『プリキュア』の衣装を身にまとった幼い頃の写真と、現在のビフォーアフター写真が大きな反響を呼んだ、コスプレイヤー・猫田あしゅ。彼女のコスプレ人生は、情熱と挑戦の連続だった。
彼女に「職業:コスプレイヤー」としての苦労や喜び、そして何よりも大切にしている“子供たちにコスプレの楽しさを伝えたい”という熱い想いを聞いた。(前後編の後編)

【写真】趣味から仕事へ、コスプレイヤーとしてのエピソードや今後の活動について語る猫田あしゅさんの撮り下ろしカットほか【9点】

――今、コスプレで一番こだわるところは?

猫田さん キャラクターの仕草ですね。あとはメイク。元の顔があるので、いかに変えられるかを意識しています。

――お仕事としてのコスプレと、趣味としてのコスプレの違いは?

猫田さん 趣味のコスプレでは、自分の好きなようにとことんこだわれるのが魅力です。でもお仕事の場合は、やっぱりクライアントさんの意向が第一。自分が「こうした方がいいかも」と思っても、ご希望があればそれに合わせるようにしています。

――こだわりを抑えることもあるんですね。

猫田さん そうですね。どちらにも良さがありますよ。趣味だと自分の目だけで判断するので偏りがあるかもしれませんが、仕事だと複数の目が入るので、よりクオリティが上がると感じています。

――ではコスプレをしていて、思い出深いエピソードがあれば教えて下さい。


猫田さん 『カードキャプターさくら』のコスプレで桜のロケ地に行った時、家族連れの子供に「すごく可愛い」と言われたことですね。私も子供の頃、『ふたりはプリキュア』のショーに出ていたお姉さんに憧れていたので、今は自分がそういう存在になれているのかなと思えて、すごく嬉しかったです。

――逆に大変だった、しんどかったエピソードは?

猫田さん フィジカル面では、とある撮影で異次元な髪型の子をやった時ですね。一枚一枚確認して撮影したので、1ショットに半日かかったこともありました(笑)。メンタル面では、伸び悩む時期が定期的にくることですね。いろいろ試行錯誤しては伸びて、また停滞しての繰り返しですが、そのたびにコスプレのクオリティを上げる努力をするので、結果的には良かったと思います。ただ、悩んでいる間は本当に辛いですね。

――普段、SNSで発信する時に気をつけていることってなにかありますか?

猫田さん 私のアカウントは、みんなが楽しい気持ちで見に来てくれていると思っているので、あまりマイナスな内容は載せないようにしています。でも、あまりに感情を隠しすぎると「人間味がない」「距離感がある」と言われたこともあって……。なので自分の感情が出すぎないように気をつけながらも、“私らしさ”が伝わるように発信しています。

――これまでに反響が大きかったはどんな投稿ですか?

猫田さん 小さい頃の『プリキュア』の写真と、大人になってからのコスプレ写真を並べて載せた時に、たくさんの方から「夢があるね」と言ってもらえて、すごく反響がありました。あれをキッカケにコスプレを始めてくれた人がいたら嬉しいですよね。


――一方でSNSには批判的な声もあると思います。

猫田さん 活動に害のあるデマなどは嫌ですが、「可愛くない」とかは別になんともないです。他に可愛いと思って応援してくれている人もいるし、色んな考え方の人がいると思うのであまり気にならないですね(笑)。

――では、コスプレをお仕事としてできるようになったのは、いつごろからでしょう。

猫田さん ありがたいことに最初にイベントに出るようになってすぐに、事務所の方に見つけていただきました。その時はまだフォロワーも2000人くらいで、全然駆け出しだったのですが、看護専門学校に通いながらも続けていました。

――好きなことを仕事にすると大変だと言われますが、その点についてどう感じていますか?

猫田さん 私はそんなこと全くないです。確かに趣味でやっていた頃は反応数が少なくても全然気にせず楽しんでいましたが、仕事としてやるようになると、もっとファンやクライアントさん、色んな人に喜んでもらえるように努力しなきゃと思って、コスプレのクオリティをもっと上げようというモチベーションにもなります。それが楽しいですね。

――コスプレをしていることに対して、ご両親はどんな反応でしたか?

猫田さん 最初は「あんた、またコスプレなんてしてるの……?」みたいな感じでしたが、今ではすごく応援してくれるようになりました。最近、「『かわいいコスプレイヤー展』に行ってきた」と報告してくれて、チェキやアクスタ、写真集も買ってくるほどです(笑)。

――親に認めてもらえた瞬間は、どんなタイミングだったのでしょう。


猫田さん 私が熱心にコスプレをしているのをみて、母が「もっといい衣装を買った方がいいんじゃないか」と言い出して自費で高い衣装を買ってくれたときですね。「やるならちゃんとやりなさい」と言われました。今ではご飯を御馳走したり出来るようになったのでお返しできているかなと思っています。

――仮にコスプレができなくなったとしたら、次に挑戦したい仕事はありますか?

猫田さん 最近、MCをさせていただいたり、動画も作ったりしているので、そういう角度からでも表に立つ仕事をしていたいですね。

――では、10年後、どんな風になっていたいですか?

猫田さん 10年後は、もっと子供たちにもコスプレの楽しさを知ってほしいと思っています。そして子供たちと一緒にコスプレをしたり、もっとファミリー向けのイベントにコスプレイヤーとして招待されるようなことがあればいいなと。

――どうして子供たちにもコスプレをしてほしいのでしょう。

猫田さん 私自身が子供の頃、コスプレをしたくても、周りにそういう環境がなかったんですよね。なので子供の頃からコスプレができるといいなと思っているんです。そしてコスプレイベントに子供たちが「行きたい」と言ってくれるような文化が広まってほしいですね。なので家族向けのイベントに招待されることがあれば参加しますし、そこで見かけたお子さんたちには積極的に声をかけて、一緒に写真を撮るようにしています。

――最後に、猫田さんの目標としている存在を教えて下さい。


猫田さん 『きらりん☆レボリューション』でアニメと現実の垣根を越えて活躍された久住小春さんのように、私もコスプレイヤーとしてだけでなく、子どもたちの“憧れの存在”になれるような活動ができたらと思っています。それが私の目指している頂点ですね。

【前編はこちらから】「私なんかと話しても楽しくない」引っ込み思案な少女が人気コスプレイヤーになるまで、
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