日本人の乳がん発症率は、年々増加傾向にあり、乳がん検診の重要性が叫ばれている。
だが、その一方で、気になるのは、受診者から聞くこんな恐ろしい「感想」だ。


「胸を強く引っ張られてものすごく痛かった」「板みたいに薄く引き伸ばされて、悲鳴あげるほど痛かった」などなど……。さらに、「胸が小さい人は激痛」とか「胸が垂れてるとあまり痛くない」なんて噂も聞く。

これって、結局、診療放射線技師の腕の違いによるもの? そもそもそんなにも胸を押し潰さないといけない理由って? 認定NPO法人乳房健康研究会に聞いたところ、「圧迫」する効果・目的を以下のように説明してくれた。

(1)乳腺組織の重なりをなくし、良性病変、悪性病変の判断等より分かりやすくする
(2)画像のボケを最小限とし乳腺構造等をわかりやすくする
(3)乳房の固定をする事で、患者さんの動きをおさえる
(4)乳房圧迫により厚みが薄くなることで、乳房の被ばくが低減できる。

基本的には、それぞれの人に最適な「圧迫圧」で検査を進めるそう。

また、検査前には、痛みを伴う検査であることと、その必要性を説明し、検査を受ける人と検査担当する人が一緒に頑張るよう呼びかけていると言う。
「痛みは皆さんにありますが、感じ方は個人差だと思われます。なかでもアジアの諸外国女性は痛みにとても弱いようで、圧迫圧もあまりかけられず撮影することが多々あります」
乳房は、乳頭を中心に、ブドウの房様(片方に15から20房位)に乳腺が張り巡っており、検査撮影時にはこの乳腺をブドウの房が重ならないように、また、欠かすことなく引っ張り出さなくてはならない。そのため、この時点でまず誰もが痛みを感じるのだそうだ。

では、胸を伸ばすときの厚みに決まりはあるのだろうか。
「厚さに決まりはありません。日本人女性の乳房撮影時の適正圧迫圧は120Nと決められており、120Nとは約12Kgの重さがかかる圧力ということのようです。
ただし、これも個人差を十分考慮しながら、痛みの我慢できる範囲で適正とし、検査します。我慢できない痛みは、遠慮せず技師に伝えてくだされば、調整しますので、大丈夫です」。「悲鳴をあげるほどの激痛」だったら、それをガマンするのではなく、きちんと伝えれば良いのか……。

ところで、「胸が小さい人のほうが痛い」とか「胸が垂れている人のほうが痛くない」「若い人のほうが痛い」という噂は本当?
「乳房が小さい場合、確かに、乳腺を画像として出すために、乳房を引っ張りだす段階で痛みを感じる場合があると思います。また、圧迫時の痛みの感じ方は様々かと思いますが、圧迫時120Nの力がかかる面のサイズや、乳房の柔らかさ・硬さによって、違いがあるかもしれません」
とはいえ、近年では、撮影装置が備える圧迫版についても改良が進み、痛みを和らげる材質の検討もされているそうだ。

では、マンモグラフィを受けるにあたり、痛みを軽減できる工夫・コツはある?
「マンモグラフィ検査を受ける日時が選べるのであれば、生理後、乳房の柔らかい時期を勧めます。ホルモンバランスによって様々かとは思いますが、乳房の柔らかくなる時期を選んで下さい」
また、撮影を担当する診療放射線技師の多くは、マンモグラフィ検診の精度管理を勉強し、患者への対応を考えているそうなので、疑問や不安は検査前に相談し、安心して検査を受けること、リラックスすることが検査中の痛みを軽減させることにつながるというお話だった。

むやみに恐れたりガマンしたりするのではなく、まずは相談してみることが大切なのかも。
(田幸和歌子)
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