3月1日(木)放送の隣の家族は青く見える(フジテレビ系列)、第7話。(ノベライズ
五十嵐家、川村・杉崎家、小宮山家は、それぞれの家庭のすれ違いを火種に夫婦喧嘩。
広瀬・青木家は同性愛者であることが親に知れてしまう。
「隣の家族は青く見える」7話。部屋でわかる夫婦、家族の変化と成長。カーテン、ベッド、2脚の椅子
イラスト/Morimori no moRi

心に踏み込む深度「部屋」と「ベッド」


ちひろ「亮司は、亮太くんに嫌われたくないんだよ。だから必死に機嫌とってるの。でも、好かれもしないよ、このままじゃ。彼の心の中に入っていってやんなきゃ、いつまで経っても『ほしいものを買ってくれるだけの便利なおじさん』のまんまだよ」
亮司「これは俺と亮太の問題だ! 俺たち家族のことに口出さないでくれ!」

亮太(和田庵)は、亮司(平山浩行)の前妻とのこども。
「こどもはいらない」と言っていたちひろ(高橋メアリージュン)と別れる覚悟で引き取ったが、今は3人で暮らしている。

ちひろがいるリビングとカーテンで仕切られた亮太の部屋を、亮司が行き来する。

亮太の機嫌を取って何でも言うことを聞いている亮司。それをちひろに指摘されると、リビングからカーテンを抜け、亮太の部屋に入る。
亮太の部屋に入ることなく、カーテン越しに苦言を呈し続けるちひろ。亮司が「俺たち家族のことに口出さないでくれ!」と声を荒げると、ちひろは無言でカーテンポールを引き下ろす。

部屋は「心の中」でもある。
ちひろは自分なりに「良識ある大人として、同居中のこどもに最低限の責任を果た」す努力をしている。
それをないがしろにされたことと、情けない亮司の姿にちひろは苛立つ。
カーテンポールを壊したのは、勝手に自分と亮太の殻に閉じこもろうとする亮司の壁を壊したい気持ちの表れだ。

夜になって帰宅した亮司は、ちひろの寝ているベッドを通り過ぎてまた亮太の部屋へ。ベッドにもぐりこむと、亮太に「仲直りしなよ。僕が来たせいで喧嘩とか、困るよ」と言われてしまう。
母親と離婚した理由を聞かれた亮司は、ちひろと結婚することを前妻に伝えたときのエピソードも話した。


亮司「喜んでくれたよ。『今度は大事にしなさいよ』って」
亮太「それがお母さんの遺言なら、守らないとダメじゃん」

亮太に促され、亮司はカーテンを抜けてちひろのいる部屋へ。そして、ちひろが背を向けて横になっているベッドで眠る。
こどもと妻の部屋を行き来しているだけだった亮司は、表面上で勝手に板挟みになっていた。それぞれのベッドに入ったのは、2人の「心の中」に入る第一歩だ。
亮司がベッドに入って来ても、亮太もちひろもまだ背を向けている。
向かい合って、あるいは肩を寄せ合って眠れたときこそが、亮司が本当に2人の心の中に入っていけたときなのだろう。

結婚できない渉と朔の「誓いの言葉」


7話の「部屋」で、もう1つ気になったシーンがあった。
息子が同性愛者だと知らない母親・ふみ(田島令子)に、(眞島秀和)がカミングアウトする場面だ。

青いソファに座るふみ。ローテーブルを間にして90度斜めの床に渉が座る。(北村匠海)は、キッチンの奥でうつむいて話を聞いている。

ふみ「なにがいけなかったのかな。
きっと妊娠中に、私が何かしてしまったのよね」
「お母さん……」

ふみは、「臨月まで無理して教壇に立っていたから? お父さんと喧嘩ばっかりしていたから?」と自分を責める。同性愛者であることを責められることもつらい。だけど、自分のせいで親が自責していることも、きっととてもつらい。
渉は、親へのカミングアウトをかたくなに嫌がっていた。でも、取り乱すことなく淡々と「ゲイは病気じゃない」「普通って何なんだろうね」と語りかけていく。

「自分や自分の好きな人を否定されることが、こんなにも悲しいことだなんて、いまのいままで知らなかったよ。
カミングアウトして良かった」

あなたの言ったことは自分を悲しませた、という告知だ。ふみは無言で家を出ていく。

「カミングアウトして良かった」とアップで映し出された渉の後ろに、オレンジ色の脚の椅子が2脚並んでいる。ブルー系と木目調で統一された部屋で、この家具は以前から目立っていた。
ここでは見えなかったが、椅子のさらに奥には2人にとって婚姻届とも言える「三つの誓い」の紙が貼ってあるはずだ。
渉の背中越しに、並んだ2脚の椅子と「三つの誓い」。この構図には、渉が「朔と自分」の2人を背負ってふみと話していることが感じられる。

結婚式を挙げ、教会で誓いの言葉を言うことはできないかもしれない2人。でも、誓いの言葉と同じだけの責任を背負うことを、渉が決心した。
シーンを締める「焼き芋食べよう」という言葉。それを聞いた朔は少しうつむいていたけれど、2人の日常が続いていくことを渉が信じている。

部屋と心に入ってくる「誰か」


「部屋」に亮太やふみのような「誰か」が入ってくることで、もともと住んでいた家族に変化が起こっている。

舞台であるコーポラティブハウスは、外から見ればどれも白くてきれい。だが内装は、それぞれの意向やライフスタイルによってまったく違う。
家具の配置、インテリアの雰囲気、散らかり具合、照明の明るさ。外から見えないクローズドな世界の作り込みに、各家庭の悩みや状況が反映される。

家族たちが、心に入ってくる何かをどう受け止めているのか。最終回までの残り数話、部屋の変化にも注目して見ていきたい。

次回の予告映像では、奈々(深田恭子)と大器(松山ケンイチ)にこどもができたこと、朔の勉強が好調なこと、ちひろと亮太がゲームの対戦をして笑っていることが明かされている。
喧嘩が多かった7話からの、ハッピーな場面にちょっと安心。第8話は、3月8日(木)よる10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

フジテレビオンデマンド
TVer

隣の家族は青く見える(フジテレビ系列)
脚本:中谷まゆみ
音楽:木村秀彬、堤博明
主題歌:Mr.Children「here comes my love」(TOY’S FACTORY)
不妊治療監修:桜井明弘(医療法人産婦人科クリニックさくら 一般社団法人美人化計画)、石川勇介(株式会社ファミワン)
LGBT監修:森永貴彦( LGBT総合研究所
コーポラティブハウス、建築事務所監修:牛田大介(株式会社タウン・クリエイション)
プロデューサー:中野利幸(CP)
演出:品田俊介、相沢秀幸、高野舞
制作:フジテレビ第一制作室
制作著作:フジテレビ