フィリピン国家警察(PNP)が発表した最新の犯罪統計により、2026年に入ってからフィリピン各地の犯罪発生件数が、前年同期比で約15~20%減少したことが判明した。政府が推進する「より安全な都市構想」に基づく警察官の巡回強化や、防犯カメラの普及が一定の成果を上げているとみられる。
一方で、物理的な犯罪が減少するなか、手口が巧妙化した「デジタル詐欺」など新たな形態の犯罪が引き続き課題となっており、治安当局は警戒を強めている。

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 PNPの分析によると、殺人や強盗、窃盗といった主要犯罪は、警察のプレゼンス(可視化)向上により大幅な減少に転じている。特にマニラ首都圏のマカティやBGC(ボニファシオ・グローバルシティ)といったビジネス街では、治安の改善が顕著だ。その一方で、マニラ首都圏のエルミタ地区やパサイ地区、公共交通機関(LRT・MRT)の駅周辺では、スリや置き引きが依然として常態化している。深夜のジプニー内におけるホールドアップ(強盗)のリスクも残っており、警察によるパトロールの隙を突いた犯行が続いている。

 現在、治安当局が最も注視しているのが、いわゆる「知能犯罪」へのシフトだ。従来の強奪に代わり、SNSやQRコードを悪用したフィッシング詐欺や、親切を装って接近し薬物で意識を失わせる「睡眠薬強盗」などの手口が高度化している。かつてのトランプ詐欺を現代的な手法に刷新したとみられるケースも散見されるほか、中南部のセブ島やボホール島などの観光地では、外国人旅行者を狙った不動産や投資に関する詐欺被害も報告されている。

 PNPは、オンライン詐欺や投資詐欺など一部のカテゴリーでは取り締まり強化により件数が減少したとしつつも、犯行グループが新たな手口を次々と編み出していると指摘している。 そのため、統計上は一定の抑止効果が見られる一方で、個々の被害は依然として深刻であり、油断はできない状況だ。

 今後の治安情勢について当局は、世界的なインフレに伴う食料品や燃料価格の高騰を懸念材料に挙げる。生活困窮者による突発的な窃盗や空き巣の増加に加え、政府によるオンラインカジノ(POGO)業者への規制強化で失職した外国人グループが、一般犯罪や誘拐に転じるケースも出始めているとされる。
ミンダナオ島中西部の危険地域を含め、予断を許さない状況が続いており、当局は電子決済の利用時や見知らぬ人物からの接触に対し、防犯意識を高めるよう強く呼びかけている。
【編集:Eula】
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