
131話は、こんな話
歩実の発熱から、小さな命を預かることの大変さに直面した希(土屋太鳳)は、仕事をどうすべきか悩む。だが、文(田中裕子)の助言、圭太や塗師屋のスタッフの協力によって、予定通り店を再開することに。
今日の、保坂演出
冒頭、悩む希が、高志(渡辺大知)の歌「涙のふたり」をかぼぞい声で歌っています。それによって、ん? と集中力や興味を喚起させられました。いつも希望を与えてくれていた「涙のふたり」がこんなにも寂しく聴こえ、希の絶望がわかったところで(土屋太鳳の伏し目の表情もグッド)、オープニングへーー。とても洗練された演出でした。
今日の、勝手に名言1
131回は久々の名言回。
まずはこれ。
「夫婦はシーソーやさけ。片っぽや深刻なときや片っぽや笑わせてやるくらいでちょうどいいげ」(一徹/葉山奨之)
一徹、若いのに達観しています。
今日の、勝手に名言2
次はこちら。
「仲間の幸せをちゃ妬んで」(マキ/中川翔子)
一子(清水富美加)の連載コラムの第一回のタイトル「両方選べばツケが来る!?」は希を想定して書いたと解釈したマキ。「妬んで」とまで考えるところが根深い。たとえ、冗談でも。
今日の、勝手に名言3
マキの冗談を受けて、一子が弁解。
「ツキが来る!? って断定じゃのうて、ツキが来る!? ってはてなついとるさけね」
はてなつければ曖昧になって責任逃れできるのですが、例えば、ここエキレビのタイトルでは、曖昧は許されず断定することを望まれます。エキレビに限らずネットのタイトルは、断定のほうがアクセスが上がるらしい(あ、断定してない・・・)と一子に誰か教えてあげてください。
今日の、勝手に名言4
名言合戦はこれからが本番。
「女の人生ちゃ障害物競走みたいやなと思って」(一子)
「仕事に成功すればするほど男には敬遠されるけどね」(マキ)
お茶とお菓子をいただきながら女たちが女の苦労を語る場に、元治(田中泯)が混じっているところが微笑ましかったです。
今日の、勝手に名言5
そして、ハイライト。
「子供を犠牲にしてまでやりたいことやっていいがかね」(希)
「生活のためなら許されて やりてえことのためなら許されんとか 問題はほこじゃねえやろ。大事ながは、子供に自分が親の犠牲になっとると思わせん生き方をちゃすることなんじゃねえけ。ほれをちゃこれから子供にどう伝えていくがかおまえが悩まなならんがはほこだけやわいね」(文)
今日は文さんのこの台詞がすべてといっても過言ではありません。
方言なので文字で追うとちょっとわかり辛いですが、田中裕子の語りで心が充分伝わります。
「まれ」は、ちょっと方言がきつめで言ってることが分かりづらく、それがドラマへの入り込みづらさの要因のひとつかとも思っていました。ところが、半年近く見ていると、だいぶわかるようになってきましたし、とくに今回、その土地に暮らすひとの言葉で、実感で、生活を語るのはとてもいいものだな、と思わされました。
これが狙いであったとしたら、よくぞ長いこと耐えて貫き通したなと讃えたいです。
今日の、勝手に名言6
文がもっていってしまったので、あとから出てくるこれはやや霞んでしまいましたが、圭太の頼もしい台詞です。
「店もおまえの子供やろ。できるなかでできることやって育てていかんか おらちふたりで 子供らちも 店も」
圭太も希も、頭で考えず本能でやりたいことをとりあえずはじめて、あとでなんとかしていくタイプ。
上の世代の犠牲になって未来に希望がもてず、恋も結婚も出産も望まず、仕事にも夢をもたずに公務員などの安定を目指す、そんな若者世代へ違った視座をもたらそうとする「まれ」。
その表現方法がちょっと荒っぽい気もするものの、その不器用さも含めて生きることなのだということを描いているのか!? と一子ふうに、はてなをつけてまだ曖昧にしておきます。
(木俣冬)
エキレビ!にて月~土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから
いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))