なろう=異世界チートではない! 日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」投稿作品の多彩な世界

なろう=異世界チートではない! 日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」投稿作品の多彩な世界
アニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』は10月7日より放送開始 (C)FUNA・亜方逸樹/アース・スター エンターテイメント/のうきん製作委員会

「小説家になろう」は、作品数68万以上、登録者数164万人以上、小説閲覧数月間20億PV以上を誇る日本最大級の小説投稿サイト。10月からは同サイト発の小説を原作としたアニメ『私、能力は平均値でって言ったよね!』と『本好きの下剋上』の放送も開始する。これまでも『転生したらスライムだった件』や『この素晴らしい世界に祝福を!』、『Re:ゼロから始める異世界生活』といった人気作を輩出し、ライトノベル好きの間では、「なろう系」という言葉も生まれた。

「小説家になろう」が誕生したのは、2004年のこと。まだWEB小説という文化が定着していなかった時代から、「小説家になろう」はどのように歩んできたのか――? 「小説家になろう」を運営する株式会社ヒナプロジェクトの取締役・平井幸さんに振り返ってもらった。

取材・文/原田イチボ@HEW

意外と少ない!? 「小説家になろう」スタッフの人数


なろう=異世界チートではない! 日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」投稿作品の多彩な世界
原作小説『私、能力は平均値でって言ったよね!』(著:FUNA、イラスト:亜方逸樹)最新刊はアース・スター エンターテイメントより10月12日発売

――平井さんは、いつから「小説家になろう」に関わっているのでしょうか?

平井:「小説家になろう」が法人化する前の2007年頃です。

――「小説家になろう」が誕生した2004年当時、WEB小説をめぐる環境とはどのようなものだったのでしょうか?

平井:インターネット史的には、ちょうどmixiが出てきたくらいですかね。まだ当時は、WEBで小説を書いたり読んだりするのは、よほど文章が好きな一部の人だけの文化でした。そんな中で、ヒナプロジェクト代表取締役の梅崎祐輔が、自分がWEBでいろいろな小説を読んでみたくて個人サイトとして始めたのが「小説家になろう」です。完全に趣味から始まって、運営を続けるうちに、WEBで作品を発表することがどんどん一般的になっていきました。

――平井さんも含めた梅崎さんの友人グループで「小説家になろう」を動かしていたそうですが、法人化するというのは大きな決断だったと思います。

平井:大学卒業の直後くらいのタイミングで、梅崎個人での運営からグループでの運営に変わり、そこから約2年後に法人化しました。各々働きながら、これもやっていこうという感じで……。
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小説『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』シリーズ(著:香月美夜、イラスト:椎名優)はTOブックスより発売中

――閉鎖するにはもったいない規模だけれど、働きながらサイトを続けるのも大変という一番難しい状況だったのでは……。他企業に売るなどの選択肢はなかったのですか?

平井:たしかに普通の個人サイトよりはお金も入ってくる状況でしたが、人を雇ったりするには全然足りませんでした。ただ、卒業後も梅崎は「小説家になろう」一本でしたし、私はフリーターをやりながら手伝って、もう1人もフリーランスで働いていたので、お互い都合をつけて運営することができていました。

――「これはビジネスとしてイケるんじゃないか」と感じたのは、どのタイミングだったのでしょうか?

平井:法人化してから、依頼される案件が一気に増えました。やはり個人サイトだと、いくら人が集まっていても企業としては手を出しにくいんでしょうね。企業として名前と形を持つことの大きさを強く感じました。

――現在スタッフは何名くらいなのでしょうか?

平井:25名前後ですかね。

――想像よりかなり少ない……!

平井:ですよね(笑)。半分くらいが開発スタッフで、残り半分で運用をしています。

“ダイジェスト化禁止”までの思いとは?


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小説『転生したらスライムだった件』(著:伏瀬、イラスト:みっつばー)は既刊15巻までマイクロマガジン社より発売中(C)伏瀬/みっつばー (C)マイクロマガジン社

――サイトを運営していて、作者側と読者側の希望が一致しない場合もあるかと思います。作者と読者のどちらに向くかというバランスは、どのように決めているのでしょうか?

平井:難しいところなんですが、それは鶏が先か、卵が先かにも近い話なんですよね。読者の方々に喜んでいただいて、読者の方が増えれば、そこに投稿する作者さんにも喜んでいただけますし、その逆のことだって言えます。基本的には半々で、その時々でどちらを重視するかを決めているのが現状です。

――作者側の事情と、読者側の事情が真っ向からぶつかってしまったのが、「ダイジェスト化禁止」問題だったのかなと。2016年6月、書籍化にあたり、「小説家になろう」に掲載している作品をダイジェスト化することを正式に禁止するルールが設けられました。

平井:書籍化が決定した作者さんが「できれば、『小説家になろう』での連載を継続したい。しかし、出版社から全文掲載は望ましくないと言われている」と板挟みになって悩んでいるのを把握して、先方の出版社さんとも長期間話し合ったのですが、なかなかお互いの意見が合わず、あのような結論に達しました。

もともと作品のダイジェスト化は黙認していたのですが、ダイジェスト化された作品がランキングに上がってしまう事態が増えてきて、そうなると読者さんからも「せっかく開いたのにダイジェスト版でがっかりした」という声が増えてきました。こちらとしてはネット上で作品が完結していることは大前提なので、物語の冒頭だけ掲載するとか、書籍化された部分は取り下げるというのは肯定しづらいんですよね……。

――「ネット上で作品が完結する」というのは、サイト運営の上でも意識している部分ですか?

平井:そうですね。ネット上で読み書きが完結するように設計しています。やはり、「これをやるなら、あっちです。あれをやるなら、そっちです」のような使い勝手の悪いサイトには人が集まりません。

――課金サービスを設けていないのも、そのこだわりが理由でしょうか?

平井:課金サービスに関しては少し事情が違いまして、もともと個人サイトだったぶん考える余地がなかったというのが近いです。課金で収益化をしている作品投稿サイトもありますが、実際やるとなると、何にお金を払っていただくかの設計や、課金していただいたユーザーの方をサイトとしてどう評価するかなど、考えるべき点が多いんですよね……。さらに法律の問題も合って、なかなか難しいのが現状です。なので今の収益は、ほぼ広告費ですね。

“なろう系”とは「デメリットにも転びかねない言葉」

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『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』(著:白田)はポプラ社より発売中

――主人公が異世界に転生して、いわゆる“チート展開”を繰り広げる作品が「なろう系」と呼ばれることも多くあります。「なろう系」という言葉の流行は、「小説家になろう」の知名度アップにつながりましたが、運営側としては困る部分もあるのでは?

平井:痛し痒しなんですよね。というのも、「『小説家になろう』といえば~」のようにブランド化されるのは大変ありがたいんですが、他ジャンルで書かれている作者さんの気持ちもありますし、あまりイメージが固定化されるのも困る。「みんなのための小説投稿サイト」を謳う以上、デメリットにも転びかねない言葉として慎重に取り扱っています。なので、実は公式で「なろう系」といった言葉を使ったことはないんですよ。

――異世界転生ファンタジー以外で、「小説家になろう」が強いジャンルはありますか?

平井:ケータイ小説の時代を超えてきているので、実はもともと恋愛ものが強いんです。だから同じ異世界転生でも、主人公の敵役に転生してしまう“悪役令嬢もの”や、恋人から婚約破棄を告げられる運命に対峙する“婚約破棄もの”などの人気も根強いですね。あとは現代世界を舞台にした、男性向けのラブコメチックな作品が増えてきているのも感じます。

――『君の膵臓をたべたい』は実写映画化もされましたし、3億円事件の犯人を自称する作者による『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』も話題を呼びました。これからは、異世界転生ファンタジー以外の「小説家になろう」発作品がヒットを飛ばす例も増えていきそうですね。今後こういうジャンルも増えてほしいという希望はありますか?

平井:このジャンルは手薄だと明かすことになってしまうので、なかなかお答えづらい部分ではありますが(笑)、正直に言えば全部です。歴史だろうが恋愛だろうがミステリーだろうがSFだろうが、次は何が当たるかわかりません。「小説家になろう」は、すべてのジャンルを受け入れているので、自分が最初の1人になるつもりで、恐れずどんなジャンルでも投稿してみてほしいです。

――「小説家になろう」の強みはどこにあると感じていますか?

平井:先行者利益と言ったらそれまでですけど、単純な人の多さですね。読む人と書く人が多く、一足先にブランドを作れたことは強み以外の何物でもありません。ただ端末ごとの執筆機能は他社さんが力を入れていて、うちはまだ弱い部分なので、強化していきたい部分です。あと人の多さは、マッチングの悪さにも繋がってしまうんですよね……。作品が多いぶん、自分にとってドンピシャな作品を見つけきれない事態にもつながります。

――公式WEB雑誌を作ったり、「今日の一冊」のようなページを設けたりして、単なる“作品発表の場”以上のコミュニティにしようとしているのを感じます。

平井:作者さんは当然、自分の作品を読んでほしいと感じています。60万以上の投稿作品をいかに拾い上げていくかが課題ですね。あと、作品を書いた先の書籍化や、公式の拾い上げなどをご提案することで、創作活動のモチベーションにしていただければと考えています。

――最後に、「小説家になろう」の今後の展望を教えてください。

平井:まだアプリも開発できていませんし、作者側と読者側の両方にとって便利な機能をさらに拡充していきたいです。技術の進歩に乗り遅れないようにしつつ、作品発表の場としてずっと続けていきたいですね。

小説家になろう - みんなのための小説投稿サイト


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