連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第25週「さらば北村笑店」第145回 3月24日(土)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:鈴木 航
「わろてんか」145話。空襲、疎開、北村笑店解散。お別れのときでも笑って笑って
イラスト/まつもとりえこ

145話はこんな話


昭和20年1月、空襲の被害が大きくなり、てん(葵わかな)は、35余年続いた北村笑店を一旦解散することとする。

北村笑店、解散


土曜日の朝から、空襲で防空壕に避難するというハードな状況を、実際の記録映像も用いて描いた。
土曜日は平日と比べて視聴率が1〜2%ほど落ちるから、心を痛める人の被害も最小限という配慮であろうか。


空襲によって住居が壊れてしまった。
心配した風太(濱田岳)はてんに疎開を提案。トキ(徳永エリ)と飛鳥(花田鼓)も一緒にと。
ただ、風太だけは残ると聞いて、てんも残ると言い張る。
「うちは社長やで 芸人さんや社員を置いて自分だけ残るわけいかへん」
だが、そうするとみんなも残らざるを得なくなると説得されて、熟慮の末、てんは、北村笑店を一旦解散することを発表する。

別れの大喜利


「笑いの灯を守るためや そのためにいまは生きんとアカンのどす」
ざわつく一同に、一時金を渡す、前借り借金を棒引きにする、と安心させるてん。143話のレビューでも書いたが、必ずお金の話はしっかりする。

笑いの仕事を続けたい人は、風太を中心に、天満風鳥亭で活動を続けることになって、
キースとアサリ(大野拓朗、前野朋哉)、リリコとシロー(広瀬アリス、松尾諭)は残り、亀井(内場勝則)や楓(岡本玲)は親戚を頼ったり実家に戻ったりすることに。
長らく苦楽を共にしてきた仲間たちがバラバラになっていく。
そんなときでもアサリが自虐ネタで笑わせる。
笑いを生業にしている者たちだから湿っぽいのが苦手で、笑いの訣別式を行う。
北村笑店の2トップ、キース・アサリとリリコ・シローが大喜利大会で盛り上がる。
お題は「北村のごりょんさん」。

リリコがうまいこと(ごりょんさんとかけて、「月刊北村」の印刷前ととく。その心は「ゲラ」)言って、
シロー「ネタも顔もキレイ」
リリコ「そんなこと ありますわ〜」
と自分たちのネタにもっていき、爆笑をとった。
ここは面白かったが、大人になったてんは、少女時代のゲラ設定があまり生かされてなかったところが惜しい。

最後のあいさつはてん。
「必ず生きて 生き抜いておくれやす」と涙ながらに、でも最後は微笑んで、語った。

あまりゲラには見えなかった成人後のてんではあるが、演じている葵わかなは、昔の銀幕映画(モノクロの頃)のスター女優さんのようだと常々思って見ていた。とりたてて演技をしなくても、顔がなんだか端正で、瞳にちょっと外国人のような雰囲気もあって、その印影が、華やかに少しだけ憂いをつくる。きれいな着物もすっきり着ていて、あくまで凛としている。
おそらく、お年寄りは、昔の映画を思わせるこういう女優さんの顔が好きで、半年楽しんで見ていたと想像する。視聴率が良かったのはそのせいもあると思う。

男をとりあった 笑いの同志


てんが疎開の準備をしているとリリコが来て、
「同じ男はん 好きになって奪い合った仲やもんや」と名残惜しむ。
うちらは「笑いの同志」だと言うリリコ。

笑いというか「藤吉」を通しての同志だろうけれど、藤吉イコール笑いということなのだと思う。
てんをはじめ、北村笑店は、藤吉が亡くなってもなお、常に、藤吉を指針にしてやってきたのだから。
そんな藤吉だが、今週は土曜日なのに出てこなかった。木曜日に出たからか。出演は週に一回と契約が決まっているのだろうか。

いよいよあと1週間!
(木俣冬)
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