「京都府立医科大学創立150周年記念映画」である。通常、こうした教育機関にちなんだ映画はどこか説教臭く生真面目すぎて、退屈な仕上がりになるものだが、本作は面白い。
江戸時代末期、京都の村に住む蘭方医の大倉太吉(佐々木蔵之介)は、妻のフミ(真木よう子)や子供たちと暮らしつつ、日々の往診に走り回っていた。どんな病にも葛根湯を処方する漢方医の玄斎(内藤剛志)とは互いをけなし合う犬猿の仲だ。
当時はまだ漢方が主流の時代。だが太吉の診療所には村人の行列ができている。彼は犬の死骸を解剖する好奇心旺盛な医者でもあった。
ある日、呉服屋の使いを名乗る青年(藤原季節)がケンカ腰で太吉に往診を強要。乱暴なその青年を追い返したものの、病人を見捨てられない太吉は呉服屋におもむく。この家の娘・峰は様々な医者に診せたものの治らなかったが、太吉の診療で回復。例の青年はこの家の放蕩息子の新左だと知る。
そんな折、太吉の前に賭場泥棒で重傷を負った新左が転がり込む。太吉は西洋医学の恩師・日野鼎斎を呼びにやるが、恩師は不在。
やがて新左はすっかり回復して太吉のもとに顔を出すが、腎臓を摘出されたと聞いて激怒。ところが数日後、太吉の前に現れると土下座して「蘭方の医者になりたい」と言い出す。太吉は彼を刑場へ連れて行き、死体の解剖を見学させるのだった……。
本作の「2つの魅力」とは?
本作の魅力はいくつかある。そのひとつが蘭方医と漢方医の対立。医学の新旧対決とでも言おうか、太吉と玄斎がまるで子どものように互いをけなし合う姿が笑える。佐々木蔵之介特有のおとぼけ演技が特に冴えている。
もうひとつは伝染病に対する村人の無知と無理解だ。病の恐ろしさを知らないため、太吉の助言を無視して被害を拡大させてしまう。大衆の愚かさをひしとかみしめることができる展開だ。
また、荒くれの新左のその後も興味深い。
このほか京都で暴れまくる新撰組が登場して太吉に絡むくだりも無理がない。大昔の医学の実情と人間模様を歴史の大変革で味付け。重箱のように豪華ゆえ、ラストまで退屈せずに見ることができるはずだ。
脚本を担当したのは「ガキ帝国」(1981年)や「ションベン・ライダー」(83年)、「沈まぬ太陽」(09年)などを手がけたベテランの西岡琢也。1960年作の「ふんどし医者」を原案にオリジナリティーを加味してドラマを練り上げた。監督の緒方明は2010年に「死刑台のエレベーター」(57年のルイ・マル作のリメーク)を撮った実力派である。
現代は漢方と蘭方が仲良く棲み分けをはかっているが、150年前は劇中のような足の引っ張り合いもあったのだろうなぁと、妙に納得したのだった。(配給=ギャガ/新宿ピカデリーほか全国公開中)
(文=森田健司)

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