」である。
本書によると、携帯電話が普及しはじめたのは96年以降。『男女七人夏物語』(86年)、『東京ラブストーリー』(91年)などの一世を風靡したトレンディドラマにもまだ、携帯は存在していなかった。
93年には『ポケベルが鳴らなくて』なる新ツールをテーマにしたドラマが登場、そして、00年にはネットの知識や情報を盛り込んだ『池袋ウエストゲートパーク』が熱狂的フォロワーを生み、05年には『電車男』が平均21%の高視聴率を収め、昨年にはついに『素直になれなくて』というツィッタードラマまで登場……という流れを追いつつ、それらのツールがドラマの中で登場人物たちの「心の距離感」をどのように表していたのかを検証。
しかし、意外やそこには「一連のドラマを振り返ると、登場人物のコミュニケーションはかえって、日本人の内向的な姿を浮き彫りにしてきたようだ」という面もあるという。確かに、コミュニケーションの技術がどんなに進化したところで、男女の心の距離までもがそう簡単に縮まるわけではない……というのが不変の真理なのかも!?
版元の担当編集者さんによると、「本書では1940年~現代まで100タイトルを超えるドラマに触れていますが、普遍性があり、別の世代と共有できるのも「ベタ」の醍醐味だと思います。『目次を見ているだけで思わず、あるある!と笑ってしまった』、また、『制作者・視聴者たちがドラマに投影した理想像から、その時代の雰囲気や男女の考え方が見えてきた』などなど、多くの反響をいただいております」とのこと。
とそんなわけで、約半世紀にもおよぶテレビドラマの歴史の中で私たちの心をふるわせた「ベタなシーン」がこれでもかというほどたくさん紹介されている本書。
(まめこ)
待ち合わせ場所を間違えていて来ない恋人をえんえん待ち続けたり、ただ相手の声が聞きたいがためにいないとわかっている番号に電話したり……。いつでもどこでも相手と連絡がとれるようになった今となっては、「こんな恋がしたい!」と憧れるシチュエーションも変わりつつあるのだろうか。
と、そんなことをつらつら考えてしまったのは、メディアファクトリー新書の『なぜ取り調べにはカツ丼が出るのか』を読んだせいである。表題にもなったカツ丼をはじめ、「恋は最悪な出会いからはじまる」、「岬の突端で長々と過去を語る犯人」「新任教師は初出勤に遅刻」などなど、テレビドラマの典型的なシーンを挙げ、その成り立ちと背景を検証しつつ日本人の特徴や文化を探ってみる、という趣旨の本書。中でも、個人的に最も印象に残ったのが、最終章「携帯電話があっても男女の心はすれ違う」である。
本書によると、携帯電話が普及しはじめたのは96年以降。『男女七人夏物語』(86年)、『東京ラブストーリー』(91年)などの一世を風靡したトレンディドラマにもまだ、携帯は存在していなかった。
93年には『ポケベルが鳴らなくて』なる新ツールをテーマにしたドラマが登場、そして、00年にはネットの知識や情報を盛り込んだ『池袋ウエストゲートパーク』が熱狂的フォロワーを生み、05年には『電車男』が平均21%の高視聴率を収め、昨年にはついに『素直になれなくて』というツィッタードラマまで登場……という流れを追いつつ、それらのツールがドラマの中で登場人物たちの「心の距離感」をどのように表していたのかを検証。
しかし、意外やそこには「一連のドラマを振り返ると、登場人物のコミュニケーションはかえって、日本人の内向的な姿を浮き彫りにしてきたようだ」という面もあるという。確かに、コミュニケーションの技術がどんなに進化したところで、男女の心の距離までもがそう簡単に縮まるわけではない……というのが不変の真理なのかも!?
版元の担当編集者さんによると、「本書では1940年~現代まで100タイトルを超えるドラマに触れていますが、普遍性があり、別の世代と共有できるのも「ベタ」の醍醐味だと思います。『目次を見ているだけで思わず、あるある!と笑ってしまった』、また、『制作者・視聴者たちがドラマに投影した理想像から、その時代の雰囲気や男女の考え方が見えてきた』などなど、多くの反響をいただいております」とのこと。
とそんなわけで、約半世紀にもおよぶテレビドラマの歴史の中で私たちの心をふるわせた「ベタなシーン」がこれでもかというほどたくさん紹介されている本書。
好きだったあのドラマのあのシーンを振り返りながら、テレビドラマが自分の恋愛観や人生観に与えた影響など分析してみてはいかがでしょう?
(まめこ)
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