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『おかえりモネ』第113回 及川父子(浅野忠信・永瀬廉)の物語がサイドストーリーなんて信じられない

『おかえりモネ』第23週「大人たちの決着」

第113回〈10月20日(水)放送 作:安達奈緒子、演出:梶原登城〉

※本文にネタバレを含みます

※『おかえりモネ』第114回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします


斬新。朝ドラ名物「立ち聞き」をこんなふうに見せるとは。長いこと確執があった新次(浅野忠信)亮(永瀬廉)父子の対話が、百音(清原果耶)、未知(蒔田彩珠)、亜哉子(鈴木京香)の立ち会い(立ち聞き? 座り聞き?)によって行われる。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第113回掲載中)

すでに席を外している耕治(内野聖陽)に続いて席を外そうとする亜哉子に亮が「聞いていてもらいたい」と頼むのだ。「わかった、ここにいる」と未知が真っ先にうなずく。どんな時でもそばにいる。まさに。未知の覚悟を百音が丸い目をして見つめている。先日、彼女が未知の決意を明確にしたのだ。百音はその後の亮を見つめる未知を心配そうに見つめ続ける。

新次と亮の話を女性たち3人が聞くことは亡くなった美波(坂井真紀)の代わりと解釈することも可能であろう。美波が生きていたら、きっと父と子が揉めるたび彼女がそばで聞いていたことだろうから。及川父子にはそういう家族の日常が失われていた。

新次と亮は横並びで船について話し合う。「親父、一緒に乗ってくれないか」と亮が持ちかけるが、新次は首をたてに振らない。「立ち直れねえまんま前向くことだってできるだろ。みんなそうだろ」と声を大きくする亮。激しい本音が出るようになっただけ亮も前に進んでいる。

「元に戻ることだけがいいことだとは思えないんだよ」と自論を語る新次。ここで亮は新次のほうを向く。「おやじを元に戻すことが俺の生きてきた目的だよ」と亮が必死で言うも、新次の決意は揺らがない。

「俺が海で生きんのはあの日で終わりにしたい」。そう言う新次は以前よりずっと安定して見える。美波の死を認めて、彼女との思い出はそのままに、別の道(いちご農家の手伝い)を歩むことが新次なりの生きることだと発見したからだろう。不謹慎だが、これは再婚を決意するようなものかもしれない。船という妻が亡くなって、いちごという妻と再婚するような。

船と生きたことを大事にしながら生き続けるにはそうするしかない。この世は不可逆。だから前に進むしかないのである。

『おかえりモネ』第113回 及川父子(浅野忠信・永瀬廉)の物語がサイドストーリーなんて信じられない
写真提供/NHK

再び、耕治、さらに龍己(藤竜也)も立ち会って死亡届に判を押すことに。決意したものの、なかなか押せない新次に「ながっだことになんかなるわけないだろ」と耕治が言う。その背後に雅代(竹下景子)の位牌。そう、新次はまず雅代にお線香をあげていた。亡くなった人も生活の一部なのである。亡くなった人の記憶は残った人たちが生きることで守られていく。

新次の心に美波の思い出が駆け巡る。最高に楽しかった時間。美波がいなくなった長い長い絶望の時間。新次は美波の十八番「かもめはかもめ」を諳(そら)んじながら判を押す。その歌詞はあまりに新次の心境のど真ん中。深く愛している人を諦めざるを得ない心境を切々と歌ったものである。陽気で幸せいっぱいの美波が及川家の幸福の継続をなんの疑いもせずに生活していた時代に歌っていたことがなんと皮肉なことだろうか。

とはいえ、きっと海に生きている人たちは死と隣合わせの覚悟もあるだろう。どんなに明るく振る舞っていてもどこか諦念を抱えている。だからこそ「かもめはかもめ」は誰の心にも響く。人生はあざなえる縄の如し。幸福と哀しみはニコイチである。新次が判を押す時、結婚指輪をした左手が映っていることが印象的だった。


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