【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】


 アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)②


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■『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』①


 こういうことは、はっきりと書いておいた方がいいと思う。


 この曲こそが「ビートルズの最高傑作曲」であると。


 並び立つのは、すでに紹介した『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(67年)だ。ただしあの曲は、最も特殊なアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のもっとも特殊な曲、いわばビートルズ全曲の中の「特区」にあるのに対し、この曲はシングルカットされただけあって、かなり「本丸」な位置にある。そんな意味合いも含め「最高傑作曲」の称号を臆せず差し出したい。


 強く推す理由として、少々手垢にまみれた言葉を使えば「ポップとアートの融合」。


 世界一の人気バンドのシングルとして、世界中の若者の口の端に上ったという意味での「ポップ性」と、次回取り上げる、非常に複雑なサウンド作りと、ジョンの精神世界が広がる歌詞が融合した結果としての「アート性」が、見事に両立している。


 注目したいのは、この曲と両A面シングルとなったポールによる『ペニー・レイン』との関係だ。


 まず共通点として、両曲とも、歌詞は彼らの故郷リバプールを舞台としている。そういう意味で、このシングルは「コンセプトシングル」なのである。


 しかし『ペニー・レイン』が故郷の風景を、かなり具体的に描いているのに対し、ジョンは、思い出の孤児院「ストロベリー・フィールド」を舞台として、抽象的な心象風景……精神世界、アートな世界を自由に広げている。【オリジナル記事で試聴する


 結果、人々の口の端をするすると上る、人懐っこいメロディーが醸し出す「ポップ性」と、『ペニー・レイン』を超える「アート性」が、ぐぐっとせり出し、「ビートルズの最高傑作曲」として君臨するのだ。


 あらためて聴いてみる。初めて聴いてから40年以上経つけれども、初めて聴いたときに心に広がった、あの不思議感覚=センス・オブ・ワンダーが、今聴いても心に去来する。


 つまりは劇的な傑作であり、また、その無限の傑作性は、妙な言い方になるが、少々恐ろしいほどだ。


 この『ストロベリー・フィールズ~』の「ポップ×アート性」は『イエスタデイ』(65年)、『ヘイ・ジュード』(68年)、『レット・イット・ビー』(70年)など、彼らの有名曲の追随を許さない唯一のものだと思う。


 だからこの曲は、私の心の中で、永遠な輝きを放ち続ける。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー・フォーエバー」なのだ。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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