香りと人間の関係を明らかにする研究を行っている財満信宏氏が、香とはなんなのか、なぜ香りを吸うと心と体が整うのか、気になる症状に効くのはどの香りなのかを徹底解説した書籍『香りをかぐという最強の健康法』(アスコム)から一部を抜粋してご紹介。今回のテーマは『食欲をコントロールする香り』。

○食欲をコントロールする香り

ダイエット中に食べたいものを我慢することで、ストレスがたまって体調を崩したり、逆に過食して太ったりしたことはありませんか。

もっと楽しく、気軽にダイエットができたら……。

もしかしたら、香りはそんな願いを叶える可能性を秘めているかもしれません。

そもそも、「食欲」とはどういうものなのでしょうか。

身体がエネルギー不足のときに、私たちは「おなかが減った」と感じます。

反対にエネルギーが十分なときには「おなかがいっぱい」と感じます。

こうした食欲の調整は、脳の視床下部を中心に行われています。

視床下部には「摂食中枢」「満腹中枢」と呼ばれる部位があります。

その名の通り、空腹時に活発になるのが摂食中枢で、おなかがいっぱいのときに活発になるのが満腹中枢です。

これらを調整しているのが、お馴染みの自律神経です。つまり、何らかの方法で満腹中枢を刺激することができれば、脳が「おなかがいっぱい」と判断して、食欲の抑制につながる可能性がありますよね。

グレープフルーツに含まれる香気成分「リモネン」には、この満腹中枢を刺激する作用があると考えられています。


そもそも、リモネンには交感神経を活発にさせる働きがあります。

交感神経が優位になると、消化吸収を促進する副交感神経の働きが抑えられ、食欲が起こりにくくなるのです。

よって、リモネンを多く含むグレープフルーツの香りには、食欲抑制の効果があると考えられています。

実際に行われた実験で、週に3回、15分間グレープフルーツの香りを嗅がせたラットは、餌を食べる量が減って、体重が減少したという結果が報告されています。

リモネンは主に柑橘系の香りに含有される香気成分ですが、グレープフルーツに最も多く含まれます。

食事の前にグレープフルーツの香りを嗅ぐ習慣をつければ、食べ過ぎを防ぎ、ダイエットの役に立つかもしれません。

私たちの研究では、ウコン精油に含まれる香気成分の「ターメロン」の香りを嗅いだ動物で、高脂肪食誘導性の体重増加が抑制される(太りにくくなる)という結果が得られました。

こちらはまだ研究の途中で、神経系を介したものかどうかは明らかにはなっていないため、これから解明していきたいと考えています。

一方で、食欲がないときに有効な香りはあるのでしょうか?

勘のいい方ならお気づきになるかもしれませんが、料理に使われるハーブやスパイスを思い出してみてください。

それらがふんだんに使われたカレーやエスニック料理は、なんとも食欲をそそるにおいです。

カルダモン、シナモン、クローブといったスパイス系の香りには、胃の働きを高め、消化を良くし、食欲を高める効果が期待できます。

また、先ほどお話しした摂食中枢にまつわる研究で、興味深い報告があります。


ラットにペパーミント、プチグレン、ラベンダー、ティートゥリー、レモン、ローマンカモミール、ジンジャー、シナモンという8種類の香りを嗅がせ、摂食中枢と満腹中枢の活動の変化を調べました。

すると、ほぼ全ての香りで摂食中枢の活動が高まったことが認められ、なかでも特にペパーミントとジンジャーの香りで反応が大きかったそうです。

二つとも、私たちの生活に馴染みのある香りです。

食欲がないときには、香りを嗅いだり、レシピに加えてみたりすることを試してみてもいいかもしれません。

食欲といえば、口中香にまつわる面白い話があります。

口中香、覚えていますか?

口で香るにおいを口中香と呼び、味覚に大きく影響していることを第2章でお話ししました。

香りは、往々にして味の感じ方を強めるという性質があります。これを利用すれば、毎日のメニューの糖分や塩分を抑えることができそうです。

例えば、磯の香りは塩味の感じ方を強くさせる性質を持ちます。

味噌汁を作るときに、具材にあおさや海苔を選べば、味噌の量を控えめにして塩分調整ができるかもしれません。

また、バニラの甘いにおいは「バニリン」という香気成分によるもので、甘さをより際立たせます。

もしキッチンにバニラエッセンスがあれば、少し足すことで「甘さ控えめ」のスイーツでも満足感が得られるかもしれません。


そのほかにも、香味野菜やレモンなどの酸味のある食材は、嗅覚と味覚の相乗効果で、味をより奥深く感じさせます。

上手に使って、調味料や添加物などに頼りすぎない健康的な食生活を実践してみてはいかがでしょうか。

【食欲をコントロールする香り・まとめ】
グレープフルーツ、ペパーミント、ジンジャー、ウコン(ターメロン)、スパイス系の香りなど

○『香りをかぐという最強の健康法』(財満信宏/アスコム)

本書『香りをかぐという最強の健康法』は、「香り」が人体に及ぼす驚くべき作用を、最先端の科学的知見から解き明かした一冊。クローブや黒胡椒に含まれる香り成分「β‐カリオフィレン(BCP)」の吸入によって血管を保護する効果を発見し、国際誌『Biomedicine & Pharmacotherapy』にも掲載された著者が、その研究成果をわかりやすく解説している。本書では、症状別に有効とされる香りや、日常生活に無理なく取り入れる方法まで具体的に紹介。運動や食事と違い、「手軽で続けやすい健康習慣」としての“香り”の可能性を提示している。
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