現在、1996年に放送されたNHK連続テレビ小説『ひまわり』が、NHK BSで再放送中だ。松嶋菜々子は本作でのブレイクを機に、時代を象徴する数々の作品でヒロインを演じ続けてきた。
今回は、松嶋の代表作をたどりながら、1990年代から現在に至るまでの女性の生き方や働き方の変化について考える。

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◆『ひまわり』が映す"結婚=退職"の時代

1996年に放送された『ひまわり』でヒロインを務める南田のぞみ(松嶋菜々子)は、大手食品メーカーで働く24歳の会社員だ。

のぞみは恋人・関口純一郎(大鶴義丹)との結婚を理由に、新規プロジェクトの候補から外され、東北の工場への異動を命じられる。のぞみの上司・春日ひとみ(浅野ゆう子)は"会社は辞職を言い渡しているわけではない"と励ますが、実質的には退職勧奨であるのは明らかだった。

のぞみは、仕事と家庭の両立が可能であることを上司に訴え、説得を試みたが、あっけなく退けられてしまう。

当時は、「新製品発表直前の一番忙しい時に産休を取った女がいた。それ以来、既婚の女子社員は信用しないことにしてる」といった不満を平然と口にできる雰囲気があった。

さらに"腰かけOL"という言葉が象徴するように、女性にとって仕事は人生における必須条件ではなかった。こうした価値観は、2000年に放送されたドラマ『やまとなでしこ』(フジテレビ系)で、神野桜子(松嶋菜々子)が抱く"結婚=退職"という考え方にも通じる。

◆2000年代、"キャリア女性"は憧れの対象に

松嶋世代は、キャリア女性の"第一世代"ではない。しかし、自立した女性が増え始めた時代でもあった。1990年代末から2000年代初頭にかけけて、30代女性の未婚率は上昇、「結婚しない人生」という選択も目立ち始めた。


その象徴として放送されたのが、2003年放送の『美女か野獣』(フジテレビ系)だ。福山雅治とW主演を務めた松嶋は、仕事に人生をささげる報道番組プロデューサー・鷹宮真を好演。ロングヘアでスーツを完璧に着こなす、その圧倒的な美しさも印象的だった。

また、『救命病棟24時』(フジテレビ系)シリーズで演じた小島楓もかっこよかった。楓はシーズン後半で医局長に抜擢されるが、そこに特別扱いはない。プロフェッショナルとして責任を負い、現場を率いる姿が描かれていた。

2000年代初頭は、キャリア女性をヒロインに据えた作品が次々に登場した。医師、弁護士、大手企業社員……当時のドラマでは、華やかな女性の成功モデルとして描かれる傾向が強かった。

2010年代に入ると、育児と仕事を両立する女性を支援する制度が整備されていく。筆者が就職活動をしていた2014年前後も、説明会ではどこの企業も「子育てをしながら働く女性社員がいる」とアピールしていた。

そうした時代背景の中で放送されていたのが、2016年の『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系)だ。松嶋演じる吉良奈津子は、育休明けの異動や"お飾り部長"扱いに悩まされていた。


一方、営業経験のない奈津子が部長に就任したことで、現場は複雑な空気に包まれる。特に、営業一筋で長年貢献してきた米田利雄(板尾創路)の心中を思えば、いたたまれない気持ちにさせられた。

◆『おコメの女』で見せた"一人酒"のリアル

前クール放送の『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』(テレビ朝日系)では、松嶋は国税調査官・米田正子を演じた。

だぼっとしたパンツスーツと手入れのしやすそうな髪型は、かつてのキャリアウーマンのイメージとは大きく異なる。仕事終わりに一人で居酒屋に立ち寄り、日本酒をぐいっと飲む。それが彼女の何よりの楽しみだ。

興味深いのは、本作で"女性だから苦労する"という描写が描かれていないことだ。、正子率いる"ザッコク"(複雑国税事案処理室)では性別による役割の違いはない。

松嶋と同世代の女性たちは、時代の価値観の変化を真正面から受けてきた世代でもある。若いころには寿退社が普通に語られた一方、現在では50代になっても働き続けることが当然の時代となった。松嶋はその大きな変化の中で、数々の作品を通じて時代ごとの女性像を演じ続けてきた。

2025年前期の連続テレビ小説『あんぱん』では、柳井嵩の母 ・登美子役を演じ、再び注目を集めたが、松嶋の時代ごとの自然体の美しさに、心惹かれる人は多いはずだ。


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