【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#48


 アルバム『ヘルプ!』(1965年8月6日発売)⑩


  ◇  ◇  ◇


■『ユー・ライク・ミー・トゥー・マッチ』


 今回は何となく「セット感」のある2曲を。


 アルバムB面に並んで収録されていて、「ユー」が入った長いタイトルで、エレクトリックピアノがアレンジの軸となっている点で共通する2曲だ。


 まずはジョージが作り、歌うこの曲。


 この曲を聴くたびに「あぁサビが弱いなぁ」と思ってしまう。試聴リンク再生時間「0:53」からが、日本人的感覚でいう「サビ」になると思うのだが、盛り上がるどころか、むしろ沈んでいく印象を受ける。【オリジナル記事で試聴する


 私の感覚では、洋楽に比べて邦楽、Jポップは明らかに「サビありき」の音楽だ。対して、この時期のジョージの曲は、一様にサビが弱い。このことが、日本における(当時の)ジョージの評価を下げているのかもしれない、と思ったりもする。


 右チャンネルでずっと流れている雰囲気あるエレピは『ザ・ナイト・ビフォア』に続いてジョンが演奏。


 そういえば来日公演のときもステージ上、ジョンの近くにオルガンが置かれていたのに、結局弾かなかったんだよな。


■『テル・ミー・ホワット・ユー・シー』


 またタイトルが長い。


「何が見えるか教えて」と、肩車して壁の向こうを見せている子供に親が聞いているイメージを勝手に想像してきた。


 しかし実際は、目の前にいる彼女に「目を開けて、何が見える?」なんて言っている調子のいい男の歌だった。彼女には「調子のいい男だよ」と、にしおかすみこ風に答えてほしい。


 前作『ビートルズ・フォー・セール』における『ホワット・ユー・アー・ドゥーイング』同様、何ということはないのに、妙に好きというポジションの曲だ。


 特筆すべきは、コード進行のシンプルさ。この時期、いよいよコード進行に凝り始めた彼らなのに、キーが「G」で、コードは「G・C・D」の主要3和音しか使っていない。もしかしたら「もっとも弾き語りしやすいビートルズソング」かも。この曲を弾き語りしたいかどうかは別として。


 ただ、そこはビートルズ。やっぱり一筋縄ではいかない。サビの最後の「♪テル・ミー・ホワット・ユー・シー」のところで、というか、このパートだけキーが「C」に転調するのだ。これ、ビートルズ屈指の変態転調ともいえる。


 というわけでこの曲は「もっとも弾き語りしやすいのに、もっとも変態転調なビートルズソング」である。弾き語りしたら何が見えたか、教えてほしい。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。

昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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