カレーの魅力に惹かれて、年間100店舗以上でカレーを食べている強者の女性がいる。名前は手条萌さん。
美味しいカレーを求めて、日々街を歩いているという手条さんに、おすすめのカレー屋さんを聞いてみた。さらに、話を伺っていくうちに、手条さん自身に関する意外な事実も発覚!果たしてその事実とは??

――早速ですが、お腹を空かせている読者の皆さんのために、手条さんおすすめのカレー屋さんを教えてください。

●チーフのコックさんの師匠は「美味しんぼ」にも登場 「ジャイヒンド」(秋葉原)

「非常に有名なお店で、世間的にも評価が高いです。チーフのコックさんの師匠は『美味しんぼ』(小学館)の24巻の117ページに出てくる有名人です。ホテルで修行されていたこともあるらしいですよ。お店に行く前は『こんなに高く評価されてるなんて、本当にそこまで美味しいんだろうか』と半信半疑だったけど、実際に行ってみたら『参りました』っていう感じでしたね(笑)。しょうがの風味の効いたルーが美味しくて、高級感があふれるのにこんなに手軽に味わえるなんて、日本に生まれて良かったと思わせる味です。有名店だから、美味しくて当然かと思って行きましたが、裏切りませんでしたね」

●白身魚の美味しいカレー屋さん 「エベレストキッチン」(横浜市 天王町)

「商店街にある魚屋さんの白身魚を使い、上にナッツが乗っているフィッシュカレーがおすすめです。ナンも非常に大きくてサクサクしています」

ちなみに、横浜の相鉄線沿いは美味しいカレー屋さんが多いそうだが、世間的にはあまり紹介されていないお店が多く、穴場となっているそうだ。

●サイドメニューも充実 「maya」(高田馬場)

「濃厚で非常にコクのある、味わい深いカレーが特徴的です。ナンもさることながら、ここはカレーにまつわるサイドメニューが充実していて、特に『パパド』という、インド風のおせんべいがおすすめ。ラッシーを使ったお酒もあって、色々な味が楽しめるお店です」

●カレーが苦手な人も絶賛 「チャントーヤ ココナッツカリー」(神保町)

「カレー嫌いの友達が『唯一食べられるカレー』と言っているのを聞いて、『それってどんな店なんだろう?』と思いながら行ってみたら、ココナッツミルクの味が効いていて、すごく美味しかったです!具も新鮮で、外食店にありがちなスカスカな肉も使ってません。
値段も680円から930円なのでコストパフォーマンスも良いです」

「ここまで紹介されたら、もはや食べない訳にはいかない!」というわけで、「チャントーヤ ココナッツカリー」に移動して、手条さんおすすめのカレーを堪能しながら、お話の続きを聞かせていただくことに。常にカレー屋さんを探し求めている手条さんが、どんな「カレー生活」をしているかが気になるところなので、手条さん自身に関することを、根掘り葉掘り聞いてみた。

――わざわざ聞くまでもなく、手条さんは子どもの頃からカレーが好きだったんですよね?
「実は、カレーは嫌いだったんです(苦笑)。カレーって、母親が子どもに作るとか、彼女が彼氏に作るとか、『愛情たっぷりで家庭的』な感じがして、それが嫌だったんです(苦笑)。他にも、私が勤務している神保町界隈は、本屋さんとカレー屋さんが多い街で、『インテリはカレーが好き』っていうイメージがあって、それも好きになれなかった一つの理由でして…」

――おお!カレーが嫌いだったとは、まさかの事実!美味しいカレーの話から、急にスパイシーな話に変わりましたけど、そんな手条さんがカレー好きになったきっかけは?
「私の好きなイラストレーターさんが、『桜新町の“サウェーラ”というお店が美味しかった』と言っていて、おまけに『宇宙一、美味しかった』とか『スプーンを落としそうになった』とか言ってたんです。『そんなことはないハズ』と思いつつも行ってみたら、本当に美味しくて、『カレーって、本当は美味しいんだ!』と思って、その瞬間に“世界”が変わったんです。この時の衝撃が、たまらなく気持ちよくて、たくさんのお店をまわるようになりました」

――普段はどのくらいの頻度でカレーを?
「週に5食は食べますね。本当は毎日1食は食べたいんですけど、食べられない日もあって」

勤務先が、カレー店が多いことで有名な神保町界隈なのだが、その付近のお店のカレーはほとんど食べ尽くしてしまったという。そこで、昼はヨーグルトなどで軽くすませておいて、仕事が終わったら千葉などのカレー屋さんに遠出をすることもあるそうだ。カレーは家で作ることもあるが、その場合も、一日かけてスパイスから作ることもあるという。

――常にカレーのことばかり考えているわけですね。
「私、街を歩いていても、カレー屋さんを見つけるのが、他の人よりもうまいみたいです。
普通に歩いていて、私の好きなにおいを感じることがあって、『このあたりにカレー屋さんがありそうな気がする』と思いながら歩いていくと、300m先に発見することがあります(笑)」

――ズバリ、ものすごく美味しいお店は何店に1店くらいの割合ですか?
「20店につき1店くらいですね。既に有名なお店もありますが、全く知られていないお店もあるので、もったいないです」

――美味しいカレー屋さんの傾向がありますか?
「私は『カレー辺境説』というのを唱えていて、田舎(郊外)には美味しい店が多いです。先ほどもご紹介した横浜の『エベレストキッチン』は、商店街にある魚屋さんの魚を使っているというように、地域のつながりがあるお店に良い店が多いです。あとは、『餅は餅屋』という言葉がありますが、カレー屋さんが作るカレーが美味しいです。カフェなどで出されるカレーは、イマイチなことが多いですね」

カレーについて語り始めたら、止まらなくなる手条さん。「そんなに好きなら、カレーの本を作ればいいじゃん」という友人の一言で、カレーに関する本「ガラム政宗」を発行した。年に2回開催されている「文学フリマ」で販売していて、創刊号は完売するほどの盛況ぶり。先日行われた「文学フリマ」では、2号が発売された。

――「ガラム政宗」について教えてください。
「タイトルは適当につけたんですけど(笑)。私が食べたお店の中から約90店分のレビューと、カレー好きな人に食べてもらったお店のレビュー、さらにカレーにまつわるコラムや小説など盛りだくさんです」

ちなみに、手条さんは、女性があまりカレー屋さんに足を運ばないことを嘆いていて、今後も、「ガラム政宗」などを通じて、まだ本当に美味しいカレーに出会っていない人に、おすすめのカレー屋さんを紹介することにしているそうだ。「ガラム政宗」の本を扱ってくれるお店も募集しているとのことなので、カレー屋さんや本屋さんはぜひ。


手条さんのカレートークは止まるところを知らないのだが、カレーを口に入れている間だけ、味を噛みしめるために無言になるところが微笑ましいのであった。
(やきそばかおる)
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