『おかえりモネ』第4週「みーちゃんとカキ」
第19回〈6月10日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉
お盆も終わり、海に盆舟を流す送り盆の行事が行われる。それぞれの思いを胸に祈りを捧げる百音(清原果耶)たち……。親の後を継ぎたくない三生(前田航基)、自分が家業を守ると意地になる未知(蒔田彩珠)の姿を百音は見つめる。
『エール』での音(二階堂ふみ)たちが父の散骨を海でやるシーンなども人気が高かった。海ロケのシーンは強い。
【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第19回掲載中)
母似の未知、父似の百音
未知の種ガキ研究を発端に、永岡家の懐事情が明かされ、ギクシャクしたものの、百音の機転で事なきを得た翌朝。送り盆の支度がはじまる。支度しながら語り合う百音、亜哉子(鈴木京香)、未知。昨夜の気まずさをおずおずと解消するように、触れないようにして、違う話題で笑おうとする。
家族の中では、亜哉子が生真面目な人物で、未知が母似。百音は耕治(内野聖陽)に似て柔らかいほう。つまり、今は少し塞いでいるけれど、百音は父に似て明るいキャラであるということだろう。そんな百音がこんなにも大人しくなっているなんてよっぽどのことであろう。天気予報の番組に出ている朝岡(西島秀俊)のことも言いかけて口ごもってしまうほど(第16回)。
黙って百音は家族を見つめている。
盆棚の前で祖母・雅代(竹下景子)のささやくような声でモノマネをする百音と未知が二羽の小鳥のようだった。
父の十字架
父・秀水(千葉哲也)から逃げまくっている三生。送り盆の法要を行う父の姿を見て、何かを思いながらも仙台に戻ることにする。どう見ても三生に気づいている状況だが、秀水は泳がしている。「家業を継がないパイオニア」として三生に共感を示す耕治は、「親父が人生賭けてきた仕事を継がねえって十字架はなかなか重い」と言う。ロックにハマっている三生は十字架のペンダントをしていて、そこからも仏教から離れたいという気持ちが滲む。離れようとすればするほど意識しているのが丸わかり。それをじっと見ている百音(三生を追いかけるとき、第11回の書店シーンにもあったカーブミラーカットが)。
耕治が三生をやたらいじっているのが興味深い。
送り盆に来なかった亮(永瀬廉)は、ぐでんぐでんに酔った父・新次(浅野忠信)の世話をしていた。亮は親父が人生賭けてきた仕事を継いでいて、新次はまんざらでもない。でも亮にもどこか迷いが見える。彼もまた十字架を背負っているようである。
お母さん
赤いシャツ来ておしゃれな龍己(藤竜也)、ヒロインみたいな耕治。よくできた人・秀水、元天才で今飲んだくれの新次と、父親たちが印象的。第18回で未知を叱った時の迫力は相当のものだったが、こう見えて耕治を「ぐうの音も出ないほど」「ぎったんぎったん」にいためつけるキツイ性格らしい(百音の世代がこういう言葉を使うのは祖父母と暮らしていたからという細かい設定なのだろうか)。
亜哉子は震災があった時は教師をやっていたが、震災後は雅代の介護のために教師を辞めて専業主婦になった。数年前まで外に出て働いていたからか、古そうな日本家屋で働いている感じが馴染まないように見える。なんなら昔、仙台でモデルやってましたみたいな、娘とは血が繋がってませんみたいな妄想が沸いてくるような現役感。シワひとつなくピッカピカなのだもの。
百音や未知のようなナチュラルな野の花のような佇まいとは違う、床の間の花のようなお母さん。生活者のリアリティーよりもインフルエンサーのようなきれいさや明るさわかりやすさを求める視聴者もいるだろう。前作『おちょやん』の篠原涼子もそういう役割だったように感じる。テレビドラマには必要な存在なのである。
雅代が晩年、家族のこともわからなくなっていたことを耕治がしょんぼりすると、「おばあちゃんわかってたわよ、おじいちゃんとあなたのことは」と励ます亜哉子。さらりと嫁の疎外感が出てどきりとなった。きっといい家族であったのだろうけれど、永浦家に嫁いできた身。姑が無意識になった時、思い知らされる。キッと耐えて笑顔に変えていくところに凛とした鈴木京香の持ち味が出た。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami