出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
コンビニや飲食店、雀荘の看板に交じって「お寺」の文字が気になる

都会の真ん中、地下鉄の神保町駅を出て徒歩2分ほどのにぎやかな通り沿いに「みんなのお寺」という気になる看板を発見した。

なぜ、こんなところにお寺が? 「みんなの」ってどういう意味?
「みんなのお寺」を開設している南都十輪院(奈良県)の住職・橋本純信さんにお話を伺ってみた。

「11年前に地元の奈良市の商店街に『みんなのお寺』を初めて開設いたしました。毎月100人前後の来訪があり、多くの人々が喜んでくださっています。3年前に意を決して東京にも同じ施設を開設しました。東京圏は日本の人口の4割が集中していると言われていますので、需要があると判断いたしました」

一体どのような人が、どんな目的で訪れるのだろうか。
「皆さん様々な目的をもって来られますが、やはり人生相談が一番多いです。大学生から年配者まで幅広く、男女はほぼ同数。最近は写経や瞑想に関心のある方の来訪が徐々に増えつつあるようです」
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
入るのに少々勇気がいるエントランス
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
こちらです!


はるばる奈良からやってきたご本尊


狭い階段を登って扉を開けると、ふんわりと線香の香り漂う異空間が広がっていた。
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた

迎えてくれたのは櫻井照道(さくらいしょうどう)僧正。
奈良の十輪院から僧侶が1週間交代で出張して来ているとのこと。
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた

「うちは真言宗なので、全体的に密教テイストです」
そう言われればそんなテイスト!?


奈良からはるばるやってきたご本尊さま


出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
江戸時代から奈良の十輪院にいらしたという大日如来。厨子は「ビルのドアを通るギリギリのサイズ」だとか。

ご本尊は大日如来。「みんなのお寺」東京開設にあたり、奈良からはるばるレンタカーで運ばれてきた。お坊さん方が自ら車を運転し、狭いビルの階段を担ぎ上げたとのこと。確かに、仏像は引越し業者に頼めないだろう……。



静かに瞑想、そしてお経を唱える


「すべてのモノ、すべての人の中には仏がいます」
「生きているのではなく、周りに生かされていると考えれば、気持ちが楽になりますよ」
そんなお坊さんのありがたいお話を伺いながら、自分の黒い心をちょっぴり反省する。

今回は朝の勤行を体験してみた。
まずは5分の瞑想から。正座して膝の上で手を組み、静かに深く息を吸う。
おへその下の丹田(たんでん)に空気が入るのを意識しながらゆっくり呼吸をしていると、5分間がとても長く感じる。

「自分の中の仏を感じてください」
私の内側にそんな尊いものがあるのだろうか……。いや、ここで疑ってはいけない。なんとかイメージを膨らませつつ、櫻井さんと声を合わせてお経を読む。
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた
写経や写仏、瞑想ができるスペース

お経は法事の時に何度か聞いたことがある程度で、自分で唱えるのは初めての体験。
漢字を目で追えばうっすらと意味は想像できるが、内容まできちんと理解することは難しい。それでも櫻井さんと自分自身の声を合わせて聞いているうちに、だんだんと穏やかに気持ちになってくる。

腹式呼吸をしながら一定のリズムで声を出し続けることで、普段は使わない筋肉が動くのかもしれない。10分程度の短い時間でも終わってみると心地よい疲れを感じ、心も体もスッキリした。
「美容に良いからと通う女性もいる」という話もうなずける。


お土産は住職おすすめ、高野山直送の胡麻豆腐


爽やかな気持ちでお勤めを終えた後、お土産を買って帰る。
出勤前に「みんなのお寺」でお経を唱えてみた

住職が食べて「めっちゃうまい!」と太鼓判を押す高野山直送のごまとうふ。少し冷やしていただくと、口の中でするりと溶けるクリーミーな食感、濃厚なゴマの香り……はい、めっちゃうまかったです!

櫻井さんのお話の中で、とても印象に残っていることがある。
すべての人と人とは、網目のように張りめぐらされた「縁」でつながっているそうだ。
今どこかでこれを読んでくれている人とも、目に見えないご縁でつながっている……そう考えるとなんだか不思議で、ちょっと嬉しい気がする。
(宮沢弥栄子)
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