今期のドラマの多くが折り返し地点を超え、どのようなラストを迎えるのか目が離せない。一方、放送前は期待の声が上がっていたものの、放送開始後はあまり話題に上らなくなった作品もある。
なぜ前評判ほど盛り上がっていないのか。いくつかの作品を取り上げ、その理由を探ってみたい。

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◆『サバ缶、宇宙へ行く』

北村匠海主演の同作はフジテレビ系の月曜21時枠で放送中だ。

連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合ほか)でやなせたかしを好演した北村匠海が主役ながら、何かと否定的なコメントが多かった前クールの『ヤンドク!』を下回る視聴率となっており、これまでの月9ドラマの中でも低調だ。

物語の舞台は福井県の若狭水産高校。生徒たちが先輩から後輩へとバトンをつなぎ、サバ缶を宇宙に飛ばすプロジェクトに取り組む。

本作の魅力は、地方で暮らす高校生のリアルな葛藤を描いている点だ。東京への憧れ、母親を残して上京する不安、"地元には何もない"と感じながらも故郷を愛する複雑な心情が、丁寧に表現されている。加えて、青い地球や果てしない宇宙空間の映像は圧巻で、この世界の美しさと広大さを強く実感させられる。

同校の生徒は思春期特有の問題を抱えていても、大きな問題を起こす者はいない。また北村演じる朝野峻一は性格が穏やかで、常識もある。それゆえに、『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)や『ごくせん』(日本テレビ系)のような衝撃的な事件や型破りな展開はない。
その穏やかさゆえに、SNSでバズることは少なく、大衆の好奇心をかき立てにくい面もあるだろう。

◆『月夜行路 -答えは名作の中に-』

日本テレビ系の水曜22時枠で放送中の同作は、波瑠と麻生久美子がW主演を務め、それぞれの魅力を活かした作風となっている。視聴率は4~5%前後と決して高くないが、TVerお気に入り登録者数は70万人を超えている(2026年5月14日時点)。

本作は古典文学好きやミステリー好きに刺さる作品だ。銀座のバーのママ・野宮ルナ(波瑠)は、川端康成や江戸川乱歩などの名作からヒントを得て、事件の解決に協力する。

ルナは「お言葉を返すようですが、文学は何百年も前から現実をもとに生み出されてきました。いわば、ありとあらゆる知識が詰まった教科書のようなものです」と言う。視聴者の中にも、古典文学から生きるヒントを得た経験がある人もいるだろう。

また、専業主婦の沢辻涼子(麻生久美子)に共感する同世代の女性もは多いのではないか。生活に不自由はないものの、家族のために献身的に生きてきた人生の中で、ふと感じるもどかしさ。そして、昔の恋人がふと気になってしまう気持ち。

常識に縛られて生きてきた涼子は、ルナの自由奔放さや行動力に驚きつつも、憧れを抱いたはずだ。


ルナが近松門左衛門『曽根崎心中』や江戸川乱歩『黒蜥蜴』を解説するシーンは、文学好きやミステリー好きにはたまらないが、人によっては"国語の授業っぽい" "小難しい台詞は必要ない"と感じられているのかもしれない。こうした解説は人を選ぶものだ。だが、世の中にはミステリー好きや古典好きは少なくない。結果として、それがTVerでの爆発的ヒットにつながっているのではないか。

◆『GIFT』

TBS系の日曜劇場枠(日曜21時)で放送中の同作は、孤独な天才宇宙物理学者・伍鉄文人(堤真一)と、車いすラグビーの弱小チーム「ブレイズブルズ」との交流が描かれている。

脇を固めるのは、山田裕貴、有村架純、吉瀬美智子、安田顕、山口智子ら豪華な顔ぶれだ。放送前から話題になる機会が多く、筆者も今期を代表するドラマになると予想していた。

ところが、第1話の視聴率は9.4%と二桁に届かず、4話・5話では6%台まで落ち込んだ。車いすラグビーという競技の世間的浸透度と、スポーツドラマにみられる"万人受けのしにくさ"が影響しているのか、視聴率は伸び悩んでいる。

筆者もラグビーのルールは分からない。それでも、内向的性格ゆえ、宇宙物理学の世界に閉じこもる文人の心情には強く共感し、作品に引き込まれている。また、選手たちが競技で真正面からぶつかり合う姿にも鼓舞されている。
ラグビーやスポーツに興味がない人も、楽しめるドラマだと思う。

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