【写真】『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』場面写真
〇ストーリー
ニューイングランドの平和な町で現職のブレア・グラッドウェルと挑戦者ハロルド・フォークナーは目前に迫った町長選を巡り、激しく争っていた。ある夜、アリソンとメリッサが夜道を歩いているとマスクを被った謎の男に襲われる。これは不吉な連続殺人事件の始まりにすぎなかった......。
〇おすすめポイント
ドキュメンタリー映画『封印殺人映画』(2006)のなかで、ホラーによって記念日は使い尽くされたとされていたが、ついに選挙にまで手を出してきた。……と言っても選挙を題材としたホラーは既にいくつかある。有名なところでいうと「パージ」シリーズもそうだが、『Election Night』(2021)やトランプ前大統領のようなマスクを被った殺人鬼が登場する『President Evil』(2018)なども、日本では未公開ではあるが存在している。
ただ、今作で注目してもらいたいのは、選挙を題材としているということよりも、クリエイター”ブルームクイスト・ブラザーズ”が、いかにホラーマニアかということだ。
「スクリーム」や「死霊のはらわた」など有名なシリーズの新作でさえ、劇場公開されないホラーアウェーが進む日本において、中間的な規模の作品が輸入されるなど、もはや絶望的。そんななかで、こういった新進気鋭のホラー作家による作品が公開されることは嬉しいかぎりだ。
今作の監督を務めたエリック・ブルームクイストの名前を聞いてホラー映画を想像する人は、欧米ホラー通であることは間違いない。というのもエリックが手掛けた作品は、これまで日本で公開されたことが、ほとんど無いのだ。
脚本・プロデューサーには、カーソン・ブルームクイストも継続している。このふたりは、ホラー以外のジャンルも取り扱うが、幼い頃からビデオカメラで映画を撮影して遊んでいた実兄弟であり、コアな映画ファンの間では注目されている。ほかにもコーリー・アシノフスキーやアダム・ウェップラーといった、ブルームクイストチームとしてはお馴染みのキャストも参加している。
ブルームクイストの作品は、どれも王道プロットになぞられていながらも、そのなかで独自性や予想外のギミックを仕掛けているのに、どこか懐かしい。そんなスタイルであることから、幅広いホラーファンから愛されている。
例えば『Ten Minutes to Midnight』(2020)では、『悪魔のいけにえ2』(1986)以来、キャロライン・ウィリアムズに約34年ぶりのDJ役を演じさせるなど、キャスティングからもホラーマニア感がにじみ出ていたし、サマーキャンプを通して様々な恐怖が飛び掛かってくる『She Came from the Woods』(2022)なども、王道から古典、カルトホラーにあるコミカルと恐怖の間の絶妙な空気感を良い具合に現代的なものとして変換してみせた。
今作も同様に、王道プロットになぞられたスラッシャーでありながら、予想を上回って、”それはアリなの?”と思わせるような新しいギミックが仕掛けられていた。
選挙というものをネタの入り口として使っているだけではなく、選挙に勝つには、自分の手は汚さずに、いかに周りの人間をコマとして動かすのか~という実際にアメリカの選挙制度に通じるような風刺も効いており、ちゃんとポリティカル・サスペンスとしても機能しているのは見事だった。
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〇作品情報
監督:エリック・ブルームクイスト
脚本: エリック・ブルームクイスト、カーソン・ブルームクイスト
出演:ナオミ・グレイス、デヴィン・ドルイド、ウィリアム・ラス、エイミー・ハーグリーヴス、オリヴィア・ニッカネンほか
2023 年/アメリカ/英語/106 分/カラー
R15/配給:プルーク、エクストリーム
公式サイト:https://founders-day.com/
2024年9月20日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿 他 全国ロードショー!
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