5月4日、第58回全日本大学駅伝(11月1日)の関東地区選考会が行なわれ、7校が本戦出場を決めた。果たして、来年正月の箱根駅伝でシード(10位以内)を狙えそうなチームはあるのか、各校の現状に迫る――。

来年の箱根駅伝で下剋上を起こせそうな大学は? 全日本大学駅伝...の画像はこちら >>

【「まだ発展段階」ながら、盤石の日大】

 今年の箱根で総合10位、12大会ぶりのシード権を獲得した日本大はトップ通過。盤石のレース運びを見せた。

 1組目、5000mで13分44秒74のタイムを持つ首藤海翔(1年)が3位で流れをつくった。先輩がマジックで腕に書いた「スーパールーキー、かませ」という言葉通りの快走。本人は「かますことができました。得意のロングスパートを仕掛けられたのでよかったです。最後、負けたのは悔しいですが、チームに貢献できたと思います」と笑顔を見せた。

 その後、2組でともに3年生の長澤辰朗が5位、石川悠斗が6位と好走。3組では前回箱根6区(区間15位)の主将・山口聡太(4年)が8位、同じく前回箱根7区(区間9位)の副将・天野啓太(4年)が16位と、堅実な走りを見せた。

 最終4組では、エースのシャドラック・キップケメイ(4年、6位)に加え、後藤玄樹(2年)が28分45秒16の自己ベストで11位の力走を見せ、MVP的な仕事をした。後藤、首藤ら下級生が勢いを見せ、上級生は安定した力を発揮。新雅弘監督は「まだ発展段階のチーム」と謙遜したが、箱根では戦力的にシード確保よりも上の順位を争えるレベルになってきている。

 2位通過の東海大(箱根12位)は、この日に向けたピーキングが見事にハマった。

 流れをつくったのは1組の檜垣蒼(3年)だ。2000~3000mにかけて集団のペースがキロ3分37秒まで落ちるなか、日大の首藤、大東大の大濱逞真(3年)といった実力者の動きを冷静に見ていた。ラストスパートで首藤、日体大の萩野桂輔(3年)と競り合う展開になったが、この春に行なったアメリカ合宿で磨いたラストスパートで前を譲らず、1位を勝ち取った。

 檜垣は「ようやくチームに貢献できてよかったです」と笑みを見せた。1年時には、出場できなかった箱根駅伝の後に不調を訴えて実家に帰り、競技を継続するかどうかを親と相談するほど追い込まれていた。だが、その時、前キャプテンの花岡寿哉(現Honda)が声をかけてくれたことでチームに復帰、本来の走りを取り戻した。同世代で前を進む駒澤大の桑田駿介をライバル視しており、今後が楽しみな存在だ。

 さらに2組の矢口陽太(4年)が9位、松山優太(2年)が11位、3組では関東インカレ1部ハーフマラソンで3位の中野純平(3年)がトップ、平井璃空(3年)が3位と順位を固め、4組では南坂柚汰(4年)が10位と健闘した。

 今季からチームを指揮する西出仁明監督は「ここに至る前の四大学対抗戦や日体大(長距離記録会)で他大学の選手と競り合い、チームのなかでもバチバチやっていたので、そういうのが自信になったと思います。現状、今回走った8名を含むエントリーメンバー12名と他の選手の差がまだ大きいので、これからより力をつけて箱根でひと泡吹かせるようになりたいですね」と語った。今季の東海大は、かなり暴れそうな気配が漂う。

 大東文化大(箱根19位)は、3組終了時点ではトップだったものの、4組目で3位に落ちてトップ通過はできなかった。

とはいえ、各組での安定感は随一で、それが強さでもあるが、逆に言えば、突き抜けた選手が出てこなかったのも事実。本来なら、4組(30位)の棟方一楽(4年)や1組(11位)の大濱がその役割を担う選手だ。

 1年生の近江亮(2組3位)、2年生の上田翔大(2組7位)、菅﨑大翔(3組2位)、鈴木要(3組9位)の状態がよいだけに、エースクラスが調子を上げてくれば予選会突破はもちろん、箱根のシード争いは十分可能だ。

【名門・東洋大は5位通過。現状をどう見るか】

 4位通過の神奈川大(箱根13位)は2組2位の滝本朗史(4年)の走りが勢いをつけ、同組の新妻昂己が14位、3組の北村海智も5位と、期待のルーキーふたりも好走した。

 滝本をはじめ、1組18位の阿部倫久、3組7位の平川瑠星、4組21位の花井創、同22位の新妻玲旺ら4年生の層が厚く、いずれも力があるだけに大崩れはしない。個別対応のきめ細かな練習メニューで選手の成長が著しく、高校生のリクルートも順調に展開しているが、今後、中間層が伸びてくれば箱根予選会通過はもちろん、本戦でも面白い戦いができるだろう。

 5位通過の名門・東洋大(箱根12位)は、エース松井海斗(3年)が2組でぶっちぎりの快走を見せ、1組の嫌な流れを変え、弾みをつけた。4組では宮崎優(3年)が15位と順位をまとめ、迎暖人(3年)は周回を勘違いする場面もあったものの、18位と大崩れせずまとめた。

 レース後、酒井俊幸監督は「(全日本大学駅伝は)このまま本戦での勝負となると、シード権を獲得しているチームは強いですし、課題も見えました。ここで通ったから箱根駅伝の予選会も通るではなく、箱根駅伝の予選会も本戦を想定していきたい」と語り、すでに箱根の本戦を見据えている。松井がエースの走りを見せてくれたが、酒井監督が言うように、全日本や箱根のシード校とは力の差がある。

秋までにどれだけチーム力を高めていけるか。

 17年ぶりの本大会出場を目指した専修大(箱根予選会敗退)は、4組で山梨学院大(箱根17位)に大逆転されて8位に終わり、出場を逃した。3組終了時点で7位専修大と9位山梨学院大の差は約36秒。4組では、両校ともに留学生と日本人のコンビで臨んだが、山梨学院大のブライアン・キピエゴ(4年)と占部大和(4年)に逆転され、わずか0.65秒差に泣いた。

 だが、専修大は、4組23位の主将の上山詩樹(4年)、1組4位の丹柊太郎(4年)、今年の箱根4区区間3位だった青山学院大・平松享祐(4年)の双子の兄・龍青(4年、2組4位)、2年生の向田泰誠(1組19位)、安斎陸久(2組16位)、さらに留学生のダンカン・マイナ(3年、不出場)、サミュエル・ガユ(1年、4組8位)の留学生は計算できる。3年生の踏ん張り次第では、来年の箱根復帰は十分にあり得るだろう。

 9位の法政大(箱根予選会敗退)は、3組の星野泰地(4年)の4位をはじめ、4年生がなんとか組10番台をキープしていたが、3人の3年生がいずれも組28位、33位、33位と沈み、順位を押し上げることができなかった。

 10位の明治大(箱根予選会敗退)も1組の大江秀弥(1年)が7位と好走し、4組の阿部宥人(2年)が16位でまずまずの走りを見せたが、あとは20番台4人、3組のふたりが30番台に終わり、強さを見せられなかった。法大、明大ともに2組、3組で、前に行かないと生き残れないところでの勝負弱さが目立ち、今後に大きな不安を残した。

【東農大の大エース・前田和摩の無念】

 12位の東京国際大(箱根16位)は、2組目で主将の久保遼人(4年)が38位だったのが響いた。4組目にリチャード・エティーリ(4年)がいるとはいえ、勝負どころの2、3組目で、上を狙う姿勢がもうひとつ感じられなかった。エティーリ以外の選手層が薄く、現状のままでは箱根の予選会は厳しい戦いになりそうだ。

 箱根の予選会に向けて、期待が膨らむのが14位の芝浦工業大(箱根予選会敗退)だ。徳本一善監督の2年目、4年生が2名しか出場しない一方、1組21位の大関星斗、2組25位の田中敬とルーキーふたりが好走。後藤秀波ら2年生が調子を上げていけば、チームに勢いが増す。前回18位だった箱根予選会でどこまで順位を上げていけるか、非常に楽しみだ。

 立教大(箱根20位)は、2年前の選考会は突破したが、今回は15位。8人中5名が30位以下で、3組17位の原田颯大(4年)や同28位の伊藤匠海(4年)ら"走るべき人"が走れないと苦しい展開になる。馬場賢人(現ヤクルト)や國安広人ら主力が抜け、チーム再建となる今季、髙林祐介監督がエースの育成と分厚い選手層の構築というミッションをどこまで高いレベルでできるか。

 東京農業大(箱根18位)も期待が高かったが、18位に終わった。レース後、エースの前田和摩(4年、4組7位)が「僕以外、やってやろうという姿勢を見せる選手がいなかった。僕が必死になって頑張っている姿を見て後輩たちも何か感じるものがあったらいい。最後なのでチームに何か残したい」と悔しそうな表情で話をしているのが印象的だった。

 勝負していかないといけない2、3組でそういうレースができない状態を前田は歯痒く感じていたのだろう。

今後、"前田頼み"を脱することができるか、箱根の予選会突破はそこがキーになる。

 城西大(箱根7位)は、3組で主将の中島巨翔(4年)が脱水症状により残り80mで競技続行不能となり、本戦出場を逃した。ただ、1組の小田伊織(4年)が6位、2組の正岡優翔(3年)が10位、村尾恭輔(2年)が13位、3組の小林竜輝(3年)が6位、さらに4組の柴田侑(4年)が5位と快走、同じく4組の橋本健市(3年)は24位だったが、予選突破するだけの力は十分にあった。

 箱根駅伝は前回7位でシードを獲得しているので予選会はなく、強化に時間を使える。エース柴田を生かすためにも、卒業したヴィクター・キムタイ(現埼玉医科大学グループ)のような強い留学生の育成、中間層の引き上げができれば、100回大会(2024年)の総合3位のような旋風を巻き起こすことは可能だろう。

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