『おかえりモネ』第23週「大人たちの決着」
第112回〈10月19日(火)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉

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新次、動く。亮(永瀬廉)が「俺、幸せになってもいいのかな」と言っていたと聞いた新次(浅野忠信)は9年間、出さずにいた美波(坂井真紀)の死亡届を出す決意をする。それによって下りた見舞金や保険金を亮の船の足しにしようと考えたのだ。
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百音(清原果耶)は永浦家に新次を連れ来て、未知(蒔田彩珠)に亮を連れて来るように指示する。百音はこうやってバラバラになった人たちを繋げ、立派に人の役に立って入ることに気づいているだろうか。
永浦家に来た新次はいちごの入った箱を亜哉子(鈴木京香)に渡す。亜哉子は「こんな立派なものもらっちゃって」と箱の表面をなでる。このワンアクションが亜哉子らしい。大人の儀礼を心得ている。
儀礼といえば、ひさしぶりに、百音が生まれた時、嵐の中、亀島から本土に船を出してくれたのが新次だった話題が出る。この話が島では常に語られていて、そのたび、お決まりのようにその節はありがとうございましたと亜哉子や百音がお礼を言うことがドラマの序盤で描かれていた。
この回、ひさしぶりに亜哉子と百音が新次に「その節は〜」とやる。
どんな時でも決して欠かせないのは線香をあげること。これだけは永浦家に来た人たちがまず行うことである。線香をあげることが亡くなった人への思いやり。永浦家の雅代(竹下景子)は亡くなった人と誰もが思っている。亡くなった人を想い過ぎる愛の深さも尊いけれど、亡くなった人と認識されたほうが穏やかかもしれない。
でも簡単に割り切れないから、新次はずっと苦しんで来た。「ほんとごめんなもう」と亮と目を合わせずに言う新次。じわりと反応する亮。父と子は難しいから、容易に向き合って本音を言い合えないのだろう。
もうひとりの父と子といえば、龍己(藤竜也)と耕治(内野聖陽)。仙台支店への栄転を前に銀行を辞めて永浦水産を継ぐと言い出した耕治を「海舐めてるのか」と叱りつける龍己だったが、内心は息子のことを思っている。ここまで勤め上げたのだからもったいないと考えていた。
この発想は龍己らしいのだと思う。龍己は亀島のトップ漁師として勤め上げた末に牡蠣の養殖をやっていて金賞まで上り詰めた。てっぺん獲るのが男の甲斐性みたいな感覚があるのだろう。
耕治はそういうマッチョな攻める感覚があんまりなく、だから音楽の世界では自由に演奏を楽しみ、金融の世界では堅実に保守的に勤めてきた(「金は大事だ。生き死にに関わる」というセリフがある)。内野聖陽のこれまで演じてきた役はどちらかといえばマッチョな――勝負の世界に生きるようなイメージなのだが、耕治は堅実派。そんな耕治が人生、一度、勝負に出ようとしていることが興味深い。
亜哉子は耕治を心配しつつ受け入れているようで、銀行を続けたほうがいいとは考えていない。理解ある妻である。
『あさイチ』に清原果耶、蒔田彩珠登場
10月19日、『あさイチ』に清原果耶、蒔田彩珠がゲスト出演した。『モネ』の過去の名場面を振り返る時、未知が菅波(坂口健太郎)に百音と亮のことを意味深に伝える場面で、清原と蒔田が顔を見合わせて思わず笑ってしまっていた表情が良かった。メロドラマ度の高い場面にくすぐったい気持ちになったのだろうか。そこについては言及せず、服を投げつけるシーンについて蒔田が裏話を語った。服を投げる段取りの相談により関係が深まったそうだ。
また清原が言うには百音は「大前提として恋愛軸で生きてきていない」とのことで、菅波への恋愛感情も随分と後になってからのものと解釈しているという発言は興味深い。初デートの時でもなく、つまり亮との出来事の時でもなく、抱きしめられてようやく自覚節。
こういうことを語る清原の喋り方はクールでクレバー、声はやわらかいけれどちゃんと深い呼吸で話していて聞きやすい。百音の時は百音が息苦しく生きているから呼吸を浅くしゃべっているのだろう。今朝の『モネ』の冒頭、「りょーちゃん」の音が半音ほど低く感じられる。マイナー調の空気の再現率の精度に驚く。
『あさイチ』では料理やカスタネットで自然に笑っていたのでホッとした。
(木俣冬)
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 坂井真紀 千葉哲也 山寺宏一 山口紗弥加 菅原大吉 佃典彦 茅島みずき 伊東蒼 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami