『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』は、個人投資転換期の今、注目される「全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」を生み出した代田秀雄氏による初めての著書です。投資の基本に加え、得た資産をどう使うかという“出口戦略”まで丁寧に解説しています。
本書の一部を抜粋してご紹介します。
○オルカンの中身はどう動くのか※

オルカンの最大の魅力は、世界の株式市場の多様性を1本で享受できる点にあります。先進国から新興国まで、地域や業種の違いを超えて幅広く投資する設計は、個人では難しい分散を自然に実現します。1本のファンドを通じて、世界経済の成長や変化に応じた資産の動きに参加できることこそが、オルカンが多くの投資家に選ばれる理由の一つです。

組入比率を見ると、オルカンが米国の大きな経済力を反映して圧倒的な比率を持ち、日本や欧州、中国、カナダなどがそれに続いています。業種別でも情報技術や金融、消費財など、世界経済を支える主要な産業がバランスよく組み込まれています。こうして、オルカンを通じて投資することは、自然に世界経済全体の成長や変化に参加することにつながるのです。 

では、オルカンが世界の株式市場全体に連動する仕組みは、どのように成り立っているのでしょうか。ここで基準となるのが、MSCI ACWIです。

※本コラムにおけるMSCI ACWIのデータについては2025年末時点のものを使っています
○MSCI ACWI は世界経済を1本で映す「地球の地図帳」

MSCI ACWIは、米MSCI社が算出する世界株指数で、先進国と新興国を合わせた47カ国・地域、約2500銘柄を時価総額加重で構成しています。

この指数の誕生は1990年。1970年代以降、世界経済が急速にグローバル化する中で、「国境を越えて分散投資できる基準がほしい」という投資家の声に応える形で生まれました。
それ以前の株価指数―たとえばS&P500は、国ごとに市場を切り分けていました。けれどもMSCIは、「地球全体を一つの投資対象として見る」という発想を初めて実現したのです。いわば、投資のための「地球の地図帳」といえるでしょう。現在では世界中の運用機関が、国際分散投資の基準として利用しています。なお、オルカンが参照しているMSCI ACWI(配当込み)指数は1998年からデータが存在します。

MSCI ACWIは日本株を対象とする「MSCIジャパン・インデックス」、日本を除く先進国の「MSCI-KOKUSAI」、新興国をカバーする「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」という三つの地域別指数から構成されます。これらを組み合わせることで、世界の株式市場の大部分をカバーしているのです。
○透明性の高い〝ルールベース指数〞

ACWIの最大の特徴は、その透明性と客観性にあります。

MSCI社はまず、世界中の約3万7000銘柄から「グローバル株式ユニバース(ユニバース=投資の対象とする商品の銘柄グループ)」を抽出します。そこから、流動性や時価総額などの基準を満たした企業を選別し、最終的に国・地域ごとの構成銘柄を決定します。この選定過程はすべて明確なルールで定義されており、人の恣意を介さない「ルールベース指数」として高い信頼を得ています。

また、ACWIは年に4回―2月・5月・8月・11月に構成銘柄を見直します。
これは、経済構造の変化をタイムリーに反映するため。たとえば米国企業の比率は2004年には約50%でしたが、GAFAMやNVIDIAなどの台頭によって、2025年末時点では約64%にまで拡大しています。世界経済の呼吸に合わせて、指数そのものが生きているのです。

オルカンはこのMSCI ACWIに連動するよう設計されています。

つまり、指数が変わればファンドの中身も自動的に変わります。米国が成長すれば米国株の比率が上がり、インドや東南アジアが台頭すれば新興国の比率が高まる。投資家は何もしなくても、世界経済の重心移動に追随できる―それがオルカンの最大の強みです。

設定来の基準価額は3万3365円(2025年末時点)。2018年の設定時は1万円から始まり、円高局面を経ても騰落率233.7%と、世界経済全体の成長を映し出してきました。2020年の急落時には基準価額が1万円を割り込みましたが、その後、力強く回復。直近のトランプ・ショックによる一時的な下落(マイナス4.1%)を経ても、全体では右肩上がりの軌跡を描いています。

オルカンの保有者数は、2023年末の延べ255万人から2年で延べ567万人へと急増。
純資産総額は10兆円に達しました。インデックスファンドにとって、規模は効率そのものです。大きなファンドほど経費率を抑えることが可能になり、運用の安定性も増します。つまり、規模の拡大がオルカンをさらに強化しているのです。

○『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(著:代田秀雄/学研ホールディングス)

2024年の新NISA開始以降、年間の投信資金流入額15兆3400億円のうち、約2兆3550億円(約15%)がeMAXIS Slim(イーマクシススリム) 全世界株式(オール・カントリー)・通称:「オルカン」に集中しました。そんなオルカンの生みの親が、投資についての考え方を徹底的に解説します。

投資におけるリスクとはなにか?

なぜ短期投資が危険なのか?

インデックス投資とは?

パッシブ運用とは?

高配当株との付き合い方とは?

「オルカン」に込められた思いとは?

…など、株や投資に関する教養、そして激動の時代を乗り切る知識を身につけましょう。
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