そして、これは今だからかぶりたい。「MicroWorks」の海山俊亮さんと、「ノックの帽子屋」の横山智和さんが共同製作した『fanhat(ファンハット)』は、麦わら帽子。
これを上から見てみてほしい。何かに見えないか? 何かに見える。うちわに見える。この麦わら帽子は、うちわになることを想定して作られているそうなのだ。
形はアシンメトリー。優しく扇げば、ちょうど風が顔にくるように角度も工夫されている。
きっかけは、誰もが身に覚えのある経験から。ある日、帽子をかぶっている人が「暑いな」と、その帽子でパタパタ扇ぐ様子を見た海山さん。その時、不意にこの帽子のイメージが脳裏に浮かんだ。
ただ、ちょっと待っていただきたい。そんなにむやみに扇がないでほしいのだ。まず、持つ時は、つばの部分を両手で持つ。片手でヒョイっと持って、バサバサ扇ぐのではない。それは、ご法度。
そして「暑いな」と思った時に、はじめてパタパタ扇ぐ。手持ち無沙汰だからとりあえず扇ぐのではなく、必要だと思った時こそが出番。
なぜなら、この帽子は繊細な素材を使っているから。この『fanhat』は「シゾール」というふわっふわの柔らかい麻を編んで作り、それを糊でキープした帽子。なので、扇ぎ過ぎると型崩れしてしまう。
そして、もう一つ。
これも、シゾールの編み目を整えるようにしながら、型に合わせて成形した。要するに手作業による工程で形を作り上げており、それら全ての要素を含めて工場で大量生産できる代物ではない。プレスで一気に仕上げる方法では難しい。そういう意味でも、繊細な帽子なのだ。
……というわけで、うちわ的な使い方は“伝家の宝刀”レベルに考えていただきたい『fankat』は、すでに6月からオンラインショップの「密買東京」で販売されている。価格は18,900円(税込み)。
ただ、今までもうしわけない! 色々気難しいことを書いてきたけど、何も「扇ぐな」と言っているわけではないんです。「暑いな……」と思ったら、是非ともうちわとして活用してほしいのが、紛れもない本音。
だって、これは“うちわになる麦わら帽子”なのだから。その時が来たら、使わなきゃ損です。
(寺西ジャジューカ)