永作博美が50歳の主人公・待山みなと役を演じる『時すでにおスシ!?』(TBS系)が現在放送中だ。50歳といえば「まだまだ50歳。
人生の折り返し地点」とポジティブに捉えるか、「もう年だから」とネガティブになるかは自分次第だ。本作では、子育てを卒業したみなとが鮨アカデミーに入学し、講師・大江戸海弥(松山ケンイチ)や仲間たちと一緒に鮨と人生に向き合う姿が描かれている。

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■自分のために“お金”を使うことにためらう女性たち

みなと世代の女性の中には、自分に時間やお金を使うことにためらいを感じる人が少なくない。"自分が何をしたいか"ではなく、"家族が何をしたいか"を長らく優先してきたからだ。

とはいえ、子どもはいつまでも世話が必要なわけではない。巣立った後は「空の巣症候群」という言葉もあるように喪失感に襲われ、「私は何者なのか」「私は何をしたいのか」という問いに直面することになる。みなともその一人であった。

みなとの仕事の同僚である沼田大(平井まさあき)は「みなとさんはどう過ごすんですか? 第二の人生。自分のためだけに時間を使ってやりたいこと、思いっきり楽しんでくださいね」と親切心から背中を押したが、この言葉にみなとは悩み続けることになる。

みなとは「ちょっと高いものを食べる」「美容院に行く」とやりたいことを書き出してはみたものの、行動に移せなかった。宅配食は1000円を超える値段に躊躇してやめてしまい、美容室も結局後まわしになった。

みなとは、1000円台の宅配食をたまに楽しめるほどの経済的余裕はあるように見える。
それでも「自分のため」となると気が引けてしまうのだ。

みなとと息子・渚(中沢元紀)のスマホメッセージのやりとりに共感した母親は多いだろう。みなとは息子に長文のメッセージをよく送るが、渚からの返信はそっけない。息子にあれこれ考えてメッセージを送っても、返ってくるのはスタンプだけ。"母子あるある"だ。

息子中心の日々を過ごしていたみなとだったが、友人の磯田泉美(有働由美子)に誘われ、喪失感やもどかしさから逃れるために鮨アカデミーへの入学を決めた。

■鮨アカデミーには多種多様な学生が在籍

鮨アカデミーの学生といえば10代の男子というイメージがあったが、その認識は時代遅れだったようだ。"家族のために鮨を握りたい"と入学した立石船男(佐野史郎)、インバウンド需要を見据えた鮨ビジネスの展開を考えるキャリアウーマンの柿木胡桃(ファーストサマーウイカ)、外国人のセザール(Jua)などバックグラウンドも入学の理由もさまざまだ。

ちなみに現実でも、鮨職人の養成校に通う学生の年齢層は幅広く、みなとのようなミドル層以上の生徒も珍しくない。また、胡桃のような垢抜けた女性の鮨職人も最近は増えている。もちろん、森蒼斗(山時聡真)のような若い男性も多く在籍している。

子ども時代は同性の同年代と共感し合うことが多いが、大人になると親しくなるのに性別や年齢は関係なくなってくる。
同じ志を持っていたり、同じ悩みを抱えていたりすると、共感し合えるものだ。

■年齢を重ねた人の強み

息子が一人立ちしたことで、みなとは「お母さんじゃないなら私は何なの?」「私には味がない」と自問し続けていた。

しかし、みなとは自分の過去と向き合う不器用な講師・海弥の心の拠り所になり、頭脳明晰だが心に寂しさを抱える胡桃に温もりを与えるなど、自分が思っている以上に周囲に価値を提供している。"母親でしかない自分"に悩んでいたみなとだが、家庭を切り盛りする主婦として数々の経験をしてきたからこそ、周囲に与えられるものがあるのだ。

本作にはみなと、泉美、船男など中年層以上の人物も多いが、彼らを見ていると、人は年齢を重ねるほどに深みや寛容さを増していくのだとしみじみ思う。

海弥のパワハラ問題が胡桃によって暴かれた際も、みなとは海弥と向き合おうとし続けた。また、船男は「人生、生きてると色々ありますね」とつぶやいていた。一方、若い蒼斗はグループの輪を乱した胡桃に不満をあらわにしていたが、みなとや船男は蒼斗も胡桃も寛大に受け止めていた。

人は加齢により体力など失うものは多いが、その一方で、その人ならではの味わいは確実に増していく。

第5話は、鮨アカデミーの授業が早くも折り返し地点を迎える。みなとは進路面談に臨むが、どのようなセカンドキャリアを選択するのだろうか。

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