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●プレスコ手法
――どういう仕組みで制作されているのでしょうか?

石舘:僕が脚本を書いて声優さんたちに演じていただき、また僕が編集します。それを表情製作班に投げて顔だけ2Dで作ってもらい、そうたくんが独自の映像世界を作り、完成した映像に音効さんが音を入れる、という流れです。
一番一般的なアニメと異なるのは、アドリブ性を重視したプレスコ収録であるということと、僕とそうたくんの仕事量が異常に多いということですね(笑)

――全編プレスコなんですか?

石舘:そうです。「アフレ湖」の声を当てる映像を除いて。「ティータイム」と「メンタルとタイムのルーム」は会話と展開にお笑いの“間”を、「アフレ湖」はアドリブ性やリアル感を重視した結果、全編プレスコ収録になりました。

――そういえば「振り付け・モーションキャプチャーモデル:三森すずこ(声優・ピクピク役)」が凄く気になっているのですがこれは一体なにを……?!

石舘:初対面で企画を提案させていただいた際に、エンディングの概要を見て面白がってくださって「よろしければ私、踊りましょうか?」と自ら提案してくれました。こんなにありがたい話は無いということで、ご協力いただきました。

――面白いですねえ。
「アフレ湖」なんて声優さんそのものですものね。

菅原:「生人間が、生の反応をする、モーションキャプチャーギャグCG番組がやりたい」と福原さんと相談していたんです。話し合った結果「萌えアニメの声優さんが、超味があって面白い事になっているので、声優さんで生アドリブ萌えアニメやっちゃおう!」と話がまとまりました。「女の子が話す日常の話」は普通は頑張って作品の中で表現しようと試みるのですが、リアル感でいったら生アドリブこそ本当のリアルなので現実トレスという(笑)。ズルイですけど、それが究極だと思いました。

●萌えとの仁義なき戦い

――今まで菅原さんのCGはシュールギャグが多かったと思うのですが、なぜ萌え物になったのでしょうか?

菅原:Kinectで初音ミクのMMD(「MikuMikuDance」)を使うのにどっぷりのタイミングでしたし、ぼくも以前からぜひトライしたいと思ってました。
2等身キャラは「トニオちゃん」とか作っていたのですが、男の子キャラなのに可愛いと言ってもらえる事が多く「これが「ねんどろいど」のような女の子のキャラになったらそれこそ攻撃力高いんじゃん!」と密かに思っていました。福原さんや石舘さんからちょうど「ねんどろいど」っぽい造形がいいっていうのがあったので「それこそドンピシャじゃん!」と(笑)

――あっ、確かにgdgd妖精sはねんどろいどっぽいですね。トニオちゃんも。

菅原:美少女CGはリアルにするほど「不気味の谷」がすぐ顔を出すので。8頭身のCGアニメだとハードルがあがって可愛く描くのが難しそうでしたけど、やっぱり2等身デフォルメ、という点も功を奏してる気がします。

――ロボット同様、美少女CGがぶつかる究極の問題の一つですね。


菅原:CG美少女はリアルにしようとして気持ち悪くなっちゃうことが多いのに、「アイマス」や初音ミクのような2次元キャラは美少女CGとして成功している。じゃあデフォルメすればするほど受け入れられるのかな? と、リアルから二次元的なCGにして、さらにプチ化しました。デフォルメのデフォルメなんで、しょぼいCGでも拒絶反応が少なかったかもしれません。ファミコン初期のドットキャラは「現実そのもの」ではなく「現実のリアルなものを想像させる装置」になっています。「gdgd」はそういう「記号装置」で行こうと意見が一致しました。

石舘:ポジティブな要素での化学反応、組み合わせることで「新しい!面白い!」と感じてもらえる自信はありました。
しかしネガティブな要素「ここが気に食わないから見たくない」という部分をどれだけ排除できるか、という作業にすごく頭を使いました。

――ネガティブな部分、ですか?

石舘:「キャラ作画」なんです。普通はアニメファンは萌え画じゃないと受け入れないでしょうし、それ以外の層の人たちはアニメファンに迎合しているタッチの画だと引いてしまうでしょうし。そこで辿り着いたのが「ローポリのディフォルメ萌えキャラ」でした。マスコット的な可愛さを踏襲しつつ、アニメファンもいつの間にか受け入れられる作画、まさに「ねんどろいど」なんじゃないか、と。

――あ、マスコットキャラ、といわれるとぬいぐるみみたいな感じですね。


石舘:僕はドット画が好きでして。あんなドット画がカッコいいことを言ったり、人間らしいことをしたりするところに感動したんですよね。『サナギさん』があのユルい絵でロジカルなギャグをやるから心に刺さるのもそうだし、なお言えば、カップ焼きそばがチープな味だから美味しいのと同じです。カップ焼きそばが生麺とかになってリアルに近づいても、そこは本物と比べたらどうしても劣って感じてしまうので損だなぁ、と。

菅原:本当は不安で不安で、何回も萌アニメみたいな高級な映像は絶対おれには無理!逃げてーっ!!消えなくなりてーっ!!って何回も思ってました(笑)

――高級!

菅原:おそるおそる色々なアニメを見て猛勉強を開始したんです。よく見ると「身体が止まってて、口と目しか動いてない!」という瞬間が何度もあり、これならいけるかも……と。
3Dのモーフィングで顔を制御するととてつもない作業になるのですが、全部アフターエフェクツなどの動画に顔をまかせちゃえばいいじゃん! とある日閃きました。「目と口のパーツをひたすらフォトショップで何種類もパターンで作って3Dの顔に動画テクスチャーで張り替えていけばいけるんじゃないか実験」が始まりました。

――(アニメ本編を見ながら)あっ、本当だ!

菅原:実際、怒り笑いなど、目、口、バラバラに何種類も作って組み合わせてトライしていったら「お!なんかアニメっぽい!!」というものが出来てきました。あと本当は3Dはカメラワーク動かしてナンボなんですが、なるべく動かさず、カメラ固定でアニメっぽさを追っかけよう!とか試行錯誤の連発でした。

――ニコニコでもカメラワークは話題になっていましたね。しかし顔だけアニメとは。

石舘:「gdgd妖精s」の3人は顔だけ2Dアニメーションなんですよね。表情も3Dだったらアニメファンに受け入れられるキャラにはならなかったでしょうし、一般の人たちにも愛着を持ってもらえるキャラにはならなかったと思います。そうたくんに特許を与えたいくらいの大発明です(笑)

●声優さんの面白さ
――ラジオ番組には触れられていましたか?

石舘:僕は現在、文化放送で「イカ娘」のラジオで構成作家をやらせていただいています。今年の7月、gdgdの台本を書く直前にアニメ店長とイカ娘のコラボDJCDの構成もやらせていただきました。ラジオやドラマCD台本のノウハウ、声優さんの「キャラと素の間」という独特な面白さが「アフレ湖」に生かされていますね。これに画を付けたら、しかも同じ作品内で、きちんとキャラを演じた後にアドリブで見せたら、大きな破壊力になるに違いない!という思いはありました。

――破壊力ありましたよ! 三人の個性派声優さんは、どのようなきっかけで起用されたのでしょうか。ぼくはシルシルの水原薫さんファンだったので狂喜乱舞してたんですよ。

福原:アドバイザーの坂本さんに1から教えてもらいながら声優さんにオファーさせて頂き、ご縁があったのが3人です。「若手」「演技が出来る」「+α」の声優さんを求めていました。サンプルボイス、演じられてきたキャラクターなどを鑑みて、キャラ配役をさせて頂き、 演出面は石舘さんに任せました。

――「+α」がキモですね……。

石舘:僕からは、若手でまだあまり他の作品の色がついていない人、型破りな作品を作品を楽しんでやってくれそうな人、だけどコア声優ファンも喜んでくれそうな人、というオーダーをさせていただきました。僕も「らき☆すた」が好きだったので水原さんのお名前が挙がってきたときは嬉しかったです。

――ですよね!!!

石舘:水原さんにはキャラ演技のお願いとして「日下部みさお(「らき☆すた」のキャラ)をギャルにした感じで」というオーダーをさせていただきました。三森さんには「真面目で女の子っぽく、極端な話「ちびまる子」のたまちゃんです」とお願いしました。明坂さんには「表面的には綾波レイや長門の延長上のキャラだけど、さらに一癖ありそうな感じで」とお願いしました。それ以上は細かく言わないので自由に膨らましてやってください、と。3人とも想像を遥かに越える仕事を来てくださったので、とても感謝しています。

――「gdgd妖精s」って、しゃべりかたを真似したくなるアニメだと思います。お気に入りのセリフを教えてください。

石舘:シルシルのイントネーションは全て水原さんにおまかせしている部分ですが、収録中もスタッフ一同、大爆笑です。同じブース内で笑いをこらえている三森さんと明坂さんは辛そうですが(笑)

――声優さん同士でもやっぱりあれは面白いんですね。

石舘:基本的にリハも無く一発撮りなんで(あっ、これもきっと他のアニメとは違う部分ですね!)。僕は「花火が上がった~」「ダイジョブ、ダイジョブ~」が一番好きです。

福原:じゃあ、私はピクピクの「もうその話しはいいんだぁ」(#2ティータイム)でいきます。あれがあったから、#2メンタイでのバンジーで見事に腹黒ピンクへと昇華した。ま、このセリフ真似するシチュが実生活で無いんですけどね。

菅原:特にこれ!といったひとつは決めていなく、毎週変ります。あと、ニコ動で見返したらその瞬間に変わります。音楽を聞いていて、口ずさむのと同じ感覚ですね。シルシルの「それって~じゃね?」、「~じゃなくね」はもう刷り込まれ、日常で喋って出てきます。

――声優さんの声もそうですが、作品の盛り上げ方がバックステージも面白いですね。なにか狙いなどはあるのでしょうか。

福原:バックステージは石舘さん案です。キャラをより知ってもらい、より楽しんでもらい、ちゃっかり宣伝もしちゃったりというアイデアに即賛同しました。如何せん宣伝費などは無きに等しい状態でしたから、こういうアイデアに助けられています。

――HPを見ると、ああgdgdだなーとニヤニヤしちゃうんですよね。

石舘:多重構造の一環ですが、ハードユーザー層には製作陣のミスも含めて楽しんでもらえたら良いかな?と。完全に甘えの産物ですが、スタッフが言うと叩かれるようなことでも、キャラが言えば楽しめるコンテンツになるじゃないですか(笑)

――むしろあの3人が現場を暴露しているみたいで楽しいです(笑)そういえば、「破格の値段」で作ってらっしゃるという話が何度か上がっていますが本当でしょうか?

福原:一般的なTVアニメーションと比較したら、「超低予算」と言われても、事実なので……。否定する気はありませんし、それを胸張って言う気もありません。そもそもgdgdは私も含めスタッフ全員の未知へのチャレンジ企画で、会社も高額な制作費を認めてくれないことは分かっていましたから、結果「超低予算」でやることが、この企画を通す唯一のお約束であったということになりますね。

第三回目に続きます。
(たまごまご)