「ママも不倫、私も不倫、仕事も不倫……」

2月12日放送『知らなくていいコト』(日本テレビ系)6話で週刊イーストが追ったのは、人気棋士・桜庭洋介(田村健太郎)と女優・吉澤文香(佐津川愛美)の不倫だった。冒頭のセリフは、主人公・真壁ケイト(吉高由里子)が自宅でカップラーメンを食べながらため息交じりに吐いたモノローグ。
一体、どんな生活を送っているのかと笑ってしまった。

ケイトと尾高の不倫は母とにている


前回第5話で、週刊誌記者という自分の仕事に疑問を持ち始めたケイト。その疑問が今回はより強くなっていた。理由は、公私混同。妻帯者である尾高由一郎(柄本佑)への気持ちが高まったケイトは、桜庭と文香の不倫に感情移入してしまった。
「この2人の恋を暴いて、誰が幸せになるんだろう」(ケイト)
吉高由里子「知らなくていいコト」ケイトが自殺を図ったと尾高が誤解した理由。知らなくていいコトは更に
イラスト/まつもとりえこ

「今はまだ不倫じゃない」と自分に言い聞かせながら、ケイトは自分を止められなかった。尾高とラブホテルを出るとき「ラブホに来て何にもしないで帰るの初めて〜」と口にしたり、夜中に1人で尾高の仕事場を訪れたり。
しかも、ワイン片手の訪問だ。あわよくばというか、ヤル気まんまんにさえ見えた。

ケイト 「やっぱり不倫なんだ、私たち」
尾高 「違うよ」

不倫とは認めたくない雰囲気を出しつつ、否定されると少し不服そうな素振りに。尾高から「踏み止まろう」と言われ、涙を堪えるような表情まで見せた。
ケイトは、妻帯者である乃十阿徹(小林薫)と関係を持った母・杏南(秋吉久美子)の「証しが欲しかった」という思いで生まれた子である。血だ。
杏南─乃十阿の不倫とケイト─尾高の不倫はトレースの構図になりつつある。

尾高の妻・みほ(原史奈)は、きっと尾高の不倫に気付いている。ノックせず尾高の仕事場に入り、しれっと自分の母親も連れてきた妻。「毎晩、(帰りが)夜中だもん」と釘を差しに行ったのは、彼女の警戒心の表れだと思う。
尾高家には可愛い赤ちゃんがいて、もうすぐ2人目が生まれそうだ。「家族に不満はないよ」と言うように、尾高は妻子を大事にしている。
でも、決して楽しげじゃなかった。明らかにケイトに対する気持ちのほうが強い。みほが赤いコーヒーメーカーを使ったとき、その姿を意味深に見つめた尾高。彼にとって聖域だったのかもしれない。パソコンでケイトの写真を見返し、微笑む尾高。ベストショット満載の写真を見れば、尾高の愛情がだだ漏れなことは誰にだってわかる。
家へ帰らず、家族よりケイトを優先させてきた尾高。みほからすれば、夫とケイトの進展は「知らなくていいコト」である。

なぜ尾高はケイトが自殺を図ったと誤解したのか


乃十阿による無差別殺人の話がほとんど進んでいない。このドラマの主軸はこっちと捉えているので、少々もどかしく感じてしまう。乃十阿に水をかけられたケイトを見つけ、尾高は言った。

尾高 「びしょ濡れで歩いてるの見たときは、海に入って死のうとしたのかと思って焦ったよ」
ケイト 「へ? 何で私が死ななきゃなんないの」
尾高 「……そうだよな」

尾高はまだ、ケイトに何か隠している。ケイトが知ったら死んでもおかしくないような事実がまだある。
それを乃十阿に言われたと早合点したのではないか? 前回のレビューで筆者は「乃十阿は誰かをかばっている」と書いた。尾高がケイトに隠している事実が、無差別殺人事件の真実だろう。それこそ、まさに「知らなくていいコト」のはずだ。

週刊イーストはケイトの出生の秘密を記事にするのか?


桜庭と文香の不倫を追いながら、感情移入して躊躇するケイト。彼女は編集長の岩谷進(佐々木蔵之介)につぶやいた。

ケイト 「もし記事が出なければ桜庭は人知れず離婚して、吉澤さんと一緒になれたのかもしれませんよね」
岩谷 「先のことは俺たちの知ったことじゃない」
ケイト 「書いた記者がいちいち反省するのは書かれた人に無礼だ……」
岩谷 「そうだ」

次回予告によると、野中春樹(重岡大毅)が「ケイトの父は殺人犯」と“ある者”にばらしてしまうという。
この話は拡散され、騒ぎになるはず。そのとき、岩谷はどんな対応を取るのだろう。良き上司、良き理解者としてケイトを守るのか? それとも、「俺たちの知ったことじゃない」と記事にするのか? 

週刊誌は、事実をそのまま伝えているわけじゃない。そこには記者の主観が少なからず反映される。ネタを持ち込んだ桜庭の妻・かずみ(三倉茉奈)の「夫に社会的制裁を」という意向から始まった今回の取材。しかし、記事は結果的にリクエスト通りにならなかった。「禁断の愛に王手!」「愛は先手必勝じゃない!」と、不倫する2人に理解を示す文ばかり並ぶ内容。自分の状況と重ね合わせたケイトが書くと、こういう記事になる。

7話でケイトは何者かに刺されるようだが、後ろ姿からかずみが犯人であることは明らかだ。ケイトの出生の秘密、1話完結のお仕事パート、ケイト─尾高の恋愛パート、このドラマを構成する3つの歯車がようやくリンクし始めた。
(寺西ジャジューカ)
吉高由里子「知らなくていいコト」ケイトが自殺を図ったと尾高が誤解した理由。知らなくていいコトは更に
イラスト/まつもとりえこ


『知らなくていいコト』
脚本:大石静
主題歌:flumpool 「素晴らしき嘘」(A-Sketch)
音楽:平野義久
演出:狩山俊輔、塚本連平 ほか
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中