X JapanのYOSHIKIといえば気分屋で有名です。御年50歳に達し、今では品行方正なイメージが先行しがちな彼ですが、若き日の破天荒ぶりときたら相当なもの。
「控室のシャワーが熱い」「カレーが辛い」といった些細な理由で激高し、収録や撮影の予定をドタキャンして帰宅するなど、伝説は数知れません。特に顕著なのが遅刻癖。これまで様々な予定に遅れてきては、一切悪びれない態度を取り、周囲を困惑させてきました。
取り巻きのスタッフやX Japanのメンバーならば耐性もついているので、「まぁ、いつものこと」とある程度の遅刻は許容できるのでしょう。しかしこの悪癖をある先輩ミュージシャンの前で披露してしまい、乱闘寸前の騒ぎになったことがあります。

その相手こそ、BOOWYのギタリストとして盟友・氷室京介と数々の名曲を生み出してきた、天才ギタリスト・布袋寅泰だったのです。

奈良・東大寺でのコンサートで事件は起きた


事の経緯はこうです―。1994年6月、奈良の東大寺にて『The Great Music Experience』というイベントが開催されました。これは、日本と世界のミュージシャンが共演し、21世紀への音楽遺産を残していこうという趣旨のもと開催されたコンサートです。
出演アーティストは実に豪華で、ボブ・ディラン、ジョン・ボン・ジョヴィ、ジョニ・ミッチェル、クイーンのドラマーとして活躍したロジャー・テイラーなど、世界的にも名の通った顔ぶれが勢揃い。その中に日本代表としてエントリーされたのが布袋と、YOSHIKI率いるX Japanだったのです。

リハーサルに遅刻したYOSHIKIに布袋寅泰がブチギレ!


リハーサルでのこと。大御所たちが定刻通りにやってきて最終確認を行う中、YOSHIKIは余裕綽々の遅刻登場。その様子を、布袋は苦々しい想いで見ていたに違いありません。
当時28歳のYOSHIKIに対し、布袋は32歳。デビューしたのも売れたのも布袋の方が先です。
にも関わらず、出演メンバーでは最も若い部類に入るYOSHIKIが「ちーす」みたいな感じでやってきて謝罪もしなかったことに、布袋のボルテージは急上昇。コンサート終了後の打ち上げの際、挨拶に来たYOSHIKIに対し、「Xって何なんだよ!?」と凄んで見せたのです。

布袋寅泰が宿泊するホテルの前で、一晩中叫んでいたYOSHIKI


布袋の身長は187センチ。小柄なYOSHIKIからすると、見上げるような大男です。しかも、あのコワモテで至近距離から睨みつけるのだから、その威容たるや凄まじいものだったでしょう。しかし、千葉・館山でヤンキーとして鳴らしたYOSHIKIは、因縁を付けられるや否や闘争本能に火が付いたのか、即座に応戦。ノータイムで布袋に殴り掛かったのです。
慌てて仲裁に入ったスタッフによって、何とかその場は事なきを得たものの、YOSHIKIの怒りは収まりません。そのあと酒に酔った勢いで、布袋が宿泊するホテルの前に直行。「布袋出てこーい!」と、叫んでいたそうです。


こうしたYOSHIKIの行為は、言うまでもなく社会人としては失格。しかし、反体制の心意気を源流に持ち、常識や規律に縛られないことを是とするロックンロールの姿勢としては、むしろ正統派。先輩ミュージシャンや事務所のお偉方に「Yes」で通すことしかできない今のお利口さんバンドマンは、この古き良きロックンローラーの爪の垢でも煎じて飲んでおけばいいのです。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりYOSHIKI―わたしはあきらめない
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