ぼくギリシア神話大好きなんですよ。すごい俗っぽくて。

いや、こういうと語弊が有りそうですが、出てくる神様たちって妙に人間臭いじゃないですか。めちゃめちゃきばってるのに失敗したり、あっちゃこっちゃに浮気したり、嫉妬でざっくり殺しまくったり。
ゼウスとか非常にえらいはずなのに、妙にフレンドリーな印象が強いです。もちろん神さまなんですけどね。
 
この『ゼウスの種』は、表紙のイメージがまさにぴったりの作品です。この表紙見てなんかムズムズっときたら買ってしまっていい。

ギリシア神話の人物達が今の世界で生きている。言うなれば、『聖☆おにいさん』のギリシア神話版だと思ってもらってもいいんですが、あちらはジーザスとブッダという非常に高貴な神さまで、常人離れしているのが面白いわけですよ。
こちらは、ギリシア神話の中にあるイメージ通りの俗っぽさがそのまんま出ているのが面白いんです。
先に言っちゃえば、シモネタ解禁ってことですよ。
 
時は21世紀現代。国際化の波がギリシャ神話の英雄たちにも押し寄せ、近年は地元の大学に進学。
将来のために勉学に励んでいます。やっぱね、強さとかよりも今は資格とか学力ですよね。
そして、留学生として世界の大学へと羽ばたいたギリシャ神話の英雄たちを描いた話なんですが、主人公はケンタウロス。
ずるいですよね。だって下半身馬ってだけでギャグとして成立しちゃうもん。いや、ケンタウロスってすごいんですよ。
賢者が多くて人格的に紳士なケンタウロス多いんですよ本当は、ちょっぴり酒乱で好色なだけで。
……この「酒乱で好色」ってのが21世紀的にはアウトですね。
 
日本に留学してきたのは、ヘラクレス、ケンタウロス、メデューサの三人。説明の必要がないくらい日本でもメジャーな3人です。
で、ヘラクレスは普通に人間型ですし、メデューサも蛇モードじゃなければ特に問題無いわけです。
しかし現代社会でケンタウロス……下半身馬……。
普通でいられるわけがない。
序盤は彼の「馬ネタ」でスタートダッシュします。図書室で歩けないケンタウロスさんとか。そうね、図書室では静かにしないとね。
 
でもギャグマンガで、単なる馬ネタだけだったらさすがにぼくも一回読んで終わったと思います。
違うんですよ、このマンガの真髄は最初にも書いたように、ギリシア神話はやけくそに人間臭いってのを全面に押し出して現代と融合させたことです。

たとえば中盤から出てくるゼウス。ゼウスといえばギリシャ神話の全ての神々と人々の父です。
こう書くとかっこいいですね。
でも作中に出てくる、ギリシア神話キャラが集う喫茶店で働く一般高校生の麻里子ちゃんは冷静にこう言います。
「みんなの父ってことは、かなりのヤリチンなんですね」
ゼウスはこう答えます。
「だっ……誰がヤリチンだ!! 私はギリシャのために腰を振っただけだ!!……まぁ確かに私にはミジンコのごとく多くの子供がいる。
地元では「花咲かじいさん」ならぬ「種まきじいさん」と呼ばれているほどだ」
ああ、最低ですね。……あれ、違う、神さまだから最高ですか?
ずっとこんなテンションです。だよなー、事実だよなー、種まきじいさんなー。

ヒロインの麻里ちゃんがわりと清楚で真面目なわりに天然で、シモネタが多いのも好感持てます。
ケンタウロスたちは大学に通っているので、当然大学の話もいっぱい出てくるのですが、サークル選びの際に麻里子ちゃんが「サークルによってはヤリまくれるから迷いますよねー」と言っちゃうのは、僕的に好感度高いです。可憐な女の子のシモネタって萌えない?
割りとシモネタが多い割に、好色だったと言われるケンタウロス自体は紳士なのもユニークです。
あ、違う。
ムッツリスケベなのがユニークです。
テニスサークルの女の子にしがみつかれておっぱいむにゅってされただけで一日中興奮していたり、ケータイの着信音が牝馬だったり、……表に出さないだけで十分好色ですね。
 
結構めちゃくちゃだったり下品だったりするネタが多いんですが、ギリシア神話的には「だいたいあってる」のが面白い本作。その他にも二巻以降では森ガールのアルテミス、チャラ男のイカロスなどが登場するそうで、これは楽しみです。
はたしてケンタウロスの麻里子ちゃんへの恋は実るのか、は個人的にはどうでもいいのでもっと下品にやっちゃってください。
さて、ここで改めてタイトルを見ましょう。
「ゼウスの種」
あっ、種って、そういう……わぁ、イカくさい……。
(たまごまご)