レビュー
今や心理学は非常に身近なものになっている。書店に行けば心理学の本が数多く並び、心理学を応用した自己啓発テクニックや性格診断など、何らかの形で触れたことのある人も多いだろう。
そんな状況を、本書の著者・山田祐樹氏は「奇妙だ」と指摘する。九州大学基幹教育院准教授であり、心理学者でもある著者は、「心理学愛好家」を名乗るほどの無類の心理学好きである。
私たちがよく耳にする心理学や心理学用語の多くは、自分や他人をコントロールしたり、実生活に役立てたりするための、いわば「大衆的な心理学」に基づくものだ。しかしそれらは、研究に裏付けられた「アカデミックな心理学」とは根本的に異なる。本来は心理学とは言えない概念が、当たり前のように心理学として扱われていることに、著者は違和感を抱いている。
本書では「カラーバス効果」や「ウィンザー効果」など、大衆的な心理学で使われている言葉を取り上げ、アカデミックな心理学との関係や違いを解説する。実は、これらは正式な「心理学用語」ではないという。その由来や広まった過程を一つずつ紐解いていく様子は、目から鱗が落ちる内容だ。
大衆的な心理学が広まりやすく、アカデミックな心理学が広まりにくい背景には、情報の受け手である私たち自身の心理が大きく影響している。心理学に触れる際には、「それは研究に基づいているのか」という視点を持つことが大切だと、著者は読者に投げかける。
心理学の世界の裏側に触れられる、興味深い一冊である。
本書の要点
・著者は、アカデミックな心理学と大衆的な心理学は質的に異なっているにもかかわらず、同じ「心理学」と呼ばれることに違和感を持っている。
・アイデア発想のテクニックである「カラーバス効果」は、心理学用語ではない。アカデミックな心理学用語では、「随伴性注意捕捉」に該当する。
・大衆的な心理学が広まりやすい理由には、わかりやすく結論を「言い切る」ことやかっこいい名前がついていること、心理的距離の近さや認知処理のしやすさなどが関係している。
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