本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

ハリー・ポッター 組分け帽子の使い方問題

先週(10月23日)から金曜ロードSHOW!で、4週連続ハリポタ&ファンタビ祭りをやっているので、この際ずっと気になっていたこの話についてまとめてみた。とはいえ、問題だと思っているのは私が知る限り私一人だし、私がここで問題だと言ったところでホグワーツの組分けシステムが変わるわけでもない。昼休みに会社の同僚が、なんかめんどくさいこと言い始めたなー程度な気持ちで、聞き流していただきたい。


同じキャラを同じ寮に集中させるホグワーツ

ハリー・ポッターシリーズの舞台であるホグワーツ魔法魔術学校。およそ、993年ごろ、

・ゴドリック・グリフィンドール
・サラザール・スリザリン
・ロウィナ・レイブンクロー
・ヘルガ・ハッフルパフ

という4人の偉大な魔女と魔法使いによって設立された7年制かつ全寮制の教育機関である。

本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

11歳までに魔法力を示した子供に入学資格が与えられ、入学すると、新入生はまず大広間で「組分け帽子」という喋る帽子(創設者たちが自分たちの死後も生徒を選別できるように、彼らの脳と人格がコピーしてある)を被せられ、この帽子の判断により、4つの寮の中から今後7年間生活する寮を言い渡される。4つの寮の特色は以下の通り、

【グリフィンドール】
・勇猛果敢、勇気がある、騎士道を有する生徒を求めるとされる
・勇敢で度胸があり信念が強いが、悪く言えば自信過剰かつ頑固で、己の正義感や思い込みから規則をアッサリ無視する傾向がある
・正義漢のイメージが強いが、ハリーの父親のようにスリザリン生のパンツを下ろそうとするゴリゴリのイジメっ子も輩出している
・闇の魔法使いになった者もいる
・寮のカラー…赤と金色
・シンボル…ライオン

【スリザリン】
・鋭い洞察力を持ち機転が利く(悪く言えば狡猾)、勇敢だが利己的、断固たる決意や野心を持つ政治家・指導者タイプの生徒が多いとされる
・イギリスの階級制度を反映したような、純血魔法族の名家出身者が多く、純血主義の選民思想を持つ者も多いが、その分団結は強い
・イジメっ子のイメージが強いが、スリザリン生がグリフィンドール生からイジメられていることもある
・闇の魔法使いを最も多く輩出している
・寮のカラー…緑と銀色
・シンボル…蛇

【レイブンクロー】
・知性を高く評価する寮、知的好奇心が強いものが多いとされる
・知性を重んじるがゆえにプライドが高い傾向にあり、程度が低いと思えばその相手を見下すものもいる。変人も多い
・4つの寮の中でもっとも合理的かつ個人主義的で、団結や結束に頓着がなく、実力主義的で身内意識も低いので、レイブンクロー内でもイジメが発生する
・闇の魔法使いも輩出している
・寮のカラー…青と青銅色
・シンボル…ワシ(映画ではワタリガラス)

【ハッフルパフ】
・心優しく誠実で我慢強く、勤勉かつ努力家な生徒を求めるとされる。
・3つの寮の適正に合わない生徒を広く受け入れている。
・争いを好まない。
また、名声や功績に固執しないため目立たない。このため、トロい劣等生の寮だと偏見を持たれがちだが、卒業生には優秀なものが多い。
・生徒数が最も多い寮ながら、闇の魔法使いの輩出が最も少ない。
・寮のカラー…黄色と黒
・シンボル…穴熊

本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

入寮先を決める基準は当人の思想

組分け帽子は、本人の性格や素質、思想を見抜き、本人の意向も多少加味した上で入寮先を決める。これだけなら性格判断にも似ていて、実際自分がどの寮のタイプなのかドキドキワクワクするし、いっぺん被ってみたいとも思う。この帽子それ自体は何も問題ない。問題はその使い方である。
組分け帽子が入寮先を決める選定基準は、

「当人の素質」ではなく、「当人が何を重んずるか」

らしい。つまり、その子の根幹にある思想やイデオロギー的なものを見抜き入寮先を決めるのだ。加えて、学校の校舎であるホグワーツ城は「城」というだけあって、堅牢かつ重厚な石造りである。寮の位置は塔や地下室(地下室て!)など、バラバラで、結果、当然のごとく各寮の談話室には同じベクトルの思想を持った人間が集中し、キャラ被り祭りが発生する。

本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

多様性への理解とは真逆のシステム

なぜ似たような考え方を持つ人間(それも多感な思春期の子供)ばかりを同じ寮に入れ、文字どおり壁を作ってしまうのか。これでは思想が偏り、偏見を加速させてしまう。多様性への理解とは真逆のシステムであるように思える。


それに同じ思想の人間が徒党を組んだら他と対立するのは自明の理だ(現に、スリザリン寮にはマグルも混血も認めない純血思想が根強く残り、ヴォルデモートを始め闇の魔法使いとされる人物を多く輩出した)。しかも、寮対抗制の点数方式を導入し、事あるごとに教師が自分の裁量で(どう考えても自分の寮贔屓の)加点減点をするため、争いには当然拍車がかかる。

組分けに親の影響がモロに出る

加えてもう一つ、どうなのよソレと思うのは、組分け帽子を被されて入寮先を決められるのが11歳という点だ。11歳、日本でいえば小5。これから思春期を迎える世代で、何かしら思想を持っていたとしても、それまで生まれ育った環境……つまり、親の影響をモロに受けている可能性が高い。良家のお坊ちゃんであるドラコ・マルフォイはまさにその典型だ。映画版第一作では組分けの直前、初対面のハリーに「魔法族にも家柄の上下がある。
付き合う友達は選んだ方がいい」
という、イギリスの階級社会をモロに反映したセリフを吐くが、

本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

果たして11歳の子供がこんなセリフを自分で考えるだろうか。純血魔法族の名家の当主であり、元死喰い人(ヴォルデモート卿の配下)だった父親の影響をゴリゴリに受けていることは明白であるし、それこそ幼い頃から同様のセリフを繰り返し言い聞かせられたのだろう。

親の影響から解放されるチャンスを潰すシステム

そういう意味では、親の手から離れて入寮したのは、新たな価値観に接するチャンスだったとも言える。しかし結局、組分け基準の「当人が何を重んずるか」に、親に刷り込まれた思想が該当してしまうため、自動的に差別意識の巣窟であるスリザリンに放り込まれる(ハリーのように拒否することもできるが、「スリザリンに入って然るべし」と育てられているので、本人もそれを望んでいる)。当然、友達も先輩も大なり小なり似たような思考のオーナーなので、多感な思春期をドップリ選民思想の中で過ごすことになる。

友達が欲しかったマルフォイ

ハリポタシリーズの後日談である『ハリー・ポッターと呪いの子』で、大人になったドラコ・マルフォイは、ハリーに「君たち3人は輝いていた。私は君たちの友情が何よりも羨ましかった。私は孤独だった。
孤独は私を本当に暗いところへ追いやった。トム・リドルも孤独な子供だった。トム・リドルは暗い場所から抜け出せず、だからヴォルデモート卿になった。」という旨の言葉を語った。なんと、ドラコはずっと、ハリー・ロン・ハーマイオニーの3人組に憧れを抱いていたのだ。

本当にそれで良いのか!?  ハリポタ組分け帽子の使い方問題

思えば、ハリポタ第1作の映画からドラコは執拗にハリーに絡んできた。夜中にわざわざ自分の寮を抜け出して、3人組の後をつけハグリッドの小屋まで行き、先生に告げ口するほどだ。
相当な執着心である。ただの敵対心でこうまでするだろうか。シリーズ通して終始こんな感じだったが、もしやこれは恋や嫉妬にも似た、友達欲しさの裏返しの行動だったのではなかろうか。

多様性を理解するためのキャラシャッフル

偏見や差別は、無知と無関心から生まれる。もし仮に、ドラコが手下のクラッブ&ゴイルと組分けで早々に引き剥がされ、思想やキャラの偏りがない寮で、ハリーと一緒になっていたらどうだっただろう。最初はボロカスに喧嘩するかもしれないが、クィディッチでも同チームとなり、ハッフルパフ的思いやりを持つ先輩や、グリフィンドール的無鉄砲な同期の影響を受け、「こういう人間もいるのか」と、純血思想も良い感じにマイルドになって、案外良い友人関係が築けたかもしれない。非常に都合の良い希望的観測だが、可能性はゼロではなかったように思う。

キャラはバランスよく振り分けよう

というわけで、ホグワーツ魔法魔術学校には、早急に組分けシステムの刷新を熱望する。まずキャラ被り祭りにないよう、在校生全員のキャラをシャッフルした上で、バランスよく各寮に振り分けていただきたい。教師独断の加点減点は廃止し、勝負はクィディッチと、模試の結果のみとしていただきたい。おのずと、同じ寮内でチームワークが発生するはずだ。

もしかしたら組分けシステムが偏っていなけれが、トム・リドルも友人が見つかり、ドラコの言う暗い場所から抜け出せ、ヴォルデモート卿にはなっていなかったかもしれない(いや、その場合その友人が穴にひきずりこまれる危険性の方が大きかったようにも思う)。
(ウラケン・ボルボックス)

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